第14話1 竜泉寺十水
文字数 820文字
船坂町を出て中善街道から外れた脇道に入る。
しばらく無言のまま歩いていると、先頭を行く滝さんの足が止まった。
呟いた滝さんは再び歩き始める。
少し開けた小高い場所に出るとそこに一軒の庵があった。
慎ましい外観は茶室を思わせる。
屋根から煙が立ち上っているから在宅なのは間違いない。
煙は一本だけではなかった。
庵の前にある黒焦げになったモノからも一筋の煙が立っていたのだ。
振り返った滝さんは僕を見て、それから空を指差した。
見上げた空は青く澄んでいる。
吹き寄せる風が人だったモノを削り取っていく。
髪も皮膚もボロボロで人相も判然としない状態だ。
辛うじてわかるのは体格ぐらいか。
そして恐らくこれは女性だったものだ。