第51話 寡黙
文字数 641文字
「リュウ……?」
彼女は訝し気に彼を覗き込んだ。
「どうかして?」
しかし唯音がそうたずねた時には、彼はもういつもの冷静な表情に戻っていた。
「いや、何でもない。ちょっと考え事をしていてね。さあ、座って」
彼女が席につくと、テーブルの上で両手の指を組み、しばらくぶりだね、と笑いかける。
「本当に、しばらくぶりね」
唯音は相槌を打ち、注文を取りに来たウェイトレスにコーヒーとアイスクリームを頼んだ。
「あなたってば、ずっと連絡をくれないんですもの。今までどうしていたの」
「すまなかった。いろいろあってね」
「いろいろ?」
言葉をなぞる唯音に、彼は話題をそらすように問い返す。
「俺より君の方はどうだ? 何か変わったことはあったかい」
「わたしの方はいいニュースがあるわ。今日、おじさまが退院できたの」
「そいつは良かった」
が、口調とは裏腹に眼は笑っておらず、やっぱりどこか変だわ、と唯音は感じた。どことなくぴりぴりしているようだ。
けれど、いつもと違う態度が気にはなっても、久しぶりに彼と会うのは楽しかった。唯音はわざと軽い話題を選び、最近のブルーレディの様子やジャズのことなど、他愛のない話をしていった。
やがて、しゃべりつつも彼女が大好きなアイスクリームをやっつけてしまうと、散歩でもしようかと彼が提案した。
二人はパーラーを出て、中央公園の方角へとゆっくり歩を運んでいく。
笑っていても、話が途切れると、やはりリュウは寡黙だった。もともと口数の多い方ではないのだが、いつも以上に黙りがちだ。
彼女は訝し気に彼を覗き込んだ。
「どうかして?」
しかし唯音がそうたずねた時には、彼はもういつもの冷静な表情に戻っていた。
「いや、何でもない。ちょっと考え事をしていてね。さあ、座って」
彼女が席につくと、テーブルの上で両手の指を組み、しばらくぶりだね、と笑いかける。
「本当に、しばらくぶりね」
唯音は相槌を打ち、注文を取りに来たウェイトレスにコーヒーとアイスクリームを頼んだ。
「あなたってば、ずっと連絡をくれないんですもの。今までどうしていたの」
「すまなかった。いろいろあってね」
「いろいろ?」
言葉をなぞる唯音に、彼は話題をそらすように問い返す。
「俺より君の方はどうだ? 何か変わったことはあったかい」
「わたしの方はいいニュースがあるわ。今日、おじさまが退院できたの」
「そいつは良かった」
が、口調とは裏腹に眼は笑っておらず、やっぱりどこか変だわ、と唯音は感じた。どことなくぴりぴりしているようだ。
けれど、いつもと違う態度が気にはなっても、久しぶりに彼と会うのは楽しかった。唯音はわざと軽い話題を選び、最近のブルーレディの様子やジャズのことなど、他愛のない話をしていった。
やがて、しゃべりつつも彼女が大好きなアイスクリームをやっつけてしまうと、散歩でもしようかと彼が提案した。
二人はパーラーを出て、中央公園の方角へとゆっくり歩を運んでいく。
笑っていても、話が途切れると、やはりリュウは寡黙だった。もともと口数の多い方ではないのだが、いつも以上に黙りがちだ。