第7話3
文字数 727文字
先頭に立って歩き始める。
暗くて足元がよくわからないので歩みは速くない。
つまり技能とは別の種族特性ということか。人狼は本当に優秀だなあ。
一瞬、周囲が明るくなった。
それからゴロゴロゴロという腹に響く音が轟く。
誰かが足にしがみついていて動けない。
体を小さく丸めた翠寿が僕の右足を抱え込んで震えている。
同じような状態の紅寿は澪にしがみついていた。
頭巾を被った頭を澪が撫でてあげると、紅寿はゆっくりと体を離して頭を下げた。
僕も澪に倣って翠寿の頭を撫でてあげる。
再び雷鳴。
離しかけていた手でしがみつかれる。
言いながら葵が僕の前に出た。
僅かに腰を落とし、前方を警戒している。
それを見て紅寿と翠寿が葵の左右に立つ。
小刻みに手足が震えているにも関わらず僕と澪を守るように構える。