第15話、孫堅参上
文字数 3,179文字
朱雋は、陣頭に立って、賊の宛城の運命を、かく
朱雋軍六万は、宛城の周囲をとりまいて、水も漏らさぬ布陣を詰めた。
賊軍は、
「やぶれかぶれ」の策を選んだか、連日、城門をひらいて、戦を挑み、官兵賊兵、相互におびただしい死傷を毎日積んだ。
城内の兵糧はもう乏しくて、賊は飢渇に瀕してきた。そこで賊将韓忠は遂に、降使を立てて、
「仁慈を垂れ給え」と、降伏を申し出た。
朱雋は、怒って、
と、降参の使者を斬って、なおも苛烈に攻撃を加えた。
劉備は彼を
将軍は、
「ばかをいい給え。それは時代による。あの頃は、
劉備は、これは聞く耳を持たないだろうと、彼の説に伏した。
朱雋は、直ちに、命令を変更して、急激に攻めたてた。
果たして、城内の賊は、乱れ立って一方へくずれた。
朱雋は、乱軍の中に、賊将の韓忠を見かけ、鉄弓で射とめさした。
韓忠の首を、槍に突き刺させて、従者に高く振り上げさせ、
と、得意になって呶鳴った。
すると、残る賊将の
「あいつが朱雋か」と、火炎の中を、馬を飛ばして、攻めたてた。
朱雋は、たまらじと、自軍のうちへ逃げこんだ。韓忠親分の
あきれながらも駆けつけた。
劉備達が前に出て、賊の一に対して、官兵は十人も死んだ。朱雋がいきおいよく逃げたせいで、官軍も十里も後ろへ退却した。
官軍を追い返したので、賊軍は、気をもり返し、城内の火を消し再び四方の門を固くして、
「さあいつでも来い」と構えなおした。
その日の
と、劉備らは、近づいてくる軍馬を、幕舎の傍らから見ていた。
総勢、約千五百の兵。
隊伍は整然、歩武堂々。
「そもこの精鋭を
見てあれば。
その隊伍の真っ先に、旗手、鼓手の兵を立て、続いてすぐ後から、一頭の
これなんその一軍の大将であろう。
関羽も張飛も、見まもっていたが、ほどなく陣門の衛将が、名を
堂々たる態度であった。
関羽と張飛は、顔を見合わせた。先には、
「やはり世間はひろい。
なにしろ、孫堅の入陣は、その卒伍までが、立派だった。
孫堅の来援を聞いて、
と、朱雋は、よろこんで迎えた。
朱雋は、大いに力を得て、翌日は、孫堅が
「一挙に」と、
即ち、新手の孫堅には、南門の攻撃に当らせ、劉備には北門を攻めさせ、自身は西門から攻めかかって、東門の一方は、前日の策のとおり、わざわざ道をひらいておいた。
と賊兵の中へ躍り入った。
刀を舞わして孫堅が賊を斬ること二十余人、それに当って、噴血を浴びない者はなかった。
賊将の
「ふがいなし、
もう一名の賊将孫仲は、それを眺めて、かなわじと思ったか、敗走する味方の賊兵の中にまぎれこんで、早くも東門から逃げ走ってしまった。
孫堅はそれに気づき追いかけようとした。
その時。
ひゅっと、どこか天空で、弦を放たれた一矢の矢うなりがした。
矢は、東門の望楼のほとりから、斜めに線を描いて、怒濤のように、われがちと敗走してゆく賊兵の中へ飛んだが、狙いあやまたず、逃げようとした賊将孫仲の
劉備は、部下に命じた。
望楼のかたわらの壁上に鉄弓を持って立ち、賊将孫仲を射たのは彼であった。
官軍の
「漢室万歳」
「洛陽軍万歳」
「朱雋大将軍万歳」
南陽の諸郡もことごとく平定された。
かの大賢良師張角が、戸ごとに貼らせた黄いろい
黄巾の乱は一応の終わりを見せた。
(ログインが必要です)