第18話1 黒霧の武者
文字数 970文字
そこはちょっとした広場になっていた。
周囲を木々で囲まれているので、まるで
「多少の雨風、雷は気にするな。それらは儂の力によるもので凝りの影響ではない。小僧よ、言いたいことが顔に出ておるぞ。心配するな。儂が命じなければ雷は落ちん。運悪く落ちた時は……まァ、自分の運の無さを恨め」
勾玉の前に座った十水さんが右手を伸ばして空を指差す。
途端に空が掻き曇る。
昏い色の雲がどこからともなく湧き出し、瞬く間に空を侵食していった。
雲は渦巻くように集合し巨大になっていく。
分厚い雲の隙間に紫電が走るのが見えた。
明滅と同時にゴロゴロという雷鳴が耳に届く。
十水さんが左手を勾玉へ向けた。
横殴りの風が強くなり、目を開けていられない。
木々が互いの枝を叩きつけあう悲鳴のような音がしている。
懐から取り出した紐で髪を束ねた澪の表情は凛々しかった。
広場内に風はほとんどなかった。
逆に広場の外側では雲がすごい勢いで渦巻いている。
まるで内と外を分ける結界のようだ。
雷の音も聞こえなかった。そのせいか紅寿と翠寿の表情も落ち着いている。