第19話2
文字数 919文字
澪は腰を落とし、両手で弓を持つ。
そして弭槍を相手に向けた。
鎧武者も同じように構える。
互いの切っ先が触れ合うほどの距離だ。
澪の一撃は武者の喉元を正確に貫き、背中からは鳥打の半ば辺りまで突き出ている。
鎧武者は答えなかった。無言のまま澪を見下ろしている。
ジワジワと霧が拡散していく。
周囲を取り囲んでいた雲が動画を逆再生するように消えていくところだった。
なんだか随分と長い時間だった気もするし、あっという間だったようにも思う。
差し出された手のひらには微かに緑みがかった水色の石が乗っている。
澪の目が据わっていて怖かったので十水さんを助けるのに躊躇してしまったのはここだけの話にしておこう。