第44話、李傕と郭汜

文字数 8,002文字

 翌る日。

 彼の妻は、盛装をこらし、美々しい輿(くるま)に乗って、大将軍郭汜夫人を訪問に出かけた。

「まあ、いつもお珍しい贈り物をいただいて」


 と、郭汜夫人は、まず珍貴な音物(いんもつ)の礼をいって、


「よいお召服ですこと」
 と、客の着物や、化粧ぶりを褒めた。
「ありがとうございます。わたくしの主人なんかちっとも衣裳などには構ってくれませんの。それよりも、令夫人のお(ぐし)は、お手入れがよいとみえて、ほんとにお綺麗ですこと。いつお目にかかっても、心からお美しいと思うお方は、世辞ではございませんが、そうたんとはございません。……それなのに、男というものは」

「オヤ、あなたは、わたくしの顔を見ながらなんで涙ぐむのですか」


「いいえ、べつに……」


「でも、おかしいではございませんか、なにか(わけ)があるのでしょう。隠さないで、はなして下さい。私にいえないことですか」


「……つい、涙などこぼして、夫人様(おくさま)おゆるし下さいませ」


「どうしたんです、一体」


「では、おはなし申しますが、ほんとに、誰にも秘密にして下さらないと」


「ええ、誰にも洩らしはしません」


「実はあの……夫人様(おくさま)のお顔を見ているうちに、なにもご存じないのかと、お可哀そうになって来て」


「え。わたしが、可哀そうになってですって。――可哀そうとは、一体、どういうわけで。……え? え?」

 郭夫人は、もう躍起になって、楊彪(ようひょう)の妻に、次のことばをせがみたてた。

 楊彪の妻は、わざと同情にたえない顔をして見せながら、

「ほんとに夫人様は、なにもご存じないんですか」


 と、空おそろしいことでも語るように声をひそめた。

 郭汜(かくし)の夫人は、もう彼女の唇の(わな)にかかっていた。


「なにも知りません。……なにかあの、宅の主人に(かか)わることではありませんか」


「え、そうなんですの……奥さま、どうか、あなたのお胸にだけたたんでおいて下さいませ。あの、お綺麗なんで有名な李司馬(りしば)のお若い奥様をご存じでいらっしゃいましょ」


李傕(りかく)様と良人(たく)とは、刎頸(ふんけい)の友ですから、私も、あの夫人とは親しくしておりますが」


「だから夫人様は、ほんとにお人が()すぎるって、世間でも口惜しがるんでございましょうね。あの李夫人と、お宅の郭将軍とは、もう()うからあの……とても……何なんですって」


「えっ。主人と、李夫人が?」


 郭汜の妻は、さっと、顔いろを変えて、


「ほ、ほんとですか」

 と、わなないた。

 楊彪の妻は、

「奥さま。男って、みんなそうなんですから、決して、ご主人をお怨みなさらないがようございますよ。ただ私は、李夫人が、憎らしゅうございますわ。あなたという者があるのを知っていながら、何ていうお方だろうと思って――」
 と、すり寄って、抱かないばかりに慰めると、郭夫人は、
「道理でこの頃、良人(たく)様子(ようす)が変だと思いました。夜もたびたび遅く帰るし、私には、不機嫌ですし……」

 と、さめざめと泣いた。

 楊彪の妻が、帰ってゆくと、彼女は病人のように、室へ籠ってしまった。その夜も、折悪しく、彼女の良人は夜更けてから、微酔をおびて帰って来た。

「どうしたのかね。おい、()(さお)な顔しておるじゃないか」

「知りません! うっちゃッておいて下さい」


「また、持病(じびょう)か。ははは」


「…………」


 夫人は、背を向けて、しくしく泣いてばかりいた。

 四、五日すると、李傕司馬(りかくしば)の邸から、招待があった。郭夫人は、良人の出先に立ちふさがって、


「およしなさい。あんな所へ行くのは」
 と、血相を変えて止めた。

「いいじゃないか。親しい友の酒宴に行くのが、なぜ悪いのか」


「李司馬だって、あなたを心で怨んでいるにちがいありません」


「なぜ」


「なぜでも」


「分らんやつじゃな」


「今に分りましょう。古人も(おし)えております。両雄ならび立たずです。その上、個人的にも、面白くないことが肚にあるんですもの。――もしあなたが、酒宴の席で、毒害でもされたら私たちはどうなりましょう」

「はははは。なにかおまえは、勘ちがいしてるんじゃろ」


「なんでもようございますから、今夜は行かないで下さい。ね、あなた、お願いですから」


 果ては、胸にすがって、泣かれたりしたので、郭汜(かくし)も、振りもぎっても行かれず、遂に、その夜の招宴には、欠席してしまった。

 ――と、次の日李傕(りかく)の邸からわざわざ料理や引出物を、使いに持たせて贈って来た。厨房(ちゅうぼう)を通して受け取った郭汜の妻は、わざとその一品の中に、毒を入れて良人の前へ持って来た。

 郭汜は何気なく、

美味(うま)そうだな」
 と、箸を取りかけると、夫人はその手を振りのけて、

「大事なお体なのに、他家から来た喰べ物を、毒味もせずに召上がるなんて、飛んでもない」


 と、その箸をもって、料理の一品をはさんで、庭面(にわも)へ投げやると、そこにいた飼犬が、とびついて喰べてしまった。


「……やっ?」


 郭汜は驚いた。見ているまに、犬は独楽(こま)のごとく廻って、一声絶叫すると、血を吐いて死んでしまった。


「おお! 怖ろしい」


 郭夫人は、良人にしがみつきながら、大仰(おおぎょう)に、身をふるわせて云った。


「ごらんなさい。(わたし)がいわないことではないでしょう。この通り、李司馬から届けてよこした料理には毒が入っているではありませんか。人の心だって、これと同じようなものです」
「ウむむ……」

 と、郭汜もうめいたきり、目前の事実に、ただ茫然としていた。

 こんなこともあってから、郭汜の心には、ようやく李傕(りかく)に対しての疑いが、芽を伸ばしていた。


 それから一ヵ月ほど後、朝廷から退出して帰ろうとする折を、李傕に()って誘われて、郭汜はぜひなく彼の邸へ立ち寄った。

「きょうは、少し心祝いのある日だから、充分に飲んでくれ給え」


 例によって、李司馬は、豪奢な食卓に、美姫をはべらせて、彼をもてなした。

 郭汜はつい帯紐(おびひも)()いて、泥酔して家に帰った。

 だが、帰る途中で、彼はすこし酔がさめかけた。――というのは生酔(なまよい)本性(ほんしょう)にたがわずで、なにかのはずみにふと、神経を起して、

「まさか、今夜の馳走には、毒は入っていなかったろうな?」


 と、いつぞや毒にあたって死んだ犬の断末魔(だんまつま)の啼き声を思い出してきたからであった。


「……大丈夫かしら?」


 そう神経が手伝いだすと、なんとはなく胸がむかついて来た。急に鳩尾(みぞおち)のあたりへそれが()きあげてくる。

「あ。これはいかん」


 彼は、額の汗を指で撫でた。そして車の者に、


「急げ、急げ」

 と、命じた。

 邸へ戻るなり、彼は、あわてて妻を呼び、

「なにか、毒を()す薬はないか」


 と、(しょう)へ仰向けに(たお)れながら云った。

 夫人は、(わけ)を聞くと、この時とばかり、薬の代りに糞汁(ふんじゅう)をのませて、良人の背をなでていた。さらぬだに、神経を起していた郭汜はあわてて異様なものを()みくだしたので、とたんに、牀の下へ、腹中のものをみな吐き出してしまった。


「オオ。いい塩梅(あんばい)に、すぐ薬が効きました。これでさっぱりしたでしょう」


「ああ、苦しかった」


「もうお生命は大丈夫です」


「……ひどい目に遭った」


「あなたもあなたです。いくら(わたし)がご注意しても、李司馬を信じきっているから、こんなことになるんです」


「もう分った。われながら、おれはあまり愚直(ぐちょく)すぎた。よろしい、李司馬がその気なら、おれにも俺の考えがある」


 蒼白になった額を、自分の(こぶし)で、二つ三つ叩いていたが、やにわに室を飛びだしたと思うと、郭汜は、その夜のうちに、兵を集め、李司馬の邸へ夜討をかけた。

 李傕の方にも、いちはやく、そのことを知らせた者があるので、


「さては、此方を除いて、おのれ一人、権を握らんとする所存だな。いざ来い、その儀ならば」


 と、すでに彼のほうにも、充分な備えがあったので、両軍、(ちまた)を挟んで、翌日もその翌日も、修羅(しゅら)の巷を作って、血みどろな戦闘を繰返すばかりだった。

 一日ごとに、両軍の兵は殖え、長安の城下にふたたび大乱状態が起った。――その混乱の中に、李司馬の甥の李暹(りせん)という男は、

「そうだ。……天子をこっちへ」


 と、気づいて、いちはやく龍座(りゅうざ)へせまって、天子と皇后を無理無態に(くるま)へうつし、謀臣の賈詡(かく)、武将左霊(されい)のふたりを監視につけ、泣きさけび、追い慕う内侍や宮内官などに眼もくれず、後宰門(こうさいもん)から乱箭(らんせん)の巷へと、がらがら曳きだして行った。


「李司馬の甥が、天子を御輦(みくるま)にのせて、どこかへ誘拐(かどわか)して行きます」

 部下の急報を聞いて、郭汜(かくし)は非常に狼狽した。


「ああ、抜かった。天子を奪われては、一大事だ。それっ、やるな!」


 にわかに、後宰門外へ、兵を走らせたが、もう間にあわなかった。

 奔馬と狂兵にひかれてゆく龍車は、黄塵をあげて、郿塢街道(びうかいどう)のほうへ急いでいた。


「あれだあれだ」


 郭汜の兵は、騒ぎながら、ワラワラと追矢を射かけた。しかし、敵の殿軍(しんがり)に射返されて、却っておびただしい負傷者を求めてしまった。


「出し抜かれたか。くそいまいましいことではある」


 郭汜は、自分の不覚の鬱憤ばらしに兵を率いて、禁闕(きんけつ)へ侵入し、日頃気にくわない朝臣を斬り殺したり、また、後宮の美姫や女官を捕虜として、自分の陣地へ引っ立てた。

 そればかりか、すでに帝もおわさず、政事(まつりごと)もそこにはない宮殿へ無用な火を放って、


「この上は、あくまで戦うぞ」

 と、その炎を見て、いたずらに快哉(かいさい)をさけんだ。

 一方――

 帝と皇后の御輦(みくるま)は、李暹(りせん)のために、李司馬の軍営へと、(しゃ)()二、曳きこまれて来たが、そこへお置きするのはさすがに不安なので李傕(りかく)、李暹の叔父甥は、相談のうえ、以前、董相国(とうしょうこく)の別荘でありまた、堅城でもある郿塢(びう)の城内へ、(うつ)し奉ることとした。

 以来、献帝並びに皇后は、郿塢城の幽室に監禁されたまま、十数日を過しておられた。帝のご意志はもとよりのこと、一歩の自由もゆるされなかった。

 供御(くご)の食物なども、実にひどいもので、膳がくれば、必ず腐臭(ふしゅう)がともなっていた。

 帝は、(はし)をお取りにならない。侍臣たちは、()いて口へ入れてみたが、みな嘔吐(おうと)をこらえながら、ただ、涙をうかべあうだけだった。

「侍従どもが、餓鬼のごとく痩せてゆくのは、見ている身が(つら)い。願わくは、(ちん)へ徳をほどこす心をもて、彼らに(あわ)れみを与えよ」

 献帝は、そう仰っしゃって、李司馬の許へ使いを立て、一(のう)の米と、一()の牛肉を要求された。すると、李傕がやって来て、


「今は、闕下(けっか)に大乱の起っている非常時だ。朝夕の供御は、兵卒から上げてあるのに、この上、なにを贅沢なご(たく)をならべるのかっ」


 と、帝へ向って、臣下にあるまじき悪口(あっこう)をほざいた。そして、なにか傍らから云った侍従をも(なぐ)りつけて立ち去ったが、さすがに後では、少し寝ざめが悪かったものとみえ、その日の夕餉(ゆうげ)には若干の米と、腐った牛肉の幾片かが皿に盛られてあった。

「ああ。これが彼の良心か」


 侍従たちは、その腐った物の臭気(しゅうき)に面をそむけた。

 帝は、いたく憤られて、


豎子(じゅし)、かくも(ちん)を、ないがしろに振舞うか」


 と、袞龍(こんりょう)(そで)をお眼にあてたまい身をふるわせてお嘆きになった。

 侍臣のうちに、楊彪(ようひょう)もひかえていた。――

 彼は、断腸の思いがした。

 自分の妻に、反間の計をふくめて、今日の乱を作った者は、誰でもない楊彪である。

 計略図にあたって、郭汜(かくし)李傕(りかく)とが互に猜疑(さいぎ)しあって、血みどろな角逐(かくちく)を演じ出したのは、まさに、彼の思うつぼであったが、帝と皇后の御身に、こんな辛酸が下ろうとは、夢にも思わなかったところである。

「陛下。おゆるし下さい。そして李傕の残忍を、もうしばらく、お忍び下さい。そのうちに、きっと……」


 云いかけた時、幽室の外を、どやどやと兵の馳ける跫音(あしおと)が流れて行った。そして城内一度に、何事か、わあっと(とき)の声に揺れかえった。

 折も折である。

 帝は、容色(かおいろ)を変えて、

「何事か?」と、左右をかえりみられた。

「見て参りましょう」

 侍臣の一人があわてて出て行った。そして、すぐ帰って来ると、

「たいへんです。郭汜(かくし)の軍勢が城門に押しよせ、帝の玉体を渡せと、(とき)のこえをあげ、()を鳴らして、ひしめいておりまする」と、奉答した。

 帝は、喪心(そうしん)せんばかり驚いて、


「前門には虎、後門には狼。両賊は(ちん)の身を賭物(かけもの)として、爪牙(そうが)()ぎあっている。出ずるも修羅、止まるも地獄、朕はそもそも、いずこに身を置いていいのか」

 と、慟哭(どうこく)された。

 侍中郎(じちゅうろう)楊琦(ようき)は、共に涙をふきながら、帝を慰め奉った。

李傕(りかく)は、元来が辺土の(えびす)そだちで最前のように、礼をわきまえず、言語も粗野な(おとこ)ですが、あの後で、心に悔いる色が見えないでもありませんでした。そのうちに、不忠の罪を()じて、玉座の安泰をはかりましょう。ともあれ、ここは静かに、成行きをご覧あそばしませ」
 そのうちに、城門外では、ひと合戦終ったか、矢叫(やたけ)びや喊声(かんせい)がやんだと思うと、寄手の内から一人の大将が、馬を乗出して、大音声にどなっていた。
「逆賊李傕(りかく)にいう。――天子は天下の天子なり、何故(なにゆえ)なれば、(わたくし)に、帝をおびやかし奉り、玉座を勝手にこれへ(うつ)しまいらせたか。――郭汜(かくし)、万民に代って汝の罪を問う、返答やあるっ!」

 すると、城内の陰から李傕、さっさっと馬をすすめて、


「笑うべきたわ(ごと)かな。汝ら乱賊の難を避けて帝おん自らこれへ龍駕(りゅうが)(はし)らせ給うによって、李傕御座(ぎょざ)を守護してこれにあるのだ。――汝らなお、龍駕をおうて天子に弓をひくかっ」
「だまれっ。守護し奉るに非ず、天子を押しこめ奉る大逆、かくれないことだ。速やかに、帝の御身を渡さぬにおいては、立ちどころに、その素っ首を百尺の宙へ刎ねとばすぞ」

「なにをっ、小ざかしい」


「帝を渡すか、生命を捨てるか」


「問答無用っ」


 李傕は、槍を振って、りゅうりゅうと突っかけてきた。

 郭汜は、大剣をふりかざし、おのれと、唇をかみ、(まなじり)を裂いた。双方の馬は(あわ)を噛んで、いななき立ち、一上一下、剣閃槍光(けんせんそうこう)のはためく下に、馬の八(てい)は砂塵を蹴上げ、鞍上(あんじょう)の人は雷喝(らいかつ)を発し、勝負は容易につきそうもなかった。


「待ち給え。両将、しばらく待ち給え!」


 ところへ。

 城中から()せ出して、双方を引分けた者は、つい今し方、帝のお傍から見えなくなっていた太尉楊彪(ようひょう)だった。

 楊彪は、身を挺してふたりに向って、懸河(けんが)の弁をふるい、


「ひとまず、ここは戦をやめて、双方、一応陣を退きなさい。帝の御命でござる。御命に(そむ)く者こそ、逆賊といわれても申し訳あるまい」

 と、いった。

 その一言に、双方、兵を収めてついに引退(ひきしりぞ)いた。

 楊彪は、翌日、朝廷の大臣以下、諸官の群臣六十余名を(いざな)って、郭汜(かくし)の陣中におもむいた。そして一日もはやく李傕(りかく)と和睦してはどうかとすすめてみた。

 誰もまだ気づかないが、もともとこの戦乱の火元は楊彪なのである。ちと薬が効きすぎたと彼もあわてだしたのだろうか。それともわざと仲裁役を買ってことさら、仮面の上に仮面をかむって来たのだろうか。彼もまた複雑な人間の一人ではある。


「なに、無条件で和睦(わぼく)せよと。ばかをいい給え」


 郭汜(かくし)は、耳もかさない。

 それのみか、不意に、兵に令を下して、楊彪(ようひょう)について来た大臣以下宮人など、六十余人の者を一からげに縛ってしまった。

「これは乱暴だ。和議の媒介(なかだち)に参った朝臣方を、なにゆえあって捕え給うか」

 楊彪が声を荒くしてとがめると、


「だまれっ。李司馬(りしば)のほうでは、天子をさえ捕えて(しち)としているではないか。それをもって、彼は強味としているゆえ、此方もまた、群臣を質として召捕っておくのだ」


 傲然(ごうぜん)、郭汜は云い放った。


「おお、なんたることぞ! 国府の二柱たる両将軍が、一方は天子を(おびや)かして質となし、一方は群臣を質としてうそぶく。浅ましや、人間の世もこうなるものか」


「おのれ、まだ囈言(たわごと)をほざくかっ」


 剣を抜いて、あわや楊彪を斬り捨てようとしたとき、中郎将楊密(ようみつ)が、あわてて郭汜の手を抑えた。楊密の(いさ)めで、郭汜は剣を納めたけれども縛りあげた群臣はゆるさなかった。ただ楊彪と朱雋(しゅしゅん)の二人だけ、いらぬとばかり、ほうりだされるように陣外へ追い返された。

 朱雋は、もはや老年だけに、きょうの扱いには、ひどく精神的な打撃をうけた。

「ああ。……ああ……」


 と、何度も空を仰いで、力なく歩いていたが、楊彪をかえりみて、


「お互いに、社稷(しゃしょく)の臣として、君を扶け奉ることもできず、世を救うこともできず、なんの生き甲斐がある」

 と歎いた。

 果ては、楊彪と抱きあって、路傍に泣きたおれ、朱雋は一時昏絶(こんぜつ)するほど悲しんだ。

 そのせいか、朱雋は、家に帰るとまもなく、血を吐いて死んでしまった。

 ――それから五十余日というもの、明けても暮れても、李傕(りかく)、郭汜の両軍は、毎日、巷へ兵を出して戦っていた。

 戦いが仕事のように。戦いが生活のように。戦いが楽しみのように。意味なく、大義なく、涙なく、彼らは戦っていた。

 双方の死骸は、街路に横たわり、溝をのぞけば溝も腐臭(ふしゅう)。木陰にはいれば木陰にも腐臭。――そこに淋しき草の花は咲き、(あぶ)がうなり、馬蠅(うまばえ)が飛んでいた。

 馬蠅の世界も、彼らの世界も、なんの変りもなかった。――むしろ馬蠅の世界には、緑陰(りょくいん)の涼風があり、豆の花が咲いていた。

「なぜ、(ちん)は天子に生れたろうか」

 帝は、日夜、御涙(おんなみだ)の乾く時もなく沈んでおられた。


「陛下」


 侍中郎(じちゅうろう)楊琦(ようき)がそっとお耳へささやいた。


李傕(りかく)の謀臣に、賈詡(かく)という者がおります。――臣がひそかに見ておりますに、賈詡には、まだ、真実の心がありそうです。帝の尊ぶべきことを知る(さむらい)らしいと見ました。いちどひそかにお召しになってごらんなさい」

 或る時、賈詡は用があって、帝の幽室へはいって来た。帝は人をしりぞけて突然陪臣の賈詡の前に再拝し、


「汝、漢朝の乱状に義をふるって、朕にあわれみを思え」


 と、(のたも)うた。

 賈詡は、驚いて、床にひざまずき、頓首(とんしゅ)して答えた。


「今の無情は、臣の心ではありません。時をお待ち遊ばしませ」


 と、言い、去って行った。
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登場人物紹介

劉備玄徳

劉備玄徳

ひげ

劉備玄徳

劉備玄徳

諸葛孔明《しょかつこうめい》

張飛

張飛

髭あり

張飛

関羽

関羽


関平《かんぺい》

関羽の養子

趙雲

趙雲

張雲

黄忠《こうちゅう》

魏延《ぎえん》

馬超

厳顔《げんがん》

劉璋配下から劉備配下

龐統《ほうとう》

糜竺《びじく》

陶謙配下

後劉備の配下

糜芳《びほう》

糜竺《びじく》の弟

孫乾《そんけん》

陶謙配下

後劉備の配下

陳珪《ちんけい》

陳登の父親

陳登《ちんとう》

陶謙の配下から劉備の配下へ、

曹豹《そうひょう》

劉備の配下だったが、酒に酔った張飛に殴られ裏切る

周倉《しゅうそう》

もと黄巾の張宝《ちょうほう》の配下

関羽に仕える

劉辟《りゅうへき》

簡雍《かんよう》

劉備の配下

馬良《ばりょう》

劉備の配下

伊籍《いせき》

法正

劉璋配下

のち劉備配下

劉封

劉備の養子

孟達

劉璋配下

のち劉備配下

商人

宿屋の主人

馬元義

甘洪

李朱氾

黄巾族

老僧

芙蓉

芙蓉

糜夫人《びふじん》

甘夫人


劉備の母

劉備の母

役人


劉焉

幽州太守

張世平

商人

義軍

部下

黄巾族

程遠志

鄒靖

青州太守タイシュ龔景キョウケイ

盧植

朱雋

曹操

曹操

やけど

曹操

曹操


若い頃の曹操

曹丕《そうひ》

曹丕《そうひ》

曹嵩

曹操の父

曹洪


曹洪


曹徳

曹操の弟

曹仁

曹純

曹洪の弟

司馬懿《しばい》仲達《ちゅうたつ》

曹操配下


楽進

楽進

夏侯惇

夏侯惇《かこうじゅん》

夏侯惇

曹操の配下

左目を曹性に射られる。

夏侯惇

曹操の配下

左目を曹性に射られる。

韓浩《かんこう》

曹操配下

夏侯淵

夏侯淵《かこうえん》

典韋《てんい》

曹操の配下

悪来と言うあだ名で呼ばれる

劉曄《りゅうよう》

曹操配下

李典

曹操の配下

荀彧《じゅんいく》

曹操の配下

荀攸《じゅんゆう》

曹操の配下

許褚《きょちょ》

曹操の配下

許褚《きょちょ》

曹操の配下

徐晃《じょこう》

楊奉の配下、後曹操に仕える

史渙《しかん》

徐晃《じょこう》の部下

満寵《まんちょう》

曹操の配下

郭嘉《かくか》

曹操の配下

曹安民《そうあんみん》

曹操の甥

曹昂《そうこう》

曹操の長男

于禁《うきん》

曹操の配下

王垢《おうこう》

曹操の配下、糧米総官

程昱《ていいく》

曹操の配下

呂虔《りょけん》

曹操の配下

王必《おうひつ》

曹操の配下

車冑《しゃちゅう》

曹操の配下、一時的に徐州の太守

孔融《こうゆう》

曹操配下

劉岱《りゅうたい》

曹操配下

王忠《おうちゅう》

曹操配下

張遼

呂布の配下から曹操の配下へ

張遼

蒋幹《しょうかん》

曹操配下、周瑜と学友

張郃《ちょうこう》

袁紹の配下

賈詡

賈詡《かく》

董卓

李儒

董卓の懐刀

李粛

呂布を裏切らせる

華雄

胡軫

周毖

李傕

李別《りべつ》

李傕の甥

楊奉

李傕の配下、反乱を企むが失敗し逃走

韓暹《かんせん》

宋果《そうか》

李傕の配下、反乱を企むが失敗

郭汜《かくし》

郭汜夫人

樊稠《はんちゅう》

張済

張繍《ちょうしゅう》

張済《ちょうさい》の甥

胡車児《こしゃじ》

張繍《ちょうしゅう》配下

楊彪

董卓の長安遷都に反対

楊彪《ようひょう》の妻

黄琬

董卓の長安遷都に反対

荀爽

董卓の長安遷都に反対

伍瓊

董卓の長安遷都に反対

趙岑

長安までの殿軍を指揮

徐栄

張温

張宝

孫堅

呉郡富春(浙江省・富陽市)の出で、孫子の子孫

孫静

孫堅の弟

孫策

孫堅の長男

孫権《そんけん》

孫権

孫権

孫堅の次男

朱治《しゅち》

孫堅の配下

呂範《りょはん》

袁術の配下、孫策に力を貸し配下になる

周瑜《しゅうゆ》

孫策の配下

周瑜《しゅうゆ》

周瑜

張紘

孫策の配下

二張の一人

張昭

孫策の配下

二張の一人

蒋欽《しょうきん》

湖賊だったが孫策の配下へ

周泰《しゅうたい》

湖賊だったが孫策の配下へ

周泰《しゅうたい》

孫権を守って傷を負った

陳武《ちんぶ》

孫策の部下

太史慈《たいしじ》

劉繇《りゅうよう》配下、後、孫策配下


元代

孫策の配下

祖茂

孫堅の配下

程普

孫堅の配下

程普

孫堅の配下

韓当

孫堅の配下

黄蓋

孫堅の部下

黄蓋《こうがい》

桓楷《かんかい》

孫堅の部下


魯粛《ろしゅく》

孫権配下

諸葛瑾《しょかつきん》

諸葛孔明《しょかつこうめい》の兄

孫権の配下


呂蒙《りょもう》

孫権配下

虞翻《ぐほん》

王朗の配下、後、孫策の配下

甘寧《かんねい》

劉表の元にいたが、重く用いられず、孫権の元へ

甘寧《かんねい》

凌統《りょうとう》

凌統《りょうとう》

孫権配下


陸遜《りくそん》

孫権配下

張均

督郵

霊帝

劉恢

何進

何后

潘隠

何進に通じている禁門の武官

袁紹

袁紹

劉《りゅう》夫人

袁譚《えんたん》

袁紹の嫡男

袁尚《えんしょう》

袁紹の三男

高幹

袁紹の甥

顔良

顔良

文醜

兪渉

逢紀

冀州を狙い策をねる。

麹義

田豊

審配

袁紹の配下

沮授《そじゅ》

袁紹配下

郭図《かくと》

袁紹配下


高覧《こうらん》

袁紹の配下

淳于瓊《じゅんうけい》

袁紹の配下

酒が好き

袁術

袁胤《えんいん》

袁術の甥

紀霊《きれい》

袁術の配下

荀正

袁術の配下

楊大将《ようたいしょう》

袁術の配下

韓胤《かんいん》

袁術の配下

閻象《えんしょう》

袁術配下

韓馥

冀州の牧

耿武

袁紹を国に迎え入れることを反対した人物。

鄭泰

張譲

陳留王

董卓により献帝となる。

献帝

献帝

伏皇后《ふくこうごう》

伏完《ふくかん》

伏皇后の父

楊琦《ようき》

侍中郎《じちゅうろう》

皇甫酈《こうほれき》

董昭《とうしょう》

董貴妃

献帝の妻、董昭の娘

王子服《おうじふく》

董承《とうじょう》の親友

馬騰《ばとう》

西涼の太守

崔毅

閔貢

鮑信

鮑忠

丁原

呂布


呂布

呂布

呂布

厳氏

呂布の正妻

陳宮

高順

呂布の配下

郝萌《かくほう》

呂布配下

曹性

呂布の配下

夏侯惇の目を射った人

宋憲

呂布の配下

侯成《こうせい》

呂布の配下


魏続《ぎぞく》

呂布の配下

王允

貂蝉《ちょうせん》

孫瑞《そんずい》

王允の仲間、董卓の暗殺を謀る

皇甫嵩《こうほすう》

丁管

越騎校尉の伍俘

橋玄

許子将

呂伯奢

衛弘

公孫瓉

北平の太守

公孫越

王匡

方悦

劉表

蔡夫人

劉琦《りゅうき》

劉表の長男

劉琦《りゅうき》

劉表の長男

蒯良

劉表配下

蒯越《かいえつ》

劉表配下、蒯良の弟

黄祖

劉表配下

黄祖

陳生

劉表配下

張虎

劉表配下


蔡瑁《さいぼう》

劉表配下

呂公《りょこう》

劉表の配下

韓嵩《かんすう》

劉表の配下

牛輔

金を持って逃げようとして胡赤児《こせきじ》に殺される

胡赤児《こせきじ》

牛輔を殺し金を奪い、呂布に降伏するも呂布に殺される。

韓遂《かんすい》

并州《へいしゅう》の刺史《しし》

西涼の太守|馬騰《ばとう》と共に長安をせめる。

陶謙《とうけん》

徐州《じょしゅう》の太守

張闓《ちょうがい》

元黄巾族の陶謙の配下

何曼《かまん》

截天夜叉《せってんやしゃ》

黄巾の残党

何儀《かぎ》

黄巾の残党

田氏

濮陽《ぼくよう》の富豪

劉繇《りゅうよう》

楊州の刺史

張英

劉繇《りゅうよう》の配下


王朗《おうろう》

厳白虎《げんぱくこ》

東呉《とうご》の徳王《とくおう》と称す

厳与《げんよ》

厳白虎の弟

華陀《かだ》

医者

鄒氏《すうし》

未亡人

徐璆《じょきゅう》

袁術の甥、袁胤《えんいん》をとらえ、玉璽を曹操に送った

鄭玄《ていげん》

禰衡《ねいこう》

吉平

医者

慶童《けいどう》

董承の元で働く奴隷

陳震《ちんしん》

袁紹配下

龔都《きょうと》

郭常《かくじょう》

郭常《かくじょう》の、のら息子

裴元紹《はいげんしょう》

黄巾の残党

関定《かんてい》

許攸《きょゆう》

袁紹の配下であったが、曹操の配下へ

辛評《しんひょう》

辛毘《しんび》の兄

辛毘《しんび》

辛評《しんひょう》の弟

袁譚《えんたん》の配下、後、曹操の配下

呂曠《りょこう》

呂翔《りょしょう》の兄

呂翔《りょしょう》

呂曠《りょこう》の弟


李孚《りふ》

袁尚配下

王修

田疇《でんちゅう》

元袁紹の部下

公孫康《こうそんこう》

文聘《ぶんぺい》

劉表配下

王威

劉表配下

司馬徽《しばき》

道号を水鏡《すいきょう》先生

徐庶《じょしょ》

単福と名乗る

劉泌《りゅうひつ》

徐庶の母

崔州平《さいしゅうへい》

孔明の友人

諸葛均《しょかつきん》

石広元《せきこうげん》

孟公威《もうこうい》

媯覧《ぎらん》

戴員《たいいん》

孫翊《そんよく》

徐氏《じょし》

辺洪

陳就《ちんじゅ》

郄慮《げきりょ》

劉琮《りゅうそう》

劉表次男

李珪《りけい》

王粲《おうさん》

宋忠

淳于導《じゅんうどう》

曹仁《そうじん》の旗下《きか》

晏明

曹操配下

鍾縉《しょうしん》、鍾紳《しょうしん》

兄弟

夏侯覇《かこうは》

歩隲《ほしつ》

孫権配下

薛綜《せっそう》

孫権配下

厳畯《げんしゅん》

孫権配下


陸績《りくせき》

孫権の配下

程秉《ていへい》

孫権の配下

顧雍《こよう》

孫権配下

丁奉《ていほう》

孫権配下

徐盛《じょせい》

孫権配下

闞沢《かんたく》

孫権配下

蔡薫《さいくん》

蔡和《さいか》

蔡瑁の甥

蔡仲《さいちゅう》

蔡瑁の甥

毛玠《もうかい》

曹操配下

焦触《しょうしょく》

曹操配下

張南《ちょうなん》

曹操配下

馬延《ばえん》

曹操配下

張顗《ちょうぎ》

曹操配下

牛金《ぎゅうきん》

曹操配下


陳矯《ちんきょう》

曹操配下

劉度《りゅうど》

零陵の太守

劉延《りゅうえん》

劉度《りゅうど》の嫡子《ちゃくし》

邢道栄《けいどうえい》

劉度《りゅうど》配下

趙範《ちょうはん》

鮑龍《ほうりゅう》

陳応《ちんおう》

金旋《きんせん》

武陵城太守

鞏志《きょうし》

韓玄《かんげん》

長沙の太守

宋謙《そうけん》

孫権の配下

戈定《かてい》

戈定《かてい》の弟

張遼の馬飼《うまかい》

喬国老《きょうこくろう》

二喬の父

呉夫人

馬騰

献帝

韓遂《かんすい》

黄奎

曹操の配下


李春香《りしゅんこう》

黄奎《こうけい》の姪

陳群《ちんぐん》

曹操の配下

龐徳《ほうとく》

馬岱《ばたい》

鍾繇《しょうよう》

曹操配下

鍾進《しょうしん》

鍾繇《しょうよう》の弟

曹操配下

丁斐《ていひ》

夢梅《むばい》

許褚

楊秋

侯選

李湛

楊阜《ようふ》

張魯《ちょうろ》

張衛《ちょうえい》

閻圃《えんほ》

劉璋《りゅうしょう》

張松《ちょうしょう》

劉璋配下

黄権《こうけん》

劉璋配下

のち劉備配下

王累《おうるい》

王累《おうるい》

李恢《りかい》

劉璋配下

のち劉備配下

鄧賢《とうけん》

劉璋配下

張任《ちょうじん》

劉璋配下

周善

孫権配下


呉妹君《ごまいくん》

董昭《とうしょう》

曹操配下

楊懐《ようかい》

劉璋配下

高沛《こうはい》

劉璋配下

劉巴《りゅうは》

劉璋配下

劉璝《りゅうかい》

劉璋配下

張粛《ちょうしゅく》

張松の兄


冷苞

劉璋配下

呉懿《ごい》

劉璋の舅

彭義《ほうぎ》

鄭度《ていど》

劉璋配下

韋康《いこう》

姜叙《きょうじょ》

夏侯淵《かこうえん》

趙昂《ちょうこう》

楊柏《ようはく》

張魯配下

楊松

楊柏《ようはく》の兄

張魯配下

費観《ひかん》

劉璋配下

穆順《ぼくじゅん》

楊昂《ようこう》

楊任

崔琰《さいえん》

曹操配下


雷同

郭淮《かくわい》

曹操配下

霍峻《かくしゅん》

劉備配下

夏侯尚《かこうしょう》

曹操配下

夏侯徳

曹操配下

夏侯尚《かこうしょう》の兄

陳式《ちんしき》

劉備配下

杜襲《としゅう》

曹操配下

慕容烈《ぼようれつ》

曹操配下

焦炳《しょうへい》

曹操配下

張翼

劉備配下

王平

曹操配下であったが、劉備配下へ。

曹彰《そうしょう》

楊修《ようしゅう》

曹操配下

夏侯惇

費詩《ひし》

劉備配下

王甫《おうほ》

劉備配下

呂常《りょじょう》

曹操配下

董衡《とうこう》

曹操配下

李氏《りし》

龐徳の妻

成何《せいか》

曹操配下

蒋済《しょうさい》

曹操配下

傅士仁《ふしじん》

劉備配下

徐商

曹操配下


廖化

劉備配下

趙累《ちょうるい》

劉備配下

朱然《しゅぜん》

孫権配下


潘璋

孫権配下

左咸《さかん》

孫権配下

馬忠

孫権配下

許靖《きょせい》

劉備配下

華歆《かきん》

曹操配下

呉押獄《ごおうごく》

典獄

司馬孚《しばふ》

司馬懿《しばい》の弟

賈逵《かき》


曹植


卞氏《べんし》

申耽《しんたん》

孟達の部下

范疆《はんきょう》

張飛の配下

張達

張飛の配下


関興《かんこう》

関羽の息子

張苞《ちょうほう》

張飛の息子

趙咨《ちょうし》

孫権配下

邢貞《けいてい》

孫桓《そんかん》

孫権の甥

呉班

張飛の配下

崔禹《さいう》

孫権配下

張南

劉備配下

淳于丹《じゅんうたん》

孫権配下

馮習

劉備配下


丁奉

孫権配下

傅彤《ふとう》

劉備配下

程畿《ていき》

劉備配下

趙融《ちょうゆう》

劉備配下

朱桓《しゅかん》

孫権配下


常雕《じょうちょう》

曹丕配下

吉川英治


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