第83話 空爆
文字数 537文字
どのくらい気を失っていただろうか。
爆音と振動で、唯音は眼を覚ました。
耳をつんざくような音がして、窓ガラスがぴりぴりと揺れている。
いったい何が起きたのか。ゆっくりと体を起こし、ふらつく足取りで窓際へと歩いて行った唯音はそこで見た光景に息を呑んだ。
市内に戦闘機が飛来していて──この街で最も安全と思われてきた共同租界が爆撃を受け、炎上していたのだ。
南京路が港に突き当たる角のホテルが無残に破壊され、もうもうと黒煙を噴き上げている。
「そんな……」
眼前に広がる光景が信じられず、何度も首を横に振る。
──みんなは……。
黒煙が上げる場所からは離れているものの、ブルーレディも共同租界にあるのだ。
ブルーレディは……安全だと信じて避難したみんなは……。
窓に額を押し当て、唯音は炎上する街を食い入るように見つめていた。
同時刻、虹口地区に入っていたリュウもまた、茫然と煙を上げる街を見つめていた。
──バカな! 空軍は気でも違ったのか !?
市内にはまだ大勢の市民がいるはずだ。同胞まで殺す気か !?
やり場のない怒りに、彼は拳で壁を叩いた。
──唯音……。
彼女の笑顔が脳裏に浮かび、うつむいていた彼は顔を上げた。
今はせめて、彼女の安否だけでも確かめておきたかった。
爆音と振動で、唯音は眼を覚ました。
耳をつんざくような音がして、窓ガラスがぴりぴりと揺れている。
いったい何が起きたのか。ゆっくりと体を起こし、ふらつく足取りで窓際へと歩いて行った唯音はそこで見た光景に息を呑んだ。
市内に戦闘機が飛来していて──この街で最も安全と思われてきた共同租界が爆撃を受け、炎上していたのだ。
南京路が港に突き当たる角のホテルが無残に破壊され、もうもうと黒煙を噴き上げている。
「そんな……」
眼前に広がる光景が信じられず、何度も首を横に振る。
──みんなは……。
黒煙が上げる場所からは離れているものの、ブルーレディも共同租界にあるのだ。
ブルーレディは……安全だと信じて避難したみんなは……。
窓に額を押し当て、唯音は炎上する街を食い入るように見つめていた。
同時刻、虹口地区に入っていたリュウもまた、茫然と煙を上げる街を見つめていた。
──バカな! 空軍は気でも違ったのか !?
市内にはまだ大勢の市民がいるはずだ。同胞まで殺す気か !?
やり場のない怒りに、彼は拳で壁を叩いた。
──唯音……。
彼女の笑顔が脳裏に浮かび、うつむいていた彼は顔を上げた。
今はせめて、彼女の安否だけでも確かめておきたかった。