第76話 地下室
文字数 765文字
ここには日本、中国、それにロシアの人間もいた。みんなブルーレディを中心にした仲間たちだった。
たとえ国と国が戦争をしていても、自分たちは友人なのだ。
「よし、戦闘がおさまるまで、みんなでブルーレディに避難しよう」
うなずきあう仲間たちにアレクセイが段取りを説明していく。
「僕は一度、自分のアパートに戻る。そしてすぐに荷物を持って一足先に行って、建物の裏口の鍵を開けて待っている。みんなも一度家に行って着替えや食料を取って来てくれ」
「承知した」
「……だが、ブルーレディまで無事にたどり着けるかな」
不安げに眉をひそめる水澤の背を、悠哉が励ますようにぽんと叩く。
「ひとりが危険だと思えば、家が近い者同士、かたまって行動すればいい」
「そうと決まったら、ぐずぐずしていられないぞ」
応接間の椅子から一同が立ち上がる。
「葉村さん、どうもお世話になりました」
彼らは家を提供してくれたピアニストの夫妻に礼を告げた。
「いや、そんなことは気にしないでいい。私たちも荷物をまとめたら、すぐにここを離れる。ブルーレディで会おう」
「ええ、ブルーレディで」
そうして彼らは方向の近いもの同士がまとまって、自分たちのアパートへと散っていく。
通りは避難民でごった返していた。住民たちは家財道具を持って、安全な場所を求め、追い立てられるように郊外へと逃れていく。
唯音と悠哉は混乱の中をもみくちゃにされながら、自分たちのアパートへ急いだ。
先に唯音のアパートまで来ると、階段を小走りに上り、二人は彼女の部屋の前で足を止めた。
バッグから鍵を取り出し、ドアを開ける唯音の横で気ぜわしく悠哉が告げる。
「僕も一度、自分のアパートに行って荷物を取って、またここへ迎えに来るよ。唯ちゃんもそれまでに荷物をまとめておいてくれ」
唯音はええ、と緊張した面持ちで返事をした。
たとえ国と国が戦争をしていても、自分たちは友人なのだ。
「よし、戦闘がおさまるまで、みんなでブルーレディに避難しよう」
うなずきあう仲間たちにアレクセイが段取りを説明していく。
「僕は一度、自分のアパートに戻る。そしてすぐに荷物を持って一足先に行って、建物の裏口の鍵を開けて待っている。みんなも一度家に行って着替えや食料を取って来てくれ」
「承知した」
「……だが、ブルーレディまで無事にたどり着けるかな」
不安げに眉をひそめる水澤の背を、悠哉が励ますようにぽんと叩く。
「ひとりが危険だと思えば、家が近い者同士、かたまって行動すればいい」
「そうと決まったら、ぐずぐずしていられないぞ」
応接間の椅子から一同が立ち上がる。
「葉村さん、どうもお世話になりました」
彼らは家を提供してくれたピアニストの夫妻に礼を告げた。
「いや、そんなことは気にしないでいい。私たちも荷物をまとめたら、すぐにここを離れる。ブルーレディで会おう」
「ええ、ブルーレディで」
そうして彼らは方向の近いもの同士がまとまって、自分たちのアパートへと散っていく。
通りは避難民でごった返していた。住民たちは家財道具を持って、安全な場所を求め、追い立てられるように郊外へと逃れていく。
唯音と悠哉は混乱の中をもみくちゃにされながら、自分たちのアパートへ急いだ。
先に唯音のアパートまで来ると、階段を小走りに上り、二人は彼女の部屋の前で足を止めた。
バッグから鍵を取り出し、ドアを開ける唯音の横で気ぜわしく悠哉が告げる。
「僕も一度、自分のアパートに行って荷物を取って、またここへ迎えに来るよ。唯ちゃんもそれまでに荷物をまとめておいてくれ」
唯音はええ、と緊張した面持ちで返事をした。