第20話 眼光
文字数 794文字
と、ちょうど店に入って来る客があった。その顔を見て、唯音は弾んだ声を上げた。
「リュウ!」
店の入り口でいきなり出くわしたリュウも、ひと呼吸おいて笑いかける。
「どうしたんだい、ドアのところで二人そろって」
「わたしのおじさまを見送ろうとしていたところなの」
唯音の言葉に、彼はかたわらに立っていた大佐に視線を向けた。
「おじさま、お友達のリュウよ」
紹介され、軽く頭を下げる。
「こちらは貴堂大佐。わたしのおじなの」
「貴堂、大佐……?」
唯音が口にした名に、彼の表情がぴくりと動いた。
「知ってるの?」
不思議そうにまばたきする唯音に、彼がいや、と首を横に振る。
「ただ、唯音と同じ姓だなと思って」
「そうね、父方のおじだから」
よろしく、とリュウが告げ、大佐もこちらこそ、とうなずく。それは何気ない出会いだった。少なくとも唯音にはそう思えた。
「では、私はこれで」
「本当に無理なさらないでね、おじさま」
「ああ、唯音の忠告を聞くことにするよ。──よい夜を」
「おじさまもね」
おーい、時間だぞ。バンド仲間が店の入り口まで悠哉と唯音を呼びに来る。
ブルーレディの外、通りには車が待たせてあった。大佐が乗り込み、車が発進するのを見届けると二人は急いで引き返した。
「ごめんなさいね、リュウ。せっかく来てくれたのに、ばたばたしてしまって」
一緒に急ぎ足でフロアを歩きながら唯音が詫 びる。
「俺ならかまわないが。そうか、あの人が君のおじさんなのか」
「おじはね、早くに奥さまを亡くして子供もいないので、わたしを実の娘みたいに可愛がってくれているの」
「大佐ってことは軍人だろう? 雰囲気がずいぶん毅然としていた」
「陸戦隊本部に所属しているわ」
「なるほどね……」
ステージのすそ、カーテンの陰からバンド仲間たちが急 かすように手招きしている。
そちらに気を取られ、唯音は彼の見せた表情に、一瞬、鋭く光った眼に気づかなかった。
「リュウ!」
店の入り口でいきなり出くわしたリュウも、ひと呼吸おいて笑いかける。
「どうしたんだい、ドアのところで二人そろって」
「わたしのおじさまを見送ろうとしていたところなの」
唯音の言葉に、彼はかたわらに立っていた大佐に視線を向けた。
「おじさま、お友達のリュウよ」
紹介され、軽く頭を下げる。
「こちらは貴堂大佐。わたしのおじなの」
「貴堂、大佐……?」
唯音が口にした名に、彼の表情がぴくりと動いた。
「知ってるの?」
不思議そうにまばたきする唯音に、彼がいや、と首を横に振る。
「ただ、唯音と同じ姓だなと思って」
「そうね、父方のおじだから」
よろしく、とリュウが告げ、大佐もこちらこそ、とうなずく。それは何気ない出会いだった。少なくとも唯音にはそう思えた。
「では、私はこれで」
「本当に無理なさらないでね、おじさま」
「ああ、唯音の忠告を聞くことにするよ。──よい夜を」
「おじさまもね」
おーい、時間だぞ。バンド仲間が店の入り口まで悠哉と唯音を呼びに来る。
ブルーレディの外、通りには車が待たせてあった。大佐が乗り込み、車が発進するのを見届けると二人は急いで引き返した。
「ごめんなさいね、リュウ。せっかく来てくれたのに、ばたばたしてしまって」
一緒に急ぎ足でフロアを歩きながら唯音が
「俺ならかまわないが。そうか、あの人が君のおじさんなのか」
「おじはね、早くに奥さまを亡くして子供もいないので、わたしを実の娘みたいに可愛がってくれているの」
「大佐ってことは軍人だろう? 雰囲気がずいぶん毅然としていた」
「陸戦隊本部に所属しているわ」
「なるほどね……」
ステージのすそ、カーテンの陰からバンド仲間たちが
そちらに気を取られ、唯音は彼の見せた表情に、一瞬、鋭く光った眼に気づかなかった。