第16話2

文字数 901文字

「……良い石が減っておるのも事実。いずれ新式に使われる大きさの石すら採れなくなると考えてのことかもしれぬ。だが、だからこそ知恵を絞らねばならぬのではないか。工夫で

「廃棄してしまう物を再利用しながら技術を洗練させていくとも考えられますよ」


「そういう考え方もあるか。再利用といえば面白い話を聞いたな。なんでも勾玉の欠片を普段から身に着けておると身体になんらかの影響があると言うのだ。欠片が人間の魂に影響を与えているのではないかとその者は言っておったが」
「そのお話、もう少し詳しく教えていただけませんか」
「随分と前のめりだな。だが詳しくもなにもそれ以上の話は知らんぞ」
「話を持ってきた人の名前とかわかりませんか」
「もう何年も前のことだから名前など忘れたわ。ぼさぼさ頭で冴えない感じの男だったな」
「その男は砕けた感じの話し方をしていませんでしたか」
「言われてみればそんな感じだったやもしれん」

 日影だ。あいつがここに来ていたのか。

 それが事実なら、あの数珠はここから得た物で作られた可能性が高い。

「よければその男と同じように欠片をいただけないでしょうか」
「その男の話を信じておるのか」

「わかりません。ですがかつての水蛟が玉を持つことで絶大な力を発揮していたというのなら、欠片が人に何らかの影響を与える可能性もあるように思います」

「なるほど。小僧の言うことも一理あるやもしれん。いいぞ、持っていくがいい」
「ありがとうございます。後は水縹の勾玉を直すことができれば……ところでこれも水江島で採れた神石から削り出されたものなんでしょうか」
「そこまではわからぬ。間違いないのは、その勾玉は見事ということだけよ。木霊の一族と共にあり、幾多の戦を生き抜いてきたのだろう。さぞや大量の血を吸ったに違いない。ここまでの凝りを取るのは厄介だができないことはない。小僧たちには骨を折ってもらうことになるが」
「できることなら何でもしますけど……具体的にはどんなことをすればいいんでしょうか」

「それは木霊の娘が目覚めてから伝える。小僧も今は休んでおけ。まァ、死に水ぐらいはとってやるから心配するな」


 いや、それはとても心配なんですが!
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

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