第15話1 酒宴
文字数 885文字
宴の熱気はゆっくりと冷めていく。
寝息が部屋のあちこちから聞こえてくる。
葵は三人の体に掛け布団をかけていた。
柄樽はとっくの昔に空になっており、今は十水さんの火酒を水で割って飲んでいる。
房島屋で飲んだ火酒とは比べ物にならないほどまろやかな口当たりとのど越しだった。
平たい土瓶は十水さんの好みに割水された火酒で満たされている。
なみなみと注がれた火酒をぐいとあおる。
「なんだ、存外細かいところを気にする男だったか。とはいえ語ることは本当にないぞ。事前に勾玉を見てほしいという手紙を受け取っておったが差出人の名は出さぬし、礼儀もなっておらんかった。儂の怒りを受けるには十分すぎる理由であろう。それに儂には嘘を見抜く力があるからな」
冗談めかして笑いながら左眼の下を指で触れると目尻にある鱗状のモノが妖しく光った。