第37話、董卓の最後

文字数 19,953文字

 春は、丈夫の胸にも、悩ましい血を沸かせる。

 王允(おういん)のことばを信じて、呂布(りょふ)はその夜、素直に邸に帰ったもののなんとなく寝ぐるしくて、一晩中、熟睡できなかった。


「――どうしているだろう、貂蝉(ちょうせん)は今頃」


 そんなことばかり考えた。

 (とう)太師の(やかた)(ともな)われて行ったという貂蝉が、どんな一夜を明かしているかと、妄想をたくましゅうして、果ては、(しょう)のうえにじっとしていられなくなった。

 呂布は、(とばり)を排して、窓外へ眼をやった。そして彼女のいる相府(しょうふ)の空をぼんやり眺めていた。

 (こう)が鳴き渡ってゆく。

 朧月(おぼろづき)()けている。――夜はまだ明けず、雲も地上も、どことなく薄明るかった。庭前を見れば、海棠(かいどう)は夜露をふくみ、山吹(やまぶき)夜靄(よもや)にうな()れている。


「ああ」

 彼は、独り(うめ)きながら、また、牀へ横たわった。


「こんなに心のみだれるほど想い悩むのは、俺として生れてはじめてだ。――貂蝉、貂蝉、おまえはなぜ、あんな蠱惑(こわく)な眼をして、おれの心を(とら)えてしまったのだ」


 彼は、夜明けを待ちかねた。

 ――が、朝となれば、彼は毅然たる武将だった。邸にも多くの武士を飼っている彼だ。朝陽を浴びて颯爽と、例の赤兎馬(せきとば)に乗って、丞相府へ出仕した。

 べつに、そう急用もなかったのであるが、彼は早速、董卓(とうたく)の閣へ出向いて、


「太師はお目ざめか」

 と、護衛の番将に訊ねた。

 番将は(ものう)げに、そこから後堂の秘園をふり向いて、

「まだ(とばり)を下ろしていらっしゃるようですな」
 と、無感情な顔して云った。

「ほ」


 呂布は、何かむらむらと、不安に襲われたが、わざと長閑(のどか)な陽を仰いで云った。


「もう(うま)の刻にも近いのに、まだお寝みなのか」


「後堂の廊も、あの通り(とざ)したままですから」


 静かに、春園(しゅんえん)(きん)は、昼を啼きぬいていた。

 ――寝殿は帳を垂れたまま(じゃく)として、陽の高きも知らぬもののように見える。

 呂布はおおい(がた)い顔いろの裡からやや乱れた言葉でまた訊ねた。


「太師には、昨夜、よほどお寝みがおそかったとみえますな」


「ええ、王允の邸へ、饗宴に招かれて、だいぶごきげんでお帰りでしたからね」


「非常な美姫(びき)をお()れになったそうですな」


「や、将軍もそれを、もうご存じですか」


「ムム、王允の家の貂蝉(ちょうせん)といえば有名な美人だから」


「それですよ、太師のお目ざめが遅いわけは。昨夜、その美人を(さいわ)いして、春宵の短きを嘆じていらっしゃることでしょう。……何しても、きょうはよい日和(ひより)ですな」


「あちらで待っているから、太師がお目ざめになったら知らしてくれ」


 呂布は、思わず、憤然と眉に色を出して、そこから立去った。

 相府の一閣で、彼はぼんやりと腕ぐみしていた。気にかかるので、時折、池の彼方の閣を見まもっていた。後堂の寝殿は、真午(まひる)になって、ようやく窓をひらいた様子であった。


「太師には、ただ今、お目ざめになられました」


 さっきの番将が告げに来た。

 呂布は、取次も待たずに、董卓の後堂へ入って行った。そして、廊にたたずみながら奥をうかがうと、臥房(がぼう)深き所、芙蓉の(とばり)まだみだれて、ゆうべいかなる夢をむすんだか、鏡に向って、臙脂(えんじ)を唇に施している美姫のうしろ姿がちらと見えた。

 呂布は、われを忘れて、臥房のすぐ扉口(とぐち)の外まで、近づいて行った。


「オ……。貂蝉」


 彼は、泣きたいように胸を締めつけられた。七尺の偉丈夫も、魂を掻きむしられ、沈吟(ちんぎん)、去りもやらず、鏡の中に映る彼女のほうを(ぬす)み見していた。

 そして、煮え(たぎ)る心の底で、


(貂蝉はもう昨夜かぎりで、処女(おとめ)ではなくなっている! ……。ここの臥房には、まだすすり泣きの声が残っているようだ。……ああ、(とう)太師もひどい。貂蝉もまた貂蝉だ。……それとも王允がおれを欺いたのか。いやいや董太師に求められては、かよわい貂蝉はもうどうしようもなかったろう)


 彼の蒼白い顔は、なにかのはずみに、ふと室内の鏡に映った。

 貂蝉は、


「あ?」


 びっくりして振向いた。


「…………」


 呂布は、怨みがましい眼をこらして、彼女の顔をじっと睨んだ。――貂蝉は、とたんに、雨をふくんだ梨花のようにわなないて、

 哀れを乞うような、すがりついて泣きたいような、声なき想いを、眼と姿態(しな)にいわせて呂布へ訴えた。

 すると、壁の陰で、


「貂蝉。……誰かそれへ参ったのか」

 と、董卓の声がした。

 呂布は、ぎょっとして、数歩跫音(あしおと)をしのばせて、室を離れ、そこからわざと大股に、ずっとはいって来て、

「呂布です。太師には、今お目ざめですか」

 と、常と変らない(てい)(よそお)って礼をした。

 春宵の夢魂、まだ醒めやらぬ顔して、董卓は、その巨躯を、鴛鴦(えんおう)(しょう)に横たえていたので、唐突な彼の跫音に、びっくりして身を起した。

「誰かと思えば、呂布か。……誰に断って、臥房へ入って来た」


「いや、今、お目ざめと、番将が知らしてくれたものですから」


「いったい、何の急用か」


「は……」


 呂布は、用向きを問われて口ごもった。――臥房へまで来て命を仰ぐほどな用事は何もないのであった。


「実は……こうです。夜来、なんとなく寝ぐるしいうちに、太師が病にかかられた夢を見たものですから、心配のあまり、夜が明けるのを待ちかねて、相府へ詰めておりました。――がしかし、お変りのない様子を見て、安心いたしました」


「何をいっておるのか」


 董卓は、彼のしどろもどろな口吻(くちぶり)を怪しんで、舌打ちした。


「起きぬけから(いま)わしいことを聞かせおる。そんな凶夢を、わざわざ耳に入れにくるやつがあるか、去れっ」


「し、失礼しました」

 呂布は、うつ向いたまま、一礼して悄然と、影を消した。


 その日、早めに邸へ帰って来ると、彼の妻は、良人の顔色の冴えないのを憂いて訊いた。


「なにか太師のごきげんを(そこ)ねたのではありませんか」


 すると呂布は、大声で、


「うるさいっ。董太師がなんだ。この呂布を(おさ)えることは、太師でもできるものか。貴様は、できると思うのか」


 と、妻に当って、どなりちらした。


 呂布の様子は、目立って変ってきた。

 相府への出仕も、休んだり遅く出たり、夜は酒に酔い、昼は狂躁に(ののし)ったり、また、終日、茫然とふさぎ込んだまま、口もきかない日もあった。


「どうしたんですか」


 妻が問えば、


「うるさい」

 としかいわない。

 床を踏み鳴らして、(おり)の猛獣のように、部屋の中を独り廻っている時など、頬を涙にぬらしていることがあった。

 そうこうする間に、一月余りは過ぎて、悩ましい後園の春色も衰え、浅翠(あさみどり)の樹々に、初夏の陽が、日ましに暑さを加えてきた。

「お勤めはともかく、この際、お見舞にも出ないでは、大恩のある太師へ(そむ)く者と、人からも疑われましょう」


 彼の妻はしきりと諫めた。

 近頃、(とう)太師が、重いというほどでもないが、病床にあるというので、たびたび、出仕をすすめるのだった。

 呂布もふと、


「そうだ。出仕もせず、お見舞にも出なくては、申し訳ない」


 気を持ち直したらしく、久しぶりで、相府へ出向いた。

 そして、董卓の病床を見舞うと、董卓は、もとより、彼の武勇を愛して、ほとんど養子のように思っている呂布のことであるから、いつか、叱って追い返したようなことは、もう忘れている顔で、


「オオ、呂布か、そちも近頃は、体が(すぐ)れないで休んでいるということではないか。どんな容体だの」
 と、かえって病人から慰められた。

「大したことではありません。すこしこの春に、大酒が過ぎたあんばいです」


 呂布は、淋しく笑った。

 そしてふと、傍らにある貂蝉(ちょうせん)のほうを眼の隅から見やると、この半月の余は、董卓の枕元について帯も(もすそ)も解かず、誠心から看護して、すこし(おも)やつれさえして見える様子なので――呂布はたちまち、むらむらと嫉妬の火に全身の血を燃やされて、


(初めは、心にもなくゆるした者へも、女はいつか、月日と共に、身も心も、その男に(とら)われてしまうものか)

 と、()るかたなく、煩悶(はんもん)しだした。

 董卓は、咳入(せきい)った。

 その間に、呂布は、顔いろをさとられまいと、(しょう)の裾へ退いた。――そして董卓の背をなでている貂蝉の真白な手を、物に()かれた人間のように見つめていた。

 すると、貂蝉は、董卓の耳へ、顔をすりよせて、

「すこし静かに、おやすみ遊ばしては……」


 とささやいて、(ふすま)をおおい、自分の胸をも、上からかぶせるようにした。

 呂布の眼は、焔になっていた。その全身は、石の如く、去るのを忘れていた。貂蝉は、病人の視線を隠すと、その姿を振向いて、片手で袖を持って、眼を拭った。……さめざめと、泣いてみせているのである。


 彼女の一滴一滴の涙と、濡れた睫毛(まつげ)と、物いえぬ唇のわななきは、言葉以上に、惻々(そくそく)と、呂布の胸へ、その想いを語っていた。

(……では、では、そなたも)


 呂布は、断腸の思いの中にも、体中の血が狂喜するのをどうしようもなかった。盲目的に彼女のうしろへ寄って行った。そして、その白い(うなじ)を抱きすくめようとしたが、屏風(びょうぶ)の角に、剣の佩環(はいかん)が引っかかったので、思わず足をすくめてしまった。


「呂布っ。何するか」


 病床の董卓は、とたんに、大喝して身をもたげた。

 呂布は、狼狽して、


「いや、べつに……」
 と、(しょう)の裾へ退がりかけた。
「待てっ」
 と、董卓は、病も忘れて、額に青すじを立てた。

「今、おまえは、わしの眼を(ぬす)んで、貂蝉(ちょうせん)へたわむれようとしたな。――わしの寵姫(ちょうき)へ、みだらなことをしかけようとしたろう」


「そんなことはしません」


「ではなぜ、屏風の内へはいろうとしたか。いつまで、そんな所に物欲しそうにまごついているか」


「…………」


 呂布は、いい訳に窮して、真っ蒼な顔してうつ向いた。

 彼は、弁才の士ではない。また、機知なども持ち合わせない人間である。それだけに、こう責めつけられると、進退きわまったかの如く、惨澹(さんたん)たる唇を噛むばかりだった。


「不届き者めッ、恩寵を加えれば恩寵に()れて、身のほどもわきまえずにどこまでもツケ上がりおる! 今後は私の室へ、一歩でもはいると承知せぬぞ。いや、沙汰あるまで自邸で謹慎しておれ。――退がらぬかっ。これ、誰かある、呂布をおい出せ」


 と、董卓の怒りは甚しく、口を極めて(ののし)った。

 どやどやと、室外に、武将や護衛の力者(りきしゃ)たちの跫音(あしおと)が馳け集まった。――が、呂布は、その手を待たず、


「失礼します」


 云い放って、自分からさっと、室の外へ出て行った。

 ほとんど、入れちがいに、


「何です? 何か起ったのですか」

 と、李儒(りじゅ)が入ってきた。

 まだ怒りの()めない董卓は、火のような感情のまま、呂布が、この病室で、自分の寵姫に戯れようとした罪を、外道(げどう)を憎むように(つば)して語った。

「困りましたなあ」


 李儒は冷静である。にが笑いさえうかべて聞いていたが、


「なるほど、不届きな呂布です。――けれど太師。天下へ君臨なさる大望のためには、そうした小人の、少しの罪は、笑っておゆるしになる寛度(かんど)もなければなりません」


「ばかな」


 董卓は、(がえん)じない。


「そんなことをゆるしておいたら、士気はみだれ、主従のあいだはどうなるか」


「でも今、呂布が変心して、他国へ(はし)ったら、大事はなりませぬぞ」


「…………」


 董卓も、李儒に説かれているうちに、やや激怒もおさまって来た。ひとりの寵姫よりは、もちろん、天下は大であった。いかに貂蝉(ちょうせん)の愛に溺れていても、その野望は捨てきれなかった。


「だが李儒。呂布のやつは、かえって傲然(ごうぜん)と帰ってしまったが、では、どうしたらよいか」


「そうお気づきになれば、ご心配はありません。呂布は単純な男です。明日、お召しあって、金銀を与え、優しくお諭しあれば、単純だけに、感激して、今後はかならず慎むでしょう」


 李儒の忠言を容れて、彼はその翌日、呂布を呼びにやった。

 どんな問罪を受けるかと、覚悟してきて見ると、案に相違して、黄金十(きん)、錦二十匹を賜わった上、董卓の口から、


「きのうは、病のせいか、癇癖(かんぺき)を起して、そちを(ののし)ったが、わしは何ものよりも、そちを力にしておるのだ。悪く思わず、以前のとおりわが左右を離れずに、日ごとここへも顔を見せてくれい」


 と、なだめられたので、呂布はかえって心に苦しみを増した。しかし主君の温言のてまえ、拝跪(はいき)して恩を謝し、黙々とその日は無口に退出した。


 その後、日を経て、董卓(とうたく)の病もすっかりよくなった。

 彼はまた、その肥大強健な体に(おご)るかのように、日夜貂蝉(ちょうせん)と遊楽して、帳裡(ちょうり)痴夢(ちむ)()くことを知らなかった。

 呂布も、その後は、以前よりはやや無口にはなったが、日々精勤して、相府の出仕は欠かさなかった。

 董卓が朝廷へ上がる時は、呂布が赤兎馬(せきとば)にまたがって、必ずその衛軍の先頭に立ち、董卓が殿上にある時は、また必ず呂布が(ほこ)を持って、その階下に立っていた。

 或る折。

 天子に政事(まつりごと)を奏するため、董卓が昇殿したので、呂布はいつものように戟を執って、内門に立っていた。

 壮者の(さかん)な血ほど、気懶(けだる)睡気(ねむけ)を覚えるような日である。呂布は、そこここを飛びかう蝶にも、睡魔に襲われ、眼をあげて、夏近い太陽に耀(かがや)く木々の新翠(しんすい)や真紅の花を見ては、

「――貂蝉(ちょうせん)は何をしているか」

 と、煩悩(ぼんのう)にとらわれていた。

 ふと、彼は、

「きょうは必ず董卓の退出は遅くなろう。……そうだ、この間に一目」

 と考えた。

 むらむらと、思慕の炎に駆られだすと、彼は矢も楯もなかった。

 にわかに、どこかへ、駆けだして行ったのである。

 董卓の留守の間に――と、呂布はひとり相府へ戻って来たのだった。そして勝手を知った後堂へ忍んで行ったと思うと、(ほこ)を片手に、

「貂蝉。――貂蝉」
 と、声をひそめながら、寵姫の室へ入って、(とばり)をのぞいた。

「誰?」


 貂蝉は、窓に()って、独り後園の昼を見入っていたが、振向いて、呂布のすがたを見ると、


「オオ」


 と、馳け寄って、彼の胸にすがりついた。


「まだ太師も朝廷からお退()がりにならないのに、どうしてあなただけ帰って来たのですか」


「貂蝉。わしは苦しい」


 呂布は、(うめ)くように云った。


「この苦しい気もちが、そなたには分らないのだろうか。実は、きょうこそ太師の退出が遅いらしいので、せめて(つか)()でもと、俺一人そっとここへ走り戻って来たのだ」


「では……そんなにまで、この貂蝉を想っていて下さいましたか。……うれしい」


 貂蝉は、彼の火のような眸を見て、はっと、(おび)えたように、


「ここでは、人目にかかっていけません。後から直ぐに参りますから、園のずっと奥の鳳儀亭(ほうぎてい)で待っていてください」


「きっと来るだろうな」


「なんで嘘をいいましょう」


「よし、では鳳儀亭に行って待っているぞ」


 呂布はひらりと庭へ身を移していた。そして、木の間を走るかと思うと、後園の奥まった所にある一閣へ来て、貂蝉を待っていた。

 貂蝉は彼が去ると、いそいそと化粧をこらし、ただ一人で忍びやかに、鳳儀亭の方へ忍んで行った。

 柳は緑に、花は(くれない)に、人なき秘園は、()れた春の(にお)いにむれていた。

 貂蝉(ちょうせん)は、柳の糸のあいだから、そっと鳳儀亭のあたりを見まわした。

 呂布は、(ほこ)を立てて、そこの曲欄(きょくらん)にたたずんでいた。


 曲欄の下は、蓮池(はすいけ)だった。

 鳳儀亭(ほうぎてい)へ渡る朱の橋に、貂蝉の姿が近づいて来た。花を分け柳を払って現れた月宮(げっきゅう)の仙女かと怪しまれるほど、その(よそお)いは麗わしかった。


「呂布さま」


「おう……」


 ふたりは亭の壁の陰へ()った。そして長いあいだ無言のままでいた。呂布は、体じゅうの血が燃えるかと思った。うつつの身か、夢の身かを疑っていた。


「ああ、貂蝉」

 呂布は、彼女の肩をゆすぶった。――彼の胸に顔をあてていた貂蝉が、そのうちにさめざめと泣き出したからであった。


「泣かないでおくれ」


「貂蝉は、うれしさのあまり、胸がこみあげてしまったのです。――お聞きください。呂布さま。わたくしは王允(おういん)様の真の子ではなく、さびしい孤児(みなしご)でした。けれど、わたしを真の子のように可愛がって下された王允様は、行く末は必ず、凜々(りり)しい英傑の士を選んで(かしず)けてやるぞ――といつも仰っしゃって下さいました。それかあらぬか、将軍をお招きした夜、それとなく私とあなたとを会わせて賜わりましたから、私は、ひとたび、あなたにお目にかかると、これで平生の願いもかなうかと、その夜から、夢にも見るほど、楽しんでおりました」


「ウむ。……ムム」


「ところが、その後、董太師(とうたいし)のために、心に秘めていた想いの花は、ふみにじられてしまいました。太師の権力に、泣く泣く心にそまぬ夜々を明かしました。もうこの身は、以前のきれいな身ではありません。……いかに心は前と変らず持っていても、(けが)された身をもって、将軍の妻室(さいしつ)にかしずくことはできませんから、それを思うと、恐ろしくて、口惜(くや)しくて……」


 貂蝉は、あたりへ聞えるばかり嗚咽(おえつ)して、彼の胸に、とめどなく(もだ)えて泣いていたが、突然、


「呂布さま。どうか貂蝉の心根だけは、不愍(ふびん)なものと、忘れないでいてください」


 と、叫びざま、曲欄へ走り寄って、蓮の池へ身を投げようとした。

 呂布は、びっくりして、


「何をする」

 と、抱き止めた。

 その手を、怖ろしい力で、貂蝉は振りのけようと争いながら

「いえ、いえ、死なせて下さい。生きていても、あなたとこの世のご縁はないし、ただ心は日ごと苦しみ、身は不仁(ふじん)な太師の(にえ)になって、夜々、(さいな)まれるばかりです。せめて、後世(ごせ)(ちぎ)りを楽しみに、冥世(あのよ)へ行って待っております」


「愚かなことを。来世を願うよりも今生(こんじょう)に楽しもう。貂蝉、今にきっと、そなたの心に添うようにするから、死ぬなどと、短気なことは考えぬがいい」


「えっ……ほんとですか。今のおことばは、将軍の真実ですか」


「想う女を、今生において、妻ともなし得ないで、(あに)、世の英雄と呼ばれる資格があろうか」


「もし、呂布さま。それがほんとなら、どうか貂蝉の今の身を救うて下さいませ。一日も一年ほど長い気がいたします」


「時節を待て。それも長いこととはいわぬ――また、今日は老賊に従って、参殿の供につき、わずかな(すき)をうかがってここへ来たのだから、もし老賊が退出してくるとたちまち露顕(ろけん)してしまう。そのうちに、またよい首尾をして会おう」


「もう、お帰りですか」


 貂蝉は、彼の袖をとらえて、離さなかった。


「将軍は、世に並ぶ者なき英雄と聞いていましたのに、どうしてあんな老人をそんなに、怖れて、董卓の下風(かふう)()いているのですか」


「そういうわけではないが」


「私は、太師の跫音(あしおと)を聞いても、ぞっと身がふるえてきます。……ああいつまでも、こうしていたい」


 なお、寄りすがって、紅涙雨の如き姿態(しな)であった。――ところへ、董卓は(ちょう)から帰って来るなり、ただならぬ血相をたたえて彼方から歩いて来た。


「はて。貂蝉も見えないし、呂布もどこへ行きおったか?」


 董卓の眸は、猜疑(さいぎ)に燃えていた。

 今し方、彼は朝廷から退出した。呂布の赤兎馬(せきとば)は、いつもの所につないであるのに、呂布のすがたは見えなかった。怪しみながら、車に乗って相府へ帰ってみると、貂蝉の衣は、衣桁(いこう)に懸っているが、貂蝉のすがたは見当らないのである。


「さては」


 と、彼は、侍女を(ただ)して、男女の姿を見つけに、自身、後園の奥へ捜しに来たのであった。

 二人は鳳儀亭の曲欄(きょくらん)にかがみこんで、泣きぬれていた。貂蝉は、ふと、董卓の姿が彼方に見えたので、


「あっ……来ました」

 と、あわてて呂布の胸から飛び離れた。

 呂布も、驚いて、

「しまった。……どうしよう」


 うろたえている間に、董卓はもう走り寄って来て、


匹夫(ひっぷ)っ。白日(はくじつ)(おそ)れず、そんな所で、何しているかっ」


 と、怒鳴った。

 呂布は、物もいわず、鳳儀亭の朱橋を躍って、岸へ走った。――すれ()いに、董卓は、


「おのれ、どこへ行く」

 と、彼の(ほこ)を引ったくった。

 呂布が、その(ひじ)を打ったので、董卓は、奪った戟を取り落してしまった。彼は、肥満しているので、身をかがめて拾い取るのも、遅鈍(ちどん)であった。――その間に、呂布はもう五十歩も先へ逃げていた。

不埓者(ふらちもの)っ」


 董卓は、その巨きな体を前へのめらせながら、(わめ)いて云った。


「待てっ。こらっ。待たぬかっ、匹夫め」


 すると、彼方から馳けて来た李儒が、過って出会いがしらに、董卓の胸を突きとばした。

 董卓は、樽の如く、地へ転げながら、いよいよ怒って、


「李儒っ、そちまでが、私をささえて、不届きな匹夫を(たす)けるかっ。――不義者をなぜ捕えん」


 と、呶号した。

 李儒は、急いで、彼の身を扶け起しながら、


「不義者とは、誰のことですか。――今、てまえが後園に人声がするので、何事かと出てみると、呂布が、太師狂乱して、罪もなきそれがしを、お手討になさると追いかけて参るゆえ、何とぞ、助け賜われとのこと、驚いて、馳けつけて来たわけですが」


「何を、ばかな。――董卓は狂乱などいたしてはおらん。私の目を(ぬす)んで、白昼、貂蝉に戯れているところを、私に見つけられたので、狼狽のあまり、そんなことを叫んで逃げ()せたのだろう」


「道理で、いつになく、顔色も失って、ひどく狼狽の態でしたが」


「すぐ、引っ捕えて来い。呂布の首を()ねてくれる」


「ま。そうお怒りにならないで、太師にも少し落着いて下さい」


 李儒は、彼の(くつ)を拾って、彼の足もとへ揃えた。

 そして、閣の書院へ伴い、座下に降って、再拝しながら、


「ただ今は、過ちとはいえ、太師のお体を突き倒し、罪、死に値します」


 と、詫び入った。

 董卓はなお、怒気の冷めぬ顔を、横に振って、


「そんなことはどうでもよい。速やかに、呂布を召捕って来て、私に、呂布の首を見せい」


 といった。

 李儒は、あくまで冷静であった。董卓が、怒るのを、あたかも痴児の囈言(たわごと)のように、苦笑のうちに聞き流して、


「恐れながら、それはよろしくありません。呂布の首を刎ねなさるのは、ご自身の(うなじ)へご自身で(やいば)を当てるにも等しいことです」
 と、(いさ)めた。

「なぜ悪いかっ。なぜ、不義者の成敗をするのが、よろしくないか」


 董卓は、そう云いつのって、どうしても、呂布を斬れと命じたが、李儒は、


「不策です。いけません」


 頑として、彼らしい理性を、変えなかった。


「太師のお怒りは、自己のお怒りに過ぎませんが、てまえがお諫め申すのは、国家のためです。――昔、こういう話があります」


 と、李儒は、例をひいて、語りだした。


 それは、楚国(そこく)荘王(そうおう)のことであるが、或る折、荘王が楚城のうちに、盛宴をひらいて、武功の諸将をねぎらった。

 すると――宴半ばにして、にわかに涼風が渡って、満座の燈火がみな消えた。

 荘王、

(はや、(しょく)をともせ)と、近習へうながし、座中の諸将は、かえって、

(これも涼しい)と、興ありげにさわいでいた。

 ――と、その中へ、特に、諸将をもてなすために、酌にはべらせておいた荘王の寵姫へ、誰か、武将のひとりが戯れてその唇を盗んだ。

 寵姫は、叫ぼうとしたが、じっとこらえて、その武将の(かんむり)(おいかけ)をいきなりむしりとって、荘王の側へ逃げて行った。

 そして、荘王の膝へ、泣き声をふるわせて、

「この中で今、誰やら、暗闇になったのを幸いに、(わらわ)へみだらに戯れたご家来があります。はやく燭をともして、その武将を(から)めてください。冠の纓の切れている者が下手人です」

 と、自分の貞操をも誇るような誇張を加えて訴えた。

 すると荘王は、どう思ったか、

「待て待て」と、今しも燭を点じようとする侍臣を、あわてて止め、

「今、わが寵姫が、つまらぬことを私に訴えたが、こよいはもとより心から諸将の武功をねぎらうつもりで、諸公の愉快は私の愉快とするところである。酒興の中では今のようなことはありがちだ。むしろ諸公がくつろいで、今宵の宴をそれほどまで楽しんでくれたのが私も共にうれしい」

 と、いって、さてまた、

「これからは、さらに、無礼講として飲み明かそう。みんな冠の(おいかけ)を取れ」と、命じた。

 そしてすべての人が、冠の纓を取ってから、燭を新たに(とも)させたので、寵姫の機智もむなしく、誰が、女の唇を盗んだ下手人か知れなかった。

 その後、荘王は、(しん)との大戦に、秦の大軍に囲まれ、すでに重囲のうちに討死と見えた時、ひとりの勇士が、乱軍を()いて、王の側に馳けより、さながら降天(こうてん)の守護神のごとく、必死の働きをして敵を防ぎ、満身(あけ)になりながらも、荘王の身を負って、ついに一方の血路をひらいて、王の一命を完うした。

 王は、彼の傷手(いたで)のはなはだしいのを見て、

「安んぜよ、もうわが一命は無事なるを得た。だが一体、そちは何者だ。そして如何なるわけでかくまで身に代えて、私を守護してくれたか」と、訊ねた。

 すると、傷負(ておい)の勇士は、

「――されば、それがしは先年、楚城の夜宴で、王の寵姫に冠の纓をもぎ取られた痴者(ちしゃ)です」

 と、笑って死んだという。


 ――李儒は、そう話して、


「いうまでもなく、彼は、荘王の大恩に報じたものです。世にはこの佳話を、絶纓(ぜつえい)(かい)と伝えています。……太師におかれても、どうか、荘王の大度(たいど)を味わってください」


 董卓は、首を垂れて聞いていたが、やがて、


「いや、思い直した。呂布の命は助けておこう。もう怒らん」


 翻然(ほんぜん)と、諫めを受け入れた。

 李儒はかねて、呂布が何を不平として、近ごろ董卓に含んでいるか、およそ察していたので、

――困ったものだ。

 と、内心、貂蝉(ちょうせん)に溺れている董卓にも、それに瞋恚(しんい)を燃やしている呂布にも、胸を傷めていた折であった。


「貂蝉を呂布に下げ渡したらどうでしょうか」
「なに、貂蝉をか」
「はい、呂布は単純な男です。女を手に入れ満足すれば忠勤に励むでしょう」
「ムムム、しかし」
「もっか、呂布はこの国の守りの要です。呂布の武を恐れ、首を引っ込めている者もおります。たかだか女のために、国の安寧を脅かすはいかがなものでしょうか」
 そう言われると、董卓にも思い至るところがあった。また、呂布に変わるような人材も思いつかなかった。
「……わかった。そうしよう。貂蝉は呂布に下げ渡そう」
「そうなさいませ」

 と、釈然と悟った様子(ようす)なので、これ、太師の賢明によるところ、覇業(はぎょう)万歳(ばんざい)の基であると、李儒は直ちに、呂布へもその由を告げて、大いに安心した。


 董卓は、李儒を退(しりぞ)けると、すぐ後堂へ入って行ったが、見ると、(とばり)にすがって、貂蝉はまだ独りしくしく泣いていた。

「何を泣くか。女にも(すき)があるから、男が戯れかかるのだ。そなたにも半分の罪があるぞ」


 董卓が、いつになく叱ると、貂蝉はいよいよ悲しんで、


「でも、太師は常に、呂布はわが子も同様だと仰っしゃっていらっしゃいましょう。――ですから私も、太師のご養子と思って、敬まっていたんです。それを今日は、恐い血相で、(ほこ)を持って私を(おど)し、むりやりに鳳儀亭(ほうぎてい)に連れて行ってあんなことをなさるんですもの……」


「いや、深く考えてみると、悪いのは、そなたでも呂布でもなかった。この董卓が(おろ)かだった。――貂蝉、わしが(なかだ)ちして、そなたを呂布の妻にやろう。あれほど忘れ(がた)なく恋している呂布だ。そなたも彼を愛してやれ」


 (まなこ)をとじて、董卓がいうと、貂蝉は、身を投げて、その膝にとりすがった。


「なにをおっしゃいます。太師に捨てられて、あんな乱暴な奴僕(ぬぼく)の妻になれというのですか。(いや)なことです。死んだって、そんな(はずかし)めは受けません」


 いきなり董卓の剣を抜きとって、(のど)に突き立てようとしたので、董卓は仰天して、彼女の手から剣を奪りあげた。

 貂蝉は、慟哭(どうこく)して、床に伏しまろびながら、


「……わ、わかりました。これはきっと、李儒が呂布に頼まれて、太師へそんな進言をしたにちがいありません。あの人と呂布とは、いつも太師のいらっしゃらない時というと、ひそひそ話していますから。……そうです。太師はもう、私よりも、李儒や呂布のほうがお可愛いんでしょう。わたしなどはもう……」


 董卓は、やにわに、彼女を膝に抱きあげて、泣き濡れているその頬やその唇へ自分の顔をすり寄せて云った。


「泣くな、泣くな、貂蝉、今のことばは、冗戯(じょうだん)じゃよ。なんでそなたを、呂布になど与えるものか。――明日、郿塢(びう)の城へ帰ろう。郿塢には、三十年の兵糧と、数十万の兵がいる。事成れば、そなたを貴妃(きひ)とし、事成らぬ時は、富貴の家の妻として、生涯を長く楽しもう。……嫌か、ウム、嫌ではあるまい」


 次の日――

 李儒は改まって、董卓の前に伺候した。ゆうべ、呂布の私邸を訪い、恩命を伝えたところ、呂布も、深く罪を悔いておりました――と報告してから、


「きょうは幸いに、吉日ですから、貂蝉を呂布の家にお送ってはいかがでしょう。きっと、感涙をながして、太師のためには、死をも誓うにちがいありません」


 と、いった。

 すると董卓は、色を変じて、


「たわけたことを申せ。――李儒っ、そちは自分の妻を呂布にやるかっ」


 李儒は、案に相違して、唖然としてしまった。

 董卓は早くも車駕を命じ、珠簾(しゅれん)宝台(ほうだい)に貂蝉を抱き乗せ、扈従(こじゅう)の兵馬一万に前後を守らせ、郿塢(びう)の仙境をさして、揺々(ようよう)と発してしまった。


 董太師(とうたいし)郿塢(びう)へ還る。――と聞えたので、長安の大道は、拝跪(はいき)する市民と、それを送る朝野(ちょうや)の貴人で埋まっていた。

 呂布(りょふ)は、家にあったが、


「はて?」

 窓を排して、街の空をながめていた。


「今日は、日も()いから、貂蝉(ちょうせん)を送ろうと、李儒は云ったが?」


 車駕の轣音(れきおん)や馬蹄のひびきが街に聞える、(ちまた)のうわさは嘘とも思えない。


「おいっ、馬を出せっ、馬を」


 呂布は、(うまや)へ馳け出して呶鳴った。

 飛びのるが早いか、武士も連れず、ただ一人、長安のはずれまで(むち)打った。そこらはもう郊外に近かったが、すでに太師の通過と聞こえたので、菜園の(おうな)も、畑の百姓も、往来の物売りや旅芸人などまで、すべて路傍に草の如く伏していた。

 呂布は、丘のすそに、馬を停めて、大樹の陰にかくれてたたずんでいた。そのうちに車駕の列が蜿蜒(えんえん)と通って行った。

 ――見れば、金華の車蓋(しゃがい)に、珠簾(しゅれん)の揺れ鳴る一車がきしみ通って行く。四方翠紗(すいしゃ)籠屏(ろうびょう)の裡に、透いて見える絵の如き人は貂蝉(ちょうせん)であった。――貂蝉は、喪心(そうしん)しているもののように、うつろな容貌(かお)をしていた。

 ふと、彼女の眸は、丘のすそを見た。そこには、呂布が立っていた。――呂布は、われを忘れて、オオと、馳け寄らんばかりな様子だった。

 貂蝉は、顔を振った。その頬に、涙が光っているように見えた。――前後の兵馬は、畑土を馬蹄にあげて、たちまち、その姿を彼方へ押しつつんでしまった。


「…………」


 呂布は、茫然と見送っていた。――李儒の言は、ついに、偽りだったと知った。いや、李儒に偽りはないが、董卓が、頑として、貂蝉を離さないのだと思った。


「……泣いていた、貂蝉(ちょうせん)も泣いていた。どんな気もちで郿塢(びう)の城へいったろう」


 彼は、気が狂いそうな気がしていた。沿道の百姓や物売りや旅人などが、そのせいか、じろじろと彼を振向いてゆく。呂布の眼はたしかに血走っていた。


「や、将軍。……こんな所で、なにをぼんやりしているんですか」


 彼のうしろから声をかけた人がある。

 呂布は、うつろな眼を、うしろへ向けたが、その人の顔を見て、初めてわれにかえった。

「おう、あなたは王司徒(おうしと)ではないか」


 王允(おういん)は、微笑して、


「ここはそれがしの別荘の竹裏館(ちくりかん)のすぐ前ですのに」

「ああ、そうでしたか」


董太師(とうたいし)が郿塢へお還りと聞いたので、門前に立ってお見送りしたついでに、一巡りしようかと来たところです。――将軍は、何しに?」


「王允、何しにとは情けない。其許(そこもと)がおれの苦悶をご存じないはずはないが」


「はて。その意味は」


「忘れはしまい。いつか貴公はこの呂布に、貂蝉を与えると約束したろう」


「もとよりです」


「その貂蝉は老賊に横奪りされたまま、今なお呂布をこの苦悩に突きおとしているではないか」


「……その儀ですか」


 王允は、急に首を垂れて、病人のような嘆息をもらした。


「太師の所行はまるで禽獣(きんじゅう)のなされ方です。わたくしの顔を見るたびに、近日、呂布の許へ貂蝉は送ると、口ぐせのようにいわるるが、今もって、実行なさらない」


「言語道断だ。今も、貂蝉は、車のうちで泣いて行った」


「ともかく、ここでは路傍ですから……、そうだ、ほど近い私の別業(べっそう)までお越し下さい。(とく)と、ご相談もありますから」


 そこは長安郊外の、幽邃(ゆうすい)な別業であった。

 呂布は、王允に(いざな)われて、竹裏館の一室へ通されたが、酒杯(さかずき)を出されても、沈湎(ちんめん)として、()けぬ忿怒(ふんぬ)にうな垂れていた。


「いかがです、おひとつ」


「いや、今日は」


「そうですか。では、あまりおすすめいたしません。心の楽しまぬ時は、酒を含んでも、いたずらに、口にはにがく、心は燃えるのみですから」

「王司徒」


「はい」


「察してくれ……。呂布は生れてからこんな無念な思いは初めてだ」


「ご無念でしょう。けれど、私の苦しみも、将軍に劣りません」


「おぬしにも悩みがあるか」


「あるか――どころではないでしょう。折角、将軍の室へ(めと)っていただこうと思ったわが養女(むすめ)を、董太師に汚され、あなたに対しては、義を欠いている。――また、世間は将軍をさして、わが女房を奪われたる人よ、と蔭口をきくであろうと、わが身に(そし)りを受けるより辛く思われます」

「世間がおれを(わら)うと!」


「董太師も、世の物笑いとなりましょうが、より以上、天下の人から笑い(はずかし)められるのは、約束の義を欠いた私と、将軍でしょう。……でもまだ私は老いぼれのことですから、どうする(すべ)もあるまいと、人も思いましょうが、将軍は一世の英雄でありまた、お年も(さか)んなのに、なんたる意気地のない武士ぞといわれがちにきまっています。……どうぞ、私の罪を、おゆるし下さい」


 王允がいうと、


「いや、貴下の罪ではない!」


 呂布は、憤然、床を鳴らして突っ立ったかと思うと、


「王司徒、見ておれよ。おれは誓って、あの老賊をころし、この恥をそそがずにはおかぬから」


 王允は、わざと大げさに、


「将軍、卒爾(そつじ)なことを口走り給うな。もし、そのようなことが外へ洩れたら、お身のみか、三族を亡ぼされますぞ」


「いいや、もうおれの堪忍(かんにん)もやぶれた。大丈夫たる者、(あに)鬱々(うつうつ)として、この生を老賊の膝下に(かが)んで過そうや」


「おお、将軍。今の僭越(せんえつ)な諫言をゆるして下さい。将軍はやはり稀世の英邁(えいまい)でいらっしゃる。常々ひそかに、将軍の風姿を見ておるに、(いにしえ)韓信(かんしん)などより百倍も(すぐ)れた人物だと失礼ながら慕っていました。韓信だに、王に封ぜられたものを、いつまで、区々たる丞相府(じょうしょうふ)の一旗下で居たまうわけはない……」


「よしっ、おれはやる。必ず、老賊を(くびき)ってみせる」


 呂布は、剣を抜いて、自分の(ひじ)を刺し、淋漓(りんり)たる血を示して、王允(おういん)へ誓った。


 呂布の帰りを門まで送って出ながら、王允は、そっとささやいた。


「将軍、きょうのことは、ふたりだけの秘密ですぞ。誰にも洩らして下さるな」


「もとよりのことだ。だが大事は、二人だけではできないが」


「腹心の者には明かしてもいいでしょう。しかし、この後は、いずれまた、ひそかにお目にかかって相談しましょう」


 赤兎馬(せきとば)にまたがって、呂布は帰って行った。王允は、その後ろ姿を見送って、

 ――思うつぼに行った。

 と独りほくそ笑んでいた。

 その夜、王允はただちに、日頃の同志、校尉(こうい)黄琬(こうえん)僕射士(ぼくやし)孫瑞(そんずい)の二人を呼んで、自分の考えをうちあけ、


「呂布の手をもって、董卓を討たせる計略だが、それを実現するに、何かよい方法があるまいか」


 と、計った。


「董卓が寝ている間に呂布にやらせれば良いのでは」


「いや、呂布は董卓の不興を買い、警護を外されている」


「では、いい方法があります」


 と、孫瑞がいった。


「天子には、先頃からご不予(ふよ)でしたが、ようやく、この頃ご病気も()えました。ついては、(みことのり)と称し、(にせ)の勅使を郿塢(びう)の城へつかわし、呼び寄せたらよいでしょう」


「え。偽勅(ぎちょく)の使いを?」


「されば、それも天子の御為ならば、お咎めもありますまい」


「そしてどういうのか」


「天子のおことばとして――(ちん)病弱のため帝位を董太師に譲るべしと、偽りの詔を下して彼を召されるのです。董卓はよろこんで、すぐ参内するでしょう」


「それは、餓虎(がこ)生餌(いきえ)を見せるようなものだ。すぐ跳びついてくるだろう」


「禁門に力ある武士を大勢伏せておいて、彼が、参内する車を囲み、有無をいわせず誅戮(ちゅうりく)してしまうのです。――呂布にそれをやらせれば、万に一つも、のがす気遣いはありません」


「偽勅使には誰をやるか」


李粛(りしゅく)が適任でしょう。私とは同国の人間で、気性も分っていますから、大事を打明けても、心配はありません」


騎都尉(きとい)の李粛か」


「そうです」


「あの男は、以前、董卓に仕えていた者ではないか」


「いや、近頃勘気をうけて、董卓の扶持(ふち)を離れ、それがしの家に身を寄せています。なにか、董卓にふくむことがあるらしく、怏々(おうおう)として浮かない日を過しているところですから、よろこんでやりましょうし、董卓も、以前目をかけていた男だけに、勅使として来たといえば、必ず心をゆるして、彼の言を信じましょう」


「それは好都合だ。早速、呂布に通じて、李粛と会わせよう」


 王允は、翌晩、呂布をよんで、云々(しかじか)と、策を語った。――呂布は聞くと、


「李粛なら自分もよく知っている。そのむかし赤兎馬をわが陣中へ贈ってきて、自分に、養父の丁建陽(ていけんよう)を殺させたのも、彼のすすめであった。――もし李粛が、(いや)のなんのといったら、一刀のもとに斬りすててしまう」

 深夜、王允と呂布は、人目をしのんで、孫瑞(そんずい)の邸へゆき、そこに食客となっている李粛に会った。


「やあ、しばらくだなあ」


 呂布はまずいった。李粛は、時ならぬ客に驚いて唖然としていた。


「李粛。貴公もまだ忘れはしまいが、ずっと以前、おれが養父丁原と共に、董卓と戦っていた頃、赤兎馬や金銭をおれに送り、丁原に叛かせて、養父を殺させたのは、たしか貴公だったな」


「いや、古いことになりましたね。けれど一体、何事ですか、今夜の突然のお越しは」


「もう一度、その使いを、頼まれて貰いたいのだ。しかし、こんどは、おれから董卓のほうへやる使いだが」


 呂布は、李粛のそばへ、すり寄った。そして、王允に仔細を語らせて、もし李粛が不承知な顔いろを現したら、即座に斬って捨てんとひそかに剣を握りしめていた。

 ふたりの密謀を聞くと、李粛は手を打って、

「よく打明けて下すった。自分も久しく董卓を討たんとうかがっていたが、めったに心底を語る者もないのを恨みとしていたところでした。善哉善哉(よいかなよいかな)、これぞ天の助けというものだろう」


 と喜んで、即座に、誓いを立てて荷担(かたん)した。

 そこで三名は、万事を(しめ)しあわせて、その翌々日、李粛は二十騎ほど従えて郿塢(びう)の城へおもむき、


「天子、李粛をもって、勅使として降し給う」

 と、城門へ告げた。

 董卓は、何事かと、直ぐに彼を引いて会った。

 李粛は(うやうや)しく、拝をなして、

「天子におかれては、度々のご不予のため、ついに、太師へ御位(みくらい)を譲りたいとご決意なされました。どうか天下の為、すみやかに大統をおうけあって、九五(きゅうご)の位にお昇りあるよう。今日の勅使は、その御内詔をお伝えに参ったわけです」


 そういって、じっと董卓の面を見ていると、つつみきれぬ喜びに、彼の老顔がぱっと紅くなった。


「ほ。……それは意外な(みことのり)だが、しかし、朝臣の意向は」


「百官を未央(びおう)殿にあつめ給い、僉議(せんぎ)も相すみ、異口同音、万歳をとなえて、一決いたした結果です」


 聞くと、董卓は、いよいよ眼を細めて、


「司徒王允は、何といっておるかの」


「王司徒は、よろこびに堪えず、受禅台(じゅぜんだい)を築いて、早くも、太師の即位を、お待ちしているふうです」


「そんなに早く事が運んでいるとは驚いた。ははは。……道理で思い当ることがある」


「なんですか。思い当ることとは」


「先頃、夢を見たのじゃ」


「夢を」


「巨龍雲を起して降り、この身に(まと)うと見て目がさめた」


「さてこそ、吉瑞(きちずい)です。一刻も早く、車をご用意あって、朝へ上り、詔をおうけなされたがよいと思います」


「この身が帝位についたら、そちを執金吾(しつきんご)に取立てて得させよう」


「必ず忠誠を誓います」


 李粛が、再拝しているまに、董卓は、侍臣へ向って、車騎行装(しゃきぎょうそう)の支度を命じた。

 そして彼は、馳けこむように、貂蝉(ちょうせん)の住む一閣へ行って、


「いつか、そなたに云ったことがあろう。わしが帝位に昇ったら、そなたを貴妃(きひ)として、この世の栄華を尽させんと。とうとうその日が来た」

 と、早口に云った。

 貂蝉は、チラと、眼をかがやかしたが――すぐ無邪気な表情をして、

「まあ。ほんとですか」

 と、狂喜してみせた。

 董卓はまた、後堂から母をよび出して、事の(よし)をはなした。彼の母はすでに年九十の余であった。耳も遠く眼もかすんでいた。

「……なんじゃ。俄に、どこへ行くというのかの」


「参内して、天子の御位をうけるのです」


「誰がの?」


「あなたの子がです」


「おまえがか」


「ご老母。あなたも、いい(せがれ)を持ったお蔭で、近いうちに、皇太后と(うやま)われる身になるんですぞ。嬉しいと思いませんか」


「やれやれ。わずらわしいことだのう」


 九十余歳の老媼(ろうおう)は、上唇をふるわせて、むしろ悲しむが如く、天井を仰いだ。


「あははは、張合いのないものだな」


 董卓は、(あざけ)りながら、濶歩して一室へかくれ、やがて盛装をこらして車に打乗り、数千の精兵に前後を護られて郿塢山(びうさん)を降って行った。


 やがて長安の外城を通り、市街へ進み入ると、民衆は軒を下ろし、道にかがまり、頭をうごかす者もない。

 王城門外には、百官が列をなして出迎えていた。

 王允(おういん)淳于瓊(じゅんうけい)黄琬(こうえん)皇甫嵩(こうほすう)なども、道の傍に、拝伏して、


「おめでとう存じあげます」

 と、慶賀を述べ、臣下の礼をとった。

 董卓は、大得意になって、

「相府にやれ」

 と、車の馭官(ぎょかん)へ命じた。

 そして丞相府にはいると、

「参内は明日にしよう。すこし疲れた」

 その日は、休憩して、誰にも会わなかったが、王允だけには会って、賀をうけた。

 王允は、彼に告げて、


「どうか、こよいは悠々身心をおやすめ遊ばして、明日は斎戒沐浴(さいかいもくよく)をなし、万乗の御位(みくらい)を譲り受け給わらんことを」

 と、(いの)って去った。

 その夜は、さすがに彼も、婦女を寝室におかず、眠りの清浄を守った。

 朝の光は、彼の枕辺に(うつ)しこぼれてきた。

 董卓は、斎戒沐浴した。

 そして、儀仗(ぎじょう)をととのえ、きのうに(まさ)る行装をこらして、朝霧のうすく流れている宮門へ向って進んだ。

 儀杖の先頭は、宮中の北掖門(ほくえきもん)へさしかかっていた。

 禁門(きんもん)(おきて)なので、董卓も、儀仗の兵士をすべて、北掖門にとどめて、そこから先は、二十名の武士に車を押させて、禁廷へ進んだ。


「やっ?」

 董卓は、車の内でさけんだ。

 見れば、王允(おういん)黄琬(こうえん)の二人が、剣を執って、殿門の両側に立っているではないか。

 彼は、何か異様な空気を感じたのであろう。突然、


「李粛李粛。――彼らが、抜剣して立っているのは如何なるわけか」


 と、呶鳴った。

 すると、李粛は車の後ろで、


「されば、閻王(えんおう)の旨により、太師を冥府(めいふ)へ送らんとて、はや迎えに参っているものとおぼえたりっ」


 と、大声で答えた。

 董卓は、仰天して、


「な、なんじゃと?」


 膝を起そうとした途端に、李粛は、それっと懸け声して、彼の車をぐわらぐわらと前方へ押し進めた。

 王允は、大音あげて、


「郿塢の逆臣が参ったり、出でよっ、武士どもっ」


 声を合図に――

「おうっ」

「わあっ」

 馳け集まった御林軍の勇兵百余人が、車を顛覆(くつが)えして、董卓を中からひきずり出し、

賊魁(ぞっかい)ッ」

「この大奸(たいかん)

「うぬっ」

「天罰」

「思い知れや」

 無数の(ほこ)は、彼の一身へ集まって、その胸を、肩を、頭を滅多打ちに突いたり斬り下げたりしたが、かねて要心ぶかい董卓は、()もとおさぬ(よろい)や肌着に身をかためていたので、多少血しおにはまみれてもなお、致命傷には至らなかった。

 巨体を大地に(まろ)ばせながら、彼はその間に絶叫を放っていた。


「――呂布(りょふ)っ、呂布ッ。――呂布はあらざるかっ、義父(ちち)の危難を助けよ」


 すると、呂布の声で、


「心得たり」
 と、聞えたと思うと、彼は画桿(がかん)大戟(おおほこ)をふりかぶって、董卓の眼前に躍り立ち、
「勅命によって逆賊董卓を討つ」

 と、(おめ)くや否、真っ向から斬り下げた。

 黒血は霧のごとく噴いて、陽も曇るかと思われた。

「うッ――むっ。……おのれ」


 戟はそれて、右の(ひじ)を根元から斬り落したにすぎなかった。

 董卓は、(あけ)にそまりながら、はったと呂布をにらんで、まだなにか叫ぼうとした。

 呂布は、その胸元をつかんで、


「悪業のむくいだ」

 と罵りざま、ぐざと、その(のんど)を刺しつらぬいた。

 禁廷の内外は、怒濤のような空気につつまれたが、やがて、それと知れ渡ると、

「万歳っ」

 と、誰からともなく叫びだし、文武百官から(うまや)の雑人や、衛士にいたるまで、皆万歳万歳を唱え合い、その声、そのどよめきは、小半刻ほど鳴りもやまなかった。

 李粛は、走って、董卓の首を打落し、剣尖に刺して高くかかげ、呂布はかねて王允(おういん)から渡されていた詔書をひらいて、高台に立ち、

「聖天子のみことのりにより、逆臣董卓を討ち終んぬ。――その余は罪なし、ことごとくゆるし給う」


 と、大音で読んだ。

 董卓、ことし五十四歳。

 千古に(しる)すべきその日その年、まさに漢の献帝(けんてい)が代の初平三年壬申(みずのえさる)、四月二十二日の真昼だった。


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登場人物紹介

劉備玄徳

劉備玄徳

ひげ

劉備玄徳

劉備玄徳

諸葛孔明《しょかつこうめい》

張飛

張飛

髭あり

張飛

関羽

関羽


関平《かんぺい》

関羽の養子

趙雲

趙雲

張雲

黄忠《こうちゅう》

魏延《ぎえん》

馬超

厳顔《げんがん》

劉璋配下から劉備配下

龐統《ほうとう》

糜竺《びじく》

陶謙配下

後劉備の配下

糜芳《びほう》

糜竺《びじく》の弟

孫乾《そんけん》

陶謙配下

後劉備の配下

陳珪《ちんけい》

陳登の父親

陳登《ちんとう》

陶謙の配下から劉備の配下へ、

曹豹《そうひょう》

劉備の配下だったが、酒に酔った張飛に殴られ裏切る

周倉《しゅうそう》

もと黄巾の張宝《ちょうほう》の配下

関羽に仕える

劉辟《りゅうへき》

簡雍《かんよう》

劉備の配下

馬良《ばりょう》

劉備の配下

伊籍《いせき》

法正

劉璋配下

のち劉備配下

劉封

劉備の養子

孟達

劉璋配下

のち劉備配下

商人

宿屋の主人

馬元義

甘洪

李朱氾

黄巾族

老僧

芙蓉

芙蓉

糜夫人《びふじん》

甘夫人


劉備の母

劉備の母

役人


劉焉

幽州太守

張世平

商人

義軍

部下

黄巾族

程遠志

鄒靖

青州太守タイシュ龔景キョウケイ

盧植

朱雋

曹操

曹操

やけど

曹操

曹操


若い頃の曹操

曹丕《そうひ》

曹丕《そうひ》

曹嵩

曹操の父

曹洪


曹洪


曹徳

曹操の弟

曹仁

曹純

曹洪の弟

司馬懿《しばい》仲達《ちゅうたつ》

曹操配下


楽進

楽進

夏侯惇

夏侯惇《かこうじゅん》

夏侯惇

曹操の配下

左目を曹性に射られる。

夏侯惇

曹操の配下

左目を曹性に射られる。

韓浩《かんこう》

曹操配下

夏侯淵

夏侯淵《かこうえん》

典韋《てんい》

曹操の配下

悪来と言うあだ名で呼ばれる

劉曄《りゅうよう》

曹操配下

李典

曹操の配下

荀彧《じゅんいく》

曹操の配下

荀攸《じゅんゆう》

曹操の配下

許褚《きょちょ》

曹操の配下

許褚《きょちょ》

曹操の配下

徐晃《じょこう》

楊奉の配下、後曹操に仕える

史渙《しかん》

徐晃《じょこう》の部下

満寵《まんちょう》

曹操の配下

郭嘉《かくか》

曹操の配下

曹安民《そうあんみん》

曹操の甥

曹昂《そうこう》

曹操の長男

于禁《うきん》

曹操の配下

王垢《おうこう》

曹操の配下、糧米総官

程昱《ていいく》

曹操の配下

呂虔《りょけん》

曹操の配下

王必《おうひつ》

曹操の配下

車冑《しゃちゅう》

曹操の配下、一時的に徐州の太守

孔融《こうゆう》

曹操配下

劉岱《りゅうたい》

曹操配下

王忠《おうちゅう》

曹操配下

張遼

呂布の配下から曹操の配下へ

張遼

蒋幹《しょうかん》

曹操配下、周瑜と学友

張郃《ちょうこう》

袁紹の配下

賈詡

賈詡《かく》

董卓

李儒

董卓の懐刀

李粛

呂布を裏切らせる

華雄

胡軫

周毖

李傕

李別《りべつ》

李傕の甥

楊奉

李傕の配下、反乱を企むが失敗し逃走

韓暹《かんせん》

宋果《そうか》

李傕の配下、反乱を企むが失敗

郭汜《かくし》

郭汜夫人

樊稠《はんちゅう》

張済

張繍《ちょうしゅう》

張済《ちょうさい》の甥

胡車児《こしゃじ》

張繍《ちょうしゅう》配下

楊彪

董卓の長安遷都に反対

楊彪《ようひょう》の妻

黄琬

董卓の長安遷都に反対

荀爽

董卓の長安遷都に反対

伍瓊

董卓の長安遷都に反対

趙岑

長安までの殿軍を指揮

徐栄

張温

張宝

孫堅

呉郡富春(浙江省・富陽市)の出で、孫子の子孫

孫静

孫堅の弟

孫策

孫堅の長男

孫権《そんけん》

孫権

孫権

孫堅の次男

朱治《しゅち》

孫堅の配下

呂範《りょはん》

袁術の配下、孫策に力を貸し配下になる

周瑜《しゅうゆ》

孫策の配下

周瑜《しゅうゆ》

周瑜

張紘

孫策の配下

二張の一人

張昭

孫策の配下

二張の一人

蒋欽《しょうきん》

湖賊だったが孫策の配下へ

周泰《しゅうたい》

湖賊だったが孫策の配下へ

周泰《しゅうたい》

孫権を守って傷を負った

陳武《ちんぶ》

孫策の部下

太史慈《たいしじ》

劉繇《りゅうよう》配下、後、孫策配下


元代

孫策の配下

祖茂

孫堅の配下

程普

孫堅の配下

程普

孫堅の配下

韓当

孫堅の配下

黄蓋

孫堅の部下

黄蓋《こうがい》

桓楷《かんかい》

孫堅の部下


魯粛《ろしゅく》

孫権配下

諸葛瑾《しょかつきん》

諸葛孔明《しょかつこうめい》の兄

孫権の配下


呂蒙《りょもう》

孫権配下

虞翻《ぐほん》

王朗の配下、後、孫策の配下

甘寧《かんねい》

劉表の元にいたが、重く用いられず、孫権の元へ

甘寧《かんねい》

凌統《りょうとう》

凌統《りょうとう》

孫権配下


陸遜《りくそん》

孫権配下

張均

督郵

霊帝

劉恢

何進

何后

潘隠

何進に通じている禁門の武官

袁紹

袁紹

劉《りゅう》夫人

袁譚《えんたん》

袁紹の嫡男

袁尚《えんしょう》

袁紹の三男

高幹

袁紹の甥

顔良

顔良

文醜

兪渉

逢紀

冀州を狙い策をねる。

麹義

田豊

審配

袁紹の配下

沮授《そじゅ》

袁紹配下

郭図《かくと》

袁紹配下


高覧《こうらん》

袁紹の配下

淳于瓊《じゅんうけい》

袁紹の配下

酒が好き

袁術

袁胤《えんいん》

袁術の甥

紀霊《きれい》

袁術の配下

荀正

袁術の配下

楊大将《ようたいしょう》

袁術の配下

韓胤《かんいん》

袁術の配下

閻象《えんしょう》

袁術配下

韓馥

冀州の牧

耿武

袁紹を国に迎え入れることを反対した人物。

鄭泰

張譲

陳留王

董卓により献帝となる。

献帝

献帝

伏皇后《ふくこうごう》

伏完《ふくかん》

伏皇后の父

楊琦《ようき》

侍中郎《じちゅうろう》

皇甫酈《こうほれき》

董昭《とうしょう》

董貴妃

献帝の妻、董昭の娘

王子服《おうじふく》

董承《とうじょう》の親友

馬騰《ばとう》

西涼の太守

崔毅

閔貢

鮑信

鮑忠

丁原

呂布


呂布

呂布

呂布

厳氏

呂布の正妻

陳宮

高順

呂布の配下

郝萌《かくほう》

呂布配下

曹性

呂布の配下

夏侯惇の目を射った人

宋憲

呂布の配下

侯成《こうせい》

呂布の配下


魏続《ぎぞく》

呂布の配下

王允

貂蝉《ちょうせん》

孫瑞《そんずい》

王允の仲間、董卓の暗殺を謀る

皇甫嵩《こうほすう》

丁管

越騎校尉の伍俘

橋玄

許子将

呂伯奢

衛弘

公孫瓉

北平の太守

公孫越

王匡

方悦

劉表

蔡夫人

劉琦《りゅうき》

劉表の長男

劉琦《りゅうき》

劉表の長男

蒯良

劉表配下

蒯越《かいえつ》

劉表配下、蒯良の弟

黄祖

劉表配下

黄祖

陳生

劉表配下

張虎

劉表配下


蔡瑁《さいぼう》

劉表配下

呂公《りょこう》

劉表の配下

韓嵩《かんすう》

劉表の配下

牛輔

金を持って逃げようとして胡赤児《こせきじ》に殺される

胡赤児《こせきじ》

牛輔を殺し金を奪い、呂布に降伏するも呂布に殺される。

韓遂《かんすい》

并州《へいしゅう》の刺史《しし》

西涼の太守|馬騰《ばとう》と共に長安をせめる。

陶謙《とうけん》

徐州《じょしゅう》の太守

張闓《ちょうがい》

元黄巾族の陶謙の配下

何曼《かまん》

截天夜叉《せってんやしゃ》

黄巾の残党

何儀《かぎ》

黄巾の残党

田氏

濮陽《ぼくよう》の富豪

劉繇《りゅうよう》

楊州の刺史

張英

劉繇《りゅうよう》の配下


王朗《おうろう》

厳白虎《げんぱくこ》

東呉《とうご》の徳王《とくおう》と称す

厳与《げんよ》

厳白虎の弟

華陀《かだ》

医者

鄒氏《すうし》

未亡人

徐璆《じょきゅう》

袁術の甥、袁胤《えんいん》をとらえ、玉璽を曹操に送った

鄭玄《ていげん》

禰衡《ねいこう》

吉平

医者

慶童《けいどう》

董承の元で働く奴隷

陳震《ちんしん》

袁紹配下

龔都《きょうと》

郭常《かくじょう》

郭常《かくじょう》の、のら息子

裴元紹《はいげんしょう》

黄巾の残党

関定《かんてい》

許攸《きょゆう》

袁紹の配下であったが、曹操の配下へ

辛評《しんひょう》

辛毘《しんび》の兄

辛毘《しんび》

辛評《しんひょう》の弟

袁譚《えんたん》の配下、後、曹操の配下

呂曠《りょこう》

呂翔《りょしょう》の兄

呂翔《りょしょう》

呂曠《りょこう》の弟


李孚《りふ》

袁尚配下

王修

田疇《でんちゅう》

元袁紹の部下

公孫康《こうそんこう》

文聘《ぶんぺい》

劉表配下

王威

劉表配下

司馬徽《しばき》

道号を水鏡《すいきょう》先生

徐庶《じょしょ》

単福と名乗る

劉泌《りゅうひつ》

徐庶の母

崔州平《さいしゅうへい》

孔明の友人

諸葛均《しょかつきん》

石広元《せきこうげん》

孟公威《もうこうい》

媯覧《ぎらん》

戴員《たいいん》

孫翊《そんよく》

徐氏《じょし》

辺洪

陳就《ちんじゅ》

郄慮《げきりょ》

劉琮《りゅうそう》

劉表次男

李珪《りけい》

王粲《おうさん》

宋忠

淳于導《じゅんうどう》

曹仁《そうじん》の旗下《きか》

晏明

曹操配下

鍾縉《しょうしん》、鍾紳《しょうしん》

兄弟

夏侯覇《かこうは》

歩隲《ほしつ》

孫権配下

薛綜《せっそう》

孫権配下

厳畯《げんしゅん》

孫権配下


陸績《りくせき》

孫権の配下

程秉《ていへい》

孫権の配下

顧雍《こよう》

孫権配下

丁奉《ていほう》

孫権配下

徐盛《じょせい》

孫権配下

闞沢《かんたく》

孫権配下

蔡薫《さいくん》

蔡和《さいか》

蔡瑁の甥

蔡仲《さいちゅう》

蔡瑁の甥

毛玠《もうかい》

曹操配下

焦触《しょうしょく》

曹操配下

張南《ちょうなん》

曹操配下

馬延《ばえん》

曹操配下

張顗《ちょうぎ》

曹操配下

牛金《ぎゅうきん》

曹操配下


陳矯《ちんきょう》

曹操配下

劉度《りゅうど》

零陵の太守

劉延《りゅうえん》

劉度《りゅうど》の嫡子《ちゃくし》

邢道栄《けいどうえい》

劉度《りゅうど》配下

趙範《ちょうはん》

鮑龍《ほうりゅう》

陳応《ちんおう》

金旋《きんせん》

武陵城太守

鞏志《きょうし》

韓玄《かんげん》

長沙の太守

宋謙《そうけん》

孫権の配下

戈定《かてい》

戈定《かてい》の弟

張遼の馬飼《うまかい》

喬国老《きょうこくろう》

二喬の父

呉夫人

馬騰

献帝

韓遂《かんすい》

黄奎

曹操の配下


李春香《りしゅんこう》

黄奎《こうけい》の姪

陳群《ちんぐん》

曹操の配下

龐徳《ほうとく》

馬岱《ばたい》

鍾繇《しょうよう》

曹操配下

鍾進《しょうしん》

鍾繇《しょうよう》の弟

曹操配下

丁斐《ていひ》

夢梅《むばい》

許褚

楊秋

侯選

李湛

楊阜《ようふ》

張魯《ちょうろ》

張衛《ちょうえい》

閻圃《えんほ》

劉璋《りゅうしょう》

張松《ちょうしょう》

劉璋配下

黄権《こうけん》

劉璋配下

のち劉備配下

王累《おうるい》

王累《おうるい》

李恢《りかい》

劉璋配下

のち劉備配下

鄧賢《とうけん》

劉璋配下

張任《ちょうじん》

劉璋配下

周善

孫権配下


呉妹君《ごまいくん》

董昭《とうしょう》

曹操配下

楊懐《ようかい》

劉璋配下

高沛《こうはい》

劉璋配下

劉巴《りゅうは》

劉璋配下

劉璝《りゅうかい》

劉璋配下

張粛《ちょうしゅく》

張松の兄


冷苞

劉璋配下

呉懿《ごい》

劉璋の舅

彭義《ほうぎ》

鄭度《ていど》

劉璋配下

韋康《いこう》

姜叙《きょうじょ》

夏侯淵《かこうえん》

趙昂《ちょうこう》

楊柏《ようはく》

張魯配下

楊松

楊柏《ようはく》の兄

張魯配下

費観《ひかん》

劉璋配下

穆順《ぼくじゅん》

楊昂《ようこう》

楊任

崔琰《さいえん》

曹操配下


雷同

郭淮《かくわい》

曹操配下

霍峻《かくしゅん》

劉備配下

夏侯尚《かこうしょう》

曹操配下

夏侯徳

曹操配下

夏侯尚《かこうしょう》の兄

陳式《ちんしき》

劉備配下

杜襲《としゅう》

曹操配下

慕容烈《ぼようれつ》

曹操配下

焦炳《しょうへい》

曹操配下

張翼

劉備配下

王平

曹操配下であったが、劉備配下へ。

曹彰《そうしょう》

楊修《ようしゅう》

曹操配下

夏侯惇

費詩《ひし》

劉備配下

王甫《おうほ》

劉備配下

呂常《りょじょう》

曹操配下

董衡《とうこう》

曹操配下

李氏《りし》

龐徳の妻

成何《せいか》

曹操配下

蒋済《しょうさい》

曹操配下

傅士仁《ふしじん》

劉備配下

徐商

曹操配下


廖化

劉備配下

趙累《ちょうるい》

劉備配下

朱然《しゅぜん》

孫権配下


潘璋

孫権配下

左咸《さかん》

孫権配下

馬忠

孫権配下

許靖《きょせい》

劉備配下

華歆《かきん》

曹操配下

呉押獄《ごおうごく》

典獄

司馬孚《しばふ》

司馬懿《しばい》の弟

賈逵《かき》


曹植


卞氏《べんし》

申耽《しんたん》

孟達の部下

范疆《はんきょう》

張飛の配下

張達

張飛の配下


関興《かんこう》

関羽の息子

張苞《ちょうほう》

張飛の息子

趙咨《ちょうし》

孫権配下

邢貞《けいてい》

孫桓《そんかん》

孫権の甥

呉班

張飛の配下

崔禹《さいう》

孫権配下

張南

劉備配下

淳于丹《じゅんうたん》

孫権配下

馮習

劉備配下


丁奉

孫権配下

傅彤《ふとう》

劉備配下

程畿《ていき》

劉備配下

趙融《ちょうゆう》

劉備配下

朱桓《しゅかん》

孫権配下


常雕《じょうちょう》

曹丕配下

吉川英治


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