第8話2
文字数 840文字
道中にはほとんど明かりがなく、城下町と比べると閑散とした印象だった。
浜田屋は船坂町の中心からやや北にあった。
大きな通りに面していて、なかなか立派な建物だ。
一見すると旅籠というよりはお店のようにも見える。
主人の視線は軒下で頭巾を取り、体を震わせて水を切る翠寿へ向けられている。
その言葉に翠寿がぱっと頭巾を被り直す。
それから恐る恐るといった風に顔を上げた。
不機嫌そうな声。
申し訳なさそうな翠寿と紅寿、そして澪の表情。
なんだこれは。
こんなことがこの世界では許されるのか。
一瞬、世界が赤く染まったのかと思った。
カッとなっているのを自覚する。