第27話1 雷を操る者
文字数 1,031文字
逢初の姿が眩い光の中に消える。
どれぐらい時間が経ったのだろうか。
両隣にいた紅寿と翠寿が葵の体に抱き着いている。
相当怖かったと見え、お尻の尻尾は力なく垂れて足の間に挟まっていた。
葵が刃を向けた先に逢初の姿があった。
あの一瞬で通りの向こう側まで移動したのか。
子供だましなんてとんでもない。
でもその〈雷光〉ですら〈縮地〉持ちである九十九に通じないとは。
攻撃が当たらない相手をどうやって倒せばいいんだ。
再び空にゴロゴロという重苦しい音が轟く。
それを聞いた紅寿と翠寿は竦みあがって葵にしがみついた。
十水さんの手が振り下ろされると同時に一筋の雷が逢初に落ちた。
天と地を繋ぐ光の線を逢初は躱す。
連続して降り注ぐ雷。
瞬時に場所を移して逢初は避け続ける。
建物の壁を蹴り、地面を走り、木の上に立つ。
〈縮地〉と〈軽身〉を駆使して空間を自在に渡る。
雷が落ちる度に視界は白くなり、やがて何も見えなくなる。
明滅と雷鳴。
それがしばらく続いた。