第25話3
文字数 779文字
突き付けられていた穂先を腰から抜いた獅童で弾き飛ばす。
その勢いのまま体を回転させ、距離を取りつつ立ち上がって構えた。
痛みに漏れそうになる声を必死に堪える。
なんとかして澪と合流しなければ。
こいつと一人で戦うのは無理だ。
怪我のためばかりではなく、根本的に僕の戦闘経験値が足りていない。
助けを呼ぼうとしたら咽た。痛みに顔が歪む。
これだけ火の粉が舞っている中で大きく息を吸い込めば肺が焼けるのは道理だ。そんなことに思い至れないほど焦っている。
応援を呼ぶのは諦めた。自力で脱出するしかない。
首を捻って突きをかわす。
槍を戻す動きに合わせて前へ出ようとしたけど、足に力が入らずに動けない。
間を置かず空気を穿つような鋭い突きが放たれる。
上体だけの動きではかわしきれない。
床に転がって逃げる。
視界が回る。
足の裏が床を捕まえた瞬間に横へ跳ぶ。
追撃の一突きで畳の大半が吹っ飛ばされて、床板が砕かれた。
右足を引きながら体を回転させる。
ほぼ同時に目線、首、腹の高さを槍が通過する。
回る勢いを殺しきれず、体がふらつく。