第67話 人質交換
文字数 679文字
川面に長く突き出した桟橋の手前まで進んだ時だ。倉庫の陰から、ばらばらと数人の人影が現れた。
「ご苦労でした、貴堂大佐」
数人の男たちの中で、一歩前に出た男が銃を手に話しかけてくる。悠哉はその声と姿にはっとした。
「リュウ……」
自分の名を語るつぶやきに気づいて、リュウが悠哉に視線を向ける。
一瞬の動揺。が、すぐにリュウは冷徹な表情に戻っていた。
「唯音はどこだ? 無事なんだろうな?」
「姪御さんは無事です。今、会わせてさしあげますよ」
彼が片手を上げると、倉庫の陰から唯音と、彼女に銃を突きつけた男が姿を現した。
唯音は腕をつかまれ、銃口を脇腹に押しつけられている。
「おじさま!」
すがるように叫ぶ声に、冷静だった大佐の表情が初めて動いた。
「唯音!」
今すぐ駆け寄りたい衝動をこらえた唯音は、大佐の横に悠哉の姿を見い出し、唇を噛んだ。自分のせいでおじだけでなく、悠哉まで巻き込んでしまったのだ。
「約束通り、姪を返してもらおう」
「我々の仲間の釈放が先だ」
相手の要求に、わずかな沈黙の後、大佐は答えた。
「それでは同時だ。君たちの仲間をそちらに向かって歩かせる。唯音をこちらに向かって歩かせたまえ」
「いいでしょう。彼らの目隠しを外していただけませんか」
いや、まだだ、と大佐は首を横に振り、悠哉は焦る気持ちを懸命にこらえていた。
早く唯音を取り戻さなければ。釈放した男たちが替え玉だと見破られる前に。
「私が付き添って歩いていこう。唯音をこちらへ──」
リュウが唯音の腕をつかんでいる男に向かってうなずく。男は承知した、という風にうなずき返し、唯音を連れて歩き出す。
「ご苦労でした、貴堂大佐」
数人の男たちの中で、一歩前に出た男が銃を手に話しかけてくる。悠哉はその声と姿にはっとした。
「リュウ……」
自分の名を語るつぶやきに気づいて、リュウが悠哉に視線を向ける。
一瞬の動揺。が、すぐにリュウは冷徹な表情に戻っていた。
「唯音はどこだ? 無事なんだろうな?」
「姪御さんは無事です。今、会わせてさしあげますよ」
彼が片手を上げると、倉庫の陰から唯音と、彼女に銃を突きつけた男が姿を現した。
唯音は腕をつかまれ、銃口を脇腹に押しつけられている。
「おじさま!」
すがるように叫ぶ声に、冷静だった大佐の表情が初めて動いた。
「唯音!」
今すぐ駆け寄りたい衝動をこらえた唯音は、大佐の横に悠哉の姿を見い出し、唇を噛んだ。自分のせいでおじだけでなく、悠哉まで巻き込んでしまったのだ。
「約束通り、姪を返してもらおう」
「我々の仲間の釈放が先だ」
相手の要求に、わずかな沈黙の後、大佐は答えた。
「それでは同時だ。君たちの仲間をそちらに向かって歩かせる。唯音をこちらに向かって歩かせたまえ」
「いいでしょう。彼らの目隠しを外していただけませんか」
いや、まだだ、と大佐は首を横に振り、悠哉は焦る気持ちを懸命にこらえていた。
早く唯音を取り戻さなければ。釈放した男たちが替え玉だと見破られる前に。
「私が付き添って歩いていこう。唯音をこちらへ──」
リュウが唯音の腕をつかんでいる男に向かってうなずく。男は承知した、という風にうなずき返し、唯音を連れて歩き出す。