ミメの伝説 現在(いま)を超える者(1)
文字数 1,551文字
しかし、今回は3人ともその待ち伏せ攻撃などは察知済みだ。彼らは軽く三方に跳んで当然の様にそれを躱す。
そして、純一少年と耀子が同時に相手の頭に『極光乱舞』を唱え、その最強冷却魔法で敵を凍り付かせた……。
「お前たち何をやっている?! 撃てる呪文の数には限りがあるのだぞ……。それも同じ場所を狙いおって……」
盈は2人に文句を言ってから、凍らせ損ねた敵の尻尾の部分に『極光乱舞』を唱え、全身を氷結させてから『超無窮動』で完全に粉砕し相手を倒した。
「うむ、これでは効率が悪いな……。
取り敢えず、呪文が被らないように、三方に分かれよう」
盈はそう言うと、比較的脅威が密集している地域の方に『瞬間移動』で飛んで消えて行く。耀子も、それを確認して、別の密集地帯へと消えて行った。
純一少年はと云うと、近くにあるスペースレビアタンへとピンポイントで『瞬間移動』をする。彼は2人と違って、1匹1匹倒していく戦法を選択したのである……。
そして2時間あまり……、
3人の大悪魔は、その短時間の間に数十匹もの遺伝子を倒したのであるが、仮にこれが地球のレビアタンと同レベルの敵だと考えると、彼らの戦闘力は、地球のレビアタンと対峙した時と比べ、何百倍にも進化していたことになる。だが、それでも未だ、500近いスペースレビアタンが残っている。道程はあまりに遠いとしか言い様がなかった……。
一方、ジズとトルク星系人の連合艦隊は、木星と火星の間にある小惑星帯付近……。やっとファージの彗星状の姿を視認したところであった……。
ジズのメインスクリーンに、トルク星系人からの画像が映し出される……。
「我々は、ファージを電子ネットで捕獲し、そのまま太陽と反対方向に引っ張る。
君たちも、君たちなりの方法で協力して欲しい。但し、攻撃は加えない様に……。
君たちの火器で、ファージを破壊出来るとは思えないが、万が一その様なことをすると、太陽に突っ込まれるのと同じことになってしまうからな……」
「分かっているよ、そんなことは!」
「どうせ、あたしたちの武器じゃ、ファージには通用しませんよ~だ!」
鵜の木隊員と矢口隊員がモニターに向かってヤジを飛ばす。そのヤジが聞こえるか聞こえないうちに、通信が切れモニターは自動消灯した。
ところで……、
連合船団がファージ牽引作戦を開始しようとしていた時、既にアルウェンの消滅からは随分の時間が経過している。だが、この連合船団の中の誰1人として、彼女の消滅を知る者はいなかった。
もし仮に、それがトルク星系人に知れていたとしたら、恐らく彼らは最終防衛線など考慮せず、直ちに太陽を破壊していたことだろう。そう云う意味では、それが彼らに伝わらなかったとことは、地球側にとって間違いなく
当然、美菜隊員たちAIDSクルーにもアルウェン消滅の情報は伝わっていない。であるから、純一少年たちが苦境に陥っていることなど、彼女らが知る由もない。
唯、美菜隊員は、発進時からずっと言い知れぬ胸騒ぎを感じていた……。
最悪の想像が次々と頭に浮かんでくる。
純一少年だけを残し、盈も耀子も自分の時空に逃げてしまうとか、アルウェンは実は宇宙人で、厄介な彼らを拘束し、このまま太陽に突入させようとしているだとか……。
しかし、それでも美菜隊員は、アルウェンが消滅した時に耀子が言ったことと、同じことを考え、呟いた……。
「遣れることを遣るしかない……」
そして彼女は……、
「純一を信じて戦うしかない……」
その一言も付け加えていた。