第7話4
文字数 869文字
手で雨を遮り視界を確保すると、前方の道端に蹲る人が見えた。
けれどこう暗くては男性か女性か、若者か年寄りかも判然としない。
改めて先頭に立つと袖が引かれる。
心配そうな顔で見上げているのは翠寿だった。
五人でまとまってジリジリと進んでいく。
その間にも幾度か周囲が明滅した。
暗闇の中、白い足が浮かび上がっている。
張り出した木の根に足を取られたのかもしれない。
小柄な体つきにはあまり似つかわしくない少し掠れた声。
髪は後ろで一つに束ねられているけど雨に濡れて重そうだ。
紺地の上着の背中には白く文様が染め抜かれている。どこかのお店で働いているのかもしれない。
懐から手拭いを取り出した澪は端を噛んで引き裂く。それから細くなった布を紐状によった。
雨で濡れた体が冷え始めていて寒気がする。