第26話2
文字数 761文字
紅寿の腰が僅かに落ち、尻尾がぴんと水平に伸びた。
緊張している証拠だ。
耳は前に傾き、小さな音も逃さないとばかりに忙しなく動いている。
翠寿も紅寿の隣に立つ。
二人は雨具を脱ぎ去って警戒している。
見ているのは浜田屋の裏口のある方向だ。
燃え盛る炎の音に混ざって金属音が聞こえる。
同じ九十九の筒針さんの言葉を思い出す。
主を持たない九十九は強くもあり脆くもある。
本来持つ実力を発揮できないこともあれば、何倍、何十倍の力を発揮することがある――今の逢初のように。