第23話3
文字数 797文字
やっぱりそうだったのか。思わずため息が出てしまう。
もう少し理を解くべきだったのか。あるいは情に訴えるべきだったのか。
ぐるぐると思考が渦巻く。
もっとうまく対処していれば彼らを思いとどまらせることができたのではないか。
置かれた状況、相手の心情、避けるべきリスク。
求める品質、使えるリソース、限られた予算とスケジュール。
ゲーム制作で嫌というほど痛感してきたじゃないか。
コミュニケーションを正しく取っていれば問題を回避できていたはずだと何度後悔したのか。
この世界は僕が作ったゲームをベースにしているかもしれないけど、わからないことばっかりだ。
澪や翠寿たちのような八岐に向けられる差別の視線や言葉や感情も、自分の命よりも大切にしなければならない名誉や誉れという考えも。ちっともわからない。
どうしても自分たちだけで仇を討ちたいという片寄さんたちと話をした時、僕は彼らの気持ちがわかると言った。
大切な人を失った悲しい気持ちはわかるつもりだった。
大きな失敗をして喪失感を埋め合わせたいという気持ちもわかるつもりだった。
でも僕はわかったつもりでしかなかったんだ。
紅寿も翠寿も同意する。
考える余地のない、当たり前のこととして認識をしている。
この世界ではそうなのかもしれない。ここで異端なのは僕なのだ。
土下座をしたまま橋目さんは震えている。