第21話 ビリー
文字数 462文字
「おい、明日は店は休みだろう?」
その日のステージをすべて終え、店を引き上げる途中でバンド仲間のひとり、ドラマーの水澤が快活に口を開いた。
「どうだい? これからみんなでどこかへ飲みに行かないか」
「でも、この時間だともう閉まる店が多いんじゃないか」
「大丈夫、知り合いがピアノバーをやっているんだ。小さいけど、遅くまでやっているし、落ち着いた雰囲気のいい店だよ。以前にも行ったことがある。覚えてないかい?」
「『ビリー』か?」
一緒に歩いていたリュウが思い出したように店名を口にする。
そう、といささか太めの身体を揺すって水澤はうなずいた。
「ああ、あの店!」
ベースの慶 もぱちんと指をはじく。
「そいつはいいや。異議なし!」
陽気なメンバーたちがわっと歓声を上げ、反対する者はいなかった。
「唯ちゃん、リュウもいいだろう?」
「ええ!」
「懐かしいな」
「あ、でも葉村さん、遅くなると奥さんが心配するんじゃないですか」
懸念する悠哉に、たまにはいいさ、と年長のピアニストが片目をつむってみせる。若いメンバーが多い中で、彼だけが結婚していた。
その日のステージをすべて終え、店を引き上げる途中でバンド仲間のひとり、ドラマーの水澤が快活に口を開いた。
「どうだい? これからみんなでどこかへ飲みに行かないか」
「でも、この時間だともう閉まる店が多いんじゃないか」
「大丈夫、知り合いがピアノバーをやっているんだ。小さいけど、遅くまでやっているし、落ち着いた雰囲気のいい店だよ。以前にも行ったことがある。覚えてないかい?」
「『ビリー』か?」
一緒に歩いていたリュウが思い出したように店名を口にする。
そう、といささか太めの身体を揺すって水澤はうなずいた。
「ああ、あの店!」
ベースの
「そいつはいいや。異議なし!」
陽気なメンバーたちがわっと歓声を上げ、反対する者はいなかった。
「唯ちゃん、リュウもいいだろう?」
「ええ!」
「懐かしいな」
「あ、でも葉村さん、遅くなると奥さんが心配するんじゃないですか」
懸念する悠哉に、たまにはいいさ、と年長のピアニストが片目をつむってみせる。若いメンバーが多い中で、彼だけが結婚していた。