ミメの伝説 現在(いま)を超える者(10)
文字数 1,443文字
先程の場合、発生源は一点だったが、今回の場合は複数個所に発生源が分散している。
魔法波動は重なり合い、減衰、無効化したり、増幅、倍加したりをしながら拡がる。そして、その発生源は何度も繰り返す様に、魔法の波動を繰り返していた。
広がりを複雑にしていたのは、複数の発生源だけが原因ではない。有希は、もうひとつ、裏呪文を
その呪文とは『
これに由り、彼ら自身も『極光乱舞』の影響を受けずに居られた……。
この繰り返される魔法波動の中では、スペースレビアタンと云えども、1匹として氷結魔法から逃れることは叶わない……。
そして、全ての遺伝子は『極光乱舞』で凍結し、有希の裏呪文『超無窮動』で次々と粉砕されていく……。
その一斉駆除としか言い様の無い攻撃は、10分以上もの間続いた。
そして、最後のスペースレビアタンの脅威を4人が感じなくなった時、有希は『
全てが音の無い世界に変わっていく……。
いや、ここは元から音のない世界。それは三悪魔の勝手なイメージでしかない。
純一少年は膝に手を当てて呼吸を整え、耀子は何も無い
そして盈は、今回の功労者であるエスナウの肩を叩き、彼女を祝福する。
「終わったな……」
「いいえ。最後の仕上げが残ってるわ……」
「何だ?」
「ファージを燃やし、完全に消滅させるの」
「その必要があるのか? それに、万が一、それで奴が再生する様なことがあると……」
「もう熱エネルギーが加わっても、ファージは再生することが出来ないわ。だから、この外殻を『黒炎破弾』で消滅させてしまう。
ファージを倒した証明が必要なのよ。私たちの太陽が、トルク星系人によって壊されない為にね……。
「おい、このまま、私たちの前から消えると言うのではないだろうな? 私はお前に少し聞きたいことがあるのだ!」
盈が有希に詰め寄ったが、有希はニッコリと微笑んでそれを
「私も
「ならいい……。では呪文を唱えてくれ」
有希は呪文を唱えた。
この後、有希は三悪魔をジズに戻し、ジズの航空迎撃隊メンバーとトルク星系人に事情を説明してから、ファージの前面の宇宙空間に『瞬間移動』をする。そして『黒炎破弾』をそこに置き、再びジズへと『瞬間移動』で戻って来た。
その数分後、壮大な光景がジズの前面モニタに映し出される……。
ファージの巨体は全て『黒炎破弾』に吸収された。そして、ジズとトルク星系人の船団が十分に離れるのを見計らい、有希はその空間の捻じれを解く……。
すると……、
『黒炎破弾』のブラックホールは、全員の見守る中、巨大な天体ショーとも言うべき大爆発を起こし……、徐々に消えていった。
そして……、
その炎の広がりが収まっても、新たなファージが現れることなどは、決してなかったのである。