第43話 誓い
文字数 579文字
病院を出ると、二人は共同租界 に向かって歩き出した。途中で車を拾ってもよかった。
「唯ちゃん、昨日は……」
街路樹の植えられた通りをゆっくりと足を運びながら、悠哉が口を開く。
「謝って済むとは思ってないけど、謝りたいんだ。──すまなかった」
苦渋のにじんだ口調に唯音は立ち止まり、うっすら微笑みかけた。
「もう、何も言わないで」
「許してもらえると、思っていいのか?」
「ひとつだけ……二度とあんなことをしないと約束して」
「誓うよ。金輪際、唯ちゃんに不埒な真似はしない」
その言葉を聞くと、唯音は柔らかくうなずいた。
安堵にも似た思いがじんわりと心に広がっていく。本当はひそかに心配していたのだ。もしこのまま悠哉と気まずくなってしまったら、と。
これで今までと同じように一緒にいられる。仲間たちと共に、笑いあったり、お茶を飲んだり、音楽をやったりできる。
愛とは呼べなくても、彼は唯音にとって大切な人なのだ。
微笑む唯音に、悠哉もほっとして笑みを返した。彼もまた、唯音と気まずくなってしまうことを、ずっと懸念していた。
たとえ他の相手を思慕していても、彼にとって唯音はやはり、かけがえのない娘なのだ。
二人は肩を並べて街路樹の葉陰の下を歩き、通りの角で車を拾って乗り込んだ。
「南京路のブルーレディへ」
悠哉が行く先を告げると、運転手は愛想よく返事をして車を発進させた。
「唯ちゃん、昨日は……」
街路樹の植えられた通りをゆっくりと足を運びながら、悠哉が口を開く。
「謝って済むとは思ってないけど、謝りたいんだ。──すまなかった」
苦渋のにじんだ口調に唯音は立ち止まり、うっすら微笑みかけた。
「もう、何も言わないで」
「許してもらえると、思っていいのか?」
「ひとつだけ……二度とあんなことをしないと約束して」
「誓うよ。金輪際、唯ちゃんに不埒な真似はしない」
その言葉を聞くと、唯音は柔らかくうなずいた。
安堵にも似た思いがじんわりと心に広がっていく。本当はひそかに心配していたのだ。もしこのまま悠哉と気まずくなってしまったら、と。
これで今までと同じように一緒にいられる。仲間たちと共に、笑いあったり、お茶を飲んだり、音楽をやったりできる。
愛とは呼べなくても、彼は唯音にとって大切な人なのだ。
微笑む唯音に、悠哉もほっとして笑みを返した。彼もまた、唯音と気まずくなってしまうことを、ずっと懸念していた。
たとえ他の相手を思慕していても、彼にとって唯音はやはり、かけがえのない娘なのだ。
二人は肩を並べて街路樹の葉陰の下を歩き、通りの角で車を拾って乗り込んだ。
「南京路のブルーレディへ」
悠哉が行く先を告げると、運転手は愛想よく返事をして車を発進させた。