第26話4
文字数 745文字
相手の勢いを正面で受けないように自分の体を回転させる。
それで精一杯だ。追撃は不可能。
槍を体内にしまい相手の体勢を崩し、すぐに出してすくい上げるような石突の一撃で葵を宙へ弾き飛ばしたのだ。
そして〈縮地〉で僕に襲い掛かった。
濡れた衝撃音。
空中で姿勢を整えた葵が着地した音だ。
地面に転がされていた紅寿と翠寿も立ち上がっている。
今のところ誰も傷を負ってはいない。
五人がかりだというのに全く勝ち筋が見えない。
さっきのは、たまたま賭けに勝っただけだ。
頭や心臓を狙われていたら一撃死していた。
この逢初はやけにおしゃべりだった。
言葉のキャッチボールができていて、三桜村の時のような狂気じみた様子は見られない。
もっとも戦いを欲するところはまったくブレていないんだけど。