第86話 ワルサー
文字数 598文字
「おい、どこへ行くんだ !?」
踵を返し、外へ行こうとする悠哉の腕をドラムスの水澤がつかむ。
「決まってる。戻るんだ。唯ちゃんを迎えにいかないと……」
悠哉がそう言いかけた時、突然、轟音と振動がブルーレディの地下室に響き渡った。
「何だ !?」
「どうしたんだ !?」
口々に叫ぶ仲間たちに悠哉が告げる。
「爆撃だろう。ここに来る途中で、中国軍の戦闘機を見かけた」
「中国の……」
「日本軍も応戦するんじゃないか。いよいよ本格的に戦闘が始まって、街が瓦礫 の山になるかもしれないぜ」
重苦しい空気の中、再び水澤が悠哉の腕をつかむ。
「今、外に出てはだめだ! 自殺行為だ」
「でも、唯ちゃんが……!」
「行かせてあげなさい、ミズサワ」
言い争う二人の間を割るようにして入ったのはアレクセイだった。
「彼はユイネを愛している。止めることはできませんよ」
アレクセイは、しかし、と口ごもる水澤を手で制するようにして、
「ユウヤ、これを──」
黒光りする鉄の塊を悠哉に渡した。
「アレクセイ?」
いぶかしげに彼を見る悠哉に片眼をつむってみせる。
「外はとても危険だ。ワルサーです。万一のために持っていってください」
悠哉は黙って手渡されたワルサーを凝視した。ずっしりと重かった。
「使い方はわかりますね?」
「ああ」
銃を握り、うなずく悠哉の肩にアレクセイがとん、と手を置く。
「必ず二人で戻ってきてください。無事を祈って待っています」
踵を返し、外へ行こうとする悠哉の腕をドラムスの水澤がつかむ。
「決まってる。戻るんだ。唯ちゃんを迎えにいかないと……」
悠哉がそう言いかけた時、突然、轟音と振動がブルーレディの地下室に響き渡った。
「何だ !?」
「どうしたんだ !?」
口々に叫ぶ仲間たちに悠哉が告げる。
「爆撃だろう。ここに来る途中で、中国軍の戦闘機を見かけた」
「中国の……」
「日本軍も応戦するんじゃないか。いよいよ本格的に戦闘が始まって、街が
重苦しい空気の中、再び水澤が悠哉の腕をつかむ。
「今、外に出てはだめだ! 自殺行為だ」
「でも、唯ちゃんが……!」
「行かせてあげなさい、ミズサワ」
言い争う二人の間を割るようにして入ったのはアレクセイだった。
「彼はユイネを愛している。止めることはできませんよ」
アレクセイは、しかし、と口ごもる水澤を手で制するようにして、
「ユウヤ、これを──」
黒光りする鉄の塊を悠哉に渡した。
「アレクセイ?」
いぶかしげに彼を見る悠哉に片眼をつむってみせる。
「外はとても危険だ。ワルサーです。万一のために持っていってください」
悠哉は黙って手渡されたワルサーを凝視した。ずっしりと重かった。
「使い方はわかりますね?」
「ああ」
銃を握り、うなずく悠哉の肩にアレクセイがとん、と手を置く。
「必ず二人で戻ってきてください。無事を祈って待っています」