第20話5
文字数 1,253文字
船坂に到着する頃には一雨きそうな空模様になっていた。
そして心なしかピリピリと張り詰めた雰囲気に代官屋敷は包まれていた。
部屋に案内される間にすれ違った武士たちの表情は一様に厳しいものだった。
案内された部屋で待っているとトストスと軽い足音が近づいてきて、すらりと障子が開く。
言葉が出ない。
部屋に入ると僕の前に立つ。
ぷっくりと頬が膨らんでいる。美人というのは拗ねた表情でも可愛いのだ。
両肩にかかる重み。柔らかな感触。鼻腔をくすぐる甘やかな香り。
ほの香姫に抱きしめられていた。
立ち上がったほの香姫は澪の前に片膝をついて座る。