第28話3
文字数 639文字
「ご苦労様。なんだか大変だったそうだね」
「色々あって戻るのが遅くなってしまいました。すみません」
「手紙で報告は受けていたけど、とにかく君たちが無事で何よりだよ。それで頼んでいた勾玉なんだけど」
「こちらが水縹の勾玉ですっ」
「これが水縹の本来の色か。淡く美しい水色だ。素晴らしい。こんなに美しかったんだな。いつまででも見ていられそうだ」
勾玉を手にした茅葺さんが訝し気な顔をする。
「おかしいな。大きさが明らかに違うんだけど」
「それはですね――」
十水さんがサービスでやってくれた勾玉の合成を説明する。
「まさかそんなことができるとは知らなかった。限界突破みたいなものか。しかしこれはすごいな。古式でも最高の勾玉だ。うん、いいぞ。これはいい」
「これで水縹は直りますか？」
「勿論だとも。早速、この勾玉を体に戻して……あ、ちょっと待てよ」
立ち上がった茅葺さんは部屋の中ほどにある机に向かう。
「むむ。これは……うーん。いや、こうして……ダメか。そうなると……」
「どうしたんですか？」
「残念だが、このままだと水縹は直せない」
「ええーっ!? ど、どうしてですか？ 勾玉は直っているんですよね？」
「うん。それは間違いない。ただ勾玉が前に比べて大きくなっただろう。だからこの体では勾玉の能力を持て余してしまいそうなんだ」
「このまま組み上げたらどうなるんですか？」
「そうだなあ……よくて暴走。最悪、爆発かなあ」
「本末転倒じゃないですか」
せっかく勾玉を直しても機巧姫として稼働できなければ意味がない。
