ミメの伝説 現在(いま)を超える者(5)

文字数 1,338文字

「ここは?」
 純一少年が辺りを見回すと、見慣れない風景だったが、矢鱈と見慣れたメンバーが驚きの表情でこちらを見ている。

「純一?」と美菜隊員。
 純一少年も耀子も唖然として言葉もない。その中で、盈は先ず自分が為すべきことを始めた。それは今、一番大事なこと……。生気の補給の依頼だ。
「誰か、私たちに生気を分けてくれないか? もう残り少ないのだ!」

 それを聞いて、鵜の木隊員が耀子の傍に近づいてくる。
「耀子さん……。俺なんかで良ければ、幾らでも……」
「和志さん、嬉しいわ。私、あなたじゃ無ければ、死んでもこんなこと、恥ずかしくてお願い出来ないわ……」
 耀子は、そう言いながら、鵜の木隊員からのキスを受けた。
 それを見て、純一少年は「嘘つけ!」とは思ったものの、特に言葉にせず、美菜隊員の口づけを黙って受ける。有希はと云うと、そんな2人を嬉しそうに眺めていた。

 そして盈には、下丸子隊員が近寄って生気の提供を申し出る。
「月宮盈さん。あの……、その役、僕でもいいですか? 以前、助けられた恩返しがしたいのです……」
「私には、そんな記憶はない! しかし、そう云う理由なら断る!!」
 盈は下丸子隊員の申し出を拒否してきた。それは、下丸子隊員にも意外な反応であった。

 彼は下を向いた。
「恩返しなどして欲しくない! 確かに、私はキスをして貰いたいが、年寄りだからと云って、嫌々ながらキスされるなど、私のプライドが許さん!!」
 下丸子隊員は、盈の言葉を聞き、改めて上を向く。そして、盈に抱きつき、盈の唇を無理矢理に奪った。それは生気の吸い過ぎを心配し、強引に盈が彼を振り解くまで暫く続いたのである。
 盈が彼の顔を覗くと、下丸子隊員はぐったりとした表情のまま、にっこりと笑って盈に言い訳をした。
「恩返しだなんて、恩着せがましいこと言ってすみません。僕はもう一度、あなたとキスがしたかった……。唯、それだけです」
 盈は驚きの表情を和らげ、下丸子隊員に微笑みを返して礼を言う。
「ありがとう。これで大丈夫。私は……」
 だが、耀公主、月宮盈の決め台詞は、4人目の大悪魔が引き継いでいた。
「誰かに愛されている限り、絶対に負けることはない……だよね」

 盈、そして2人の悪魔も、この新しい不思議な大悪魔の存在を思い出した。

 彼女は決して弱くない……。恐らくこの中で最強だろう。しかし、初対面の筈なのに、長年の仲間の様に、全くと言っていいほど脅威を感じることもない……。

「君は、一体誰なんだ?」
 有希は実の父の質問に、ふっと微笑んでから返事を返した。
「それは言えないわ。言ってしまうと、私が消えてしまう危険があるんだもん。でも私は、あなたも、耀子さんも、盈さんも知っているし、みんなの仲間よ」
「そうか、じゃ、聞くのは()めた……。
 でも良かったよ。最初は師匠かなって思っていたんだけど、アルウェンが彼女なんて言うもんだから、別の時空の耀子か盈さんでも召喚されるのかと思ってた……。
 何たって、これ以上、この連中が増えたら、五月蝿くてしょうがないからね」

 有希は、笑いを無理矢理押し殺した。
 父は昔からこういう性格だったのだ……。それを知っただけで、有希はもう面白くて仕方がない。
「そんなに残念? 耀子さんじゃなくて?」
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登場人物紹介

新田有希


新田純一と美菜の娘。耀公主に匹敵する悪魔能力を有し、伝説の乙女の力を受け継ぐ最強の大魔法使い。

新田純一(要鉄男)


時空を放浪している大悪魔。偶然、訪れたこの時空で、対侵略的異星人防衛システムの一員として、異星人や襲来してくる大悪魔から仲間を護り続けていく。

新田美菜(多摩川美菜)


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属するエリート女性隊員。養父である新田武蔵作戦参謀の命に依り、新田純一の監視役兼生け贄として、彼と生活を共にする。

蒲田禄郎


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊隊長。本人は優柔不断な性格で隊長失格と思っているが、その実、部下からの信頼は意外と厚い。

沼部大吾


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する古参隊員。原当麻支部屈指の腕力の持主。

鵜の木和志


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する隊員。非常識な言動で周りを驚かせることもあるが、銃の腕と熱い心には皆も一目置いている。

下丸子健二


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する隊員。原当麻基地でも屈指の理論派。

矢口ナナ


対侵略的異星人防衛システム、原当麻基地航空迎撃部隊に所属する入隊一年目の若手女性隊員。明るく誰とでも仲良くなれる性格。

藤沢耀子


新田純一と同じ悪魔能力を持つ彼の妹。

月宮盈(耀公主)


耀子が住み着いている時空に先住していた悪魔殺しの大悪魔。耀子と鉄男に自らの能力をコピーさせた。

アルウェン・フィ・ミメ(アルウェンスピリット)


太古の昔に存在したとされる善為す処女。無敵の魔法とミメの太刀と云われる小太刀の技の使い手。

白瀬沼藺


鉄男の恋人であった雷獣・菅原縫絵の生まれ変わり。妖狐の術と雷獣の力を併せ持つ。通称霊狐シラヌイ。

政木沼藺


鉄男の時空の沼藺。この時空では、オシラサマの養女ではないらしい。

政木風花


政木沼藺の義理の妹。

政木の大刀自(政木狐)


妖怪層、政木領を統べる仙籍の肩書を持つ妖狐界の大立者。他時空の政木狐と記憶を共有できると言う。

逢坂早苗(旧姓小野)


耀子と鉄男が東京協立大付属中学に編入して以来の耀子の大親友。

真久良


オサキの里、ヌルデ村の棟梁である妖狐。

城兼


オサキの里、ヤマハゼ村の棟梁である妖狐。

ルナルド


オサキの里、ヌルデ村に住む妖狐の少年。

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