第25話4
文字数 745文字
ガラガラと音を立てて梁の一部が二人の間に落ちる。
天井に開いた穴から雨水が入り込んだお陰か、わずかに熱気が和らいだ気がした。
とはいえこれ以上ここにいるのは危険だ。
さっきのように焼け落ちる梁の下敷きになるかもしれないし、炎で大火傷を負いかねない。
でもどうやってこの場から逃げればいいのか。
今いる部屋は建物の奥にある。
玄関方向は遠いから裏口から脱出するか。
でも裏口に行くには土間に出なければならない。
その土間には油の入った大甕が並んでいたから一番火勢が強い場所でもある。
それならば部屋の壁を突き破るか。
燃えて脆くなっているはずだから、体ごとぶつかれば抜けられるだろう。
問題は目の前に立つ逢初の槍をかいくぐらなければならないことか。
仮に上手くすり抜けて壁まで到達できたとしても、背中を見せようものなら容赦なく槍で貫かれるに決まっている。
あるいはさっきの一撃で露わになった床下へ飛び込むか。
火の回りを考えれば低い位置はまだ安全かもしれない。
大きく振りかぶり、踏み込みつつ槍を叩きつける。
これは小太刀で受けられない。頭部にもらえば昏倒だけですまないのは経験済みだ。
左足を下げて体を開き、ギリギリで回避する。
床板が破壊されて木片が散る。
「よい判断です。ですがこれで終わりではありませんッ」