第39話 想いの先
文字数 498文字
唯音から両手を離し、覆いかぶさっていた体をも離す。顔をそらしながら、ぽつりと告げる。
「……悪かった」
乱れた胸もとをかき合わせて唯音は上半身を起こした。
「──帰って」
彼女の言葉に彼は黙ってうなずいた。立ち上がり、背中を向けてドアの方へと歩き出す。
「悠哉さん!」
強引につかまれた手首の痛みを感じながらも、何かを言わなければいけない気がして、唯音はノブに手をかける悠哉を呼び止めた。
「……ごめんなさい。でも、わたし、悠哉さんが好きよ。次に会える時は、今まで通り会えるわよね?」
振り向かずに、ありがとう、と悠哉がかすれた声で返答する。それから静かにドアを開け、部屋の外へと出ていく。
その後ろ姿を遮断してドアが閉じられると、唯音は乱れた髪をかきやり、鏡台の前に座り込んだ。
鏡の前で服を直し、髪にブラシを当てる。
だが、すぐに手を止め、唯音はぼんやりと鏡に映る自分を眺めた。
──ごめんなさい、悠哉さん。
手にしていたブラシを鏡台に置き、両手で顔をおおう。
彼を追いつめ、あんな真似をさせたのは、他ならぬ自分なのだ。
大好きな、優しい人。でも愛ではなかった。自分の想いは別の相手へと向いている。
「……悪かった」
乱れた胸もとをかき合わせて唯音は上半身を起こした。
「──帰って」
彼女の言葉に彼は黙ってうなずいた。立ち上がり、背中を向けてドアの方へと歩き出す。
「悠哉さん!」
強引につかまれた手首の痛みを感じながらも、何かを言わなければいけない気がして、唯音はノブに手をかける悠哉を呼び止めた。
「……ごめんなさい。でも、わたし、悠哉さんが好きよ。次に会える時は、今まで通り会えるわよね?」
振り向かずに、ありがとう、と悠哉がかすれた声で返答する。それから静かにドアを開け、部屋の外へと出ていく。
その後ろ姿を遮断してドアが閉じられると、唯音は乱れた髪をかきやり、鏡台の前に座り込んだ。
鏡の前で服を直し、髪にブラシを当てる。
だが、すぐに手を止め、唯音はぼんやりと鏡に映る自分を眺めた。
──ごめんなさい、悠哉さん。
手にしていたブラシを鏡台に置き、両手で顔をおおう。
彼を追いつめ、あんな真似をさせたのは、他ならぬ自分なのだ。
大好きな、優しい人。でも愛ではなかった。自分の想いは別の相手へと向いている。