第21話5
文字数 585文字
見分は筒針さんに任せて、僕は周囲を見渡してみる。
何もない砂浜だ。四方に姿を隠せる場所はない。
足元は集まった漁師たちによって踏み荒らされており、足跡から相手の動きを推測することはできそうもなかった。
聞き覚えのある甲高い声に顔を上げる。
日に焼けた顔。白い歯。
間違いない。僕らを舟で運んでくれた奥山田さんのおじさんだ。
おじさんの手を引いて澪が駆け出す。
紅寿がその後に続いた。
誰が呟いたものか。
大粒の雨が倒れたままの三島さんの服に染みを作っていく。
周りを囲んでいた漁師たちは雨を避けるために次々に立ち去る。
あっという間に本降りになった。