春を告げる歌声
文字数 411文字
思わず振り向くと、理子さんも僕をちらっと見たところのようでした。慌てて目をそらしましたが、理子さんも多分、そうしたんでしょう。
曲名は答えずに、理子さんは詞を付けて歌い始めましたね。
英語でしたが単純な歌詞だったので、聞いただけでだいたいの意味は取れました。
そこへ町内会長さんが公民館の鍵を持ってとぼとぼやってきましたが、僕たちを見るなり、両腕を広げて駆け寄ってきました。
もっとも、ハグしようとした瞬間、理子さんは要領よくその腕をすり抜けたので、酒臭い身体で抱きしめられたのは僕一人でしたが。
大人たちがいつものようにやってきて練習が始まると、知らないうちに来ていた豹真が横笛の音を流していました。