第26話3
文字数 761文字
澪を背後に庇いつつ、ゆっくりと下がる。
僕らの動きに合わせて、葵たちが前に出てくれた。
間合いにおいて弓は槍に勝る。この中で唯一優位をとれるのが弓の澪だ。
だから逢初は澪を狙ってくるだろう。
しかも〈縮地〉を持つ逢初は多少の距離なら瞬きより早くゼロにすることが可能だ。
武具の相性を無効化できるなんてある意味ではチートとも言える。
だけど向こうから懐に入ってきてくれるのならば、小太刀とはいえ刀を持つ僕にも槍に対して勝機があるはずだ。
上段に槍を構える逢初は葵たちへ無造作に近づいていく。
間合いで不利となる葵を庇うように紅寿と翠寿が前に出て槍を構えた。
大振りの隙をついて葵が前へ出る。
三桜村での戦いでは距離を詰めることで相手の動きを封じ込めていた。
中段から龍霞を突き込む。
その切っ先を槍の穂先で受け止めていた。
右手で振り回していたはずの槍が、いつの間にか左手に握られている。
背後で弦が鳴る。
澪の放った矢が逢初の額に向け一直線に迫る。
逢初は右足を引いて体を開く。
けれど左腕の槍は微塵も動かない。それでは葵も仕掛けようがなかった。