第6話2
文字数 972文字
翠寿が案内してくれた桟橋には一艘の小舟が繋ぎ止められていた。
日に焼けて真っ黒な顔をした船頭さんが白い歯を見せて笑う。
僕たちが乗り込んだ
全長は八メートルぐらいだけど横幅がかなり狭い。二人並んで座ると身動きが取れなくなってしまうほどだ。十人も乗れば一杯になってしまうだろう。
器用に船縁を歩いて舳先に陣取った翠寿は大はしゃぎだった。
川の流れに乗るとますます小舟は加速していく。
言いながらその場でクルリと回転してみせる。流石は人狼の身体能力だった。
スーッと流れてるか流れてないかのような水面だけど、思っていた以上に流れは急なようだ。
しかも櫓を漕ぐ度に舟の頭が左右に揺れるからしっかり船縁を掴んでいないと川に落ちそうになる。