ミメの伝説 アルウェン消滅(2)
文字数 1,416文字
純一少年たちは、そんな中、呪文を覚え直すなどして、静かに決戦の時を待っていた。
彼らが乗ったガルラは、アルウェンが加速させる魔法を掛け、それをリピートする呪文も合わせて唱えていたことにより、2倍、4倍、8倍と速度を加速させている。
しかし、それでも、ファージに遭遇するまでには未だ相当の距離がある。それに、ファージに近付いたら、通り過ぎない様に減速する必要もあって、無軌道に速度を上げると云う訳には行かないのだ。この為、彼らは、今暫く宇宙空間を飛び続けなければならないだろう……。
一方、AIDSクルーのジズは、想定外の状況に
それは彼らが、金星軌道に到着しようとしていた時のこと……。彼らの巨大宇宙戦艦の前方に、何十もの宇宙艇の編隊が待ち伏せして、じっと待機していたのである。
「前方に敵宇宙艇の大編隊です」
「船籍データは?」
蒲田隊長の確認に、既にデータ解析を行っていた美菜隊員が答える。
「先月確認された、トルク星系人のものと思われます……」
「え~、あの変態宇宙人?」
矢口隊員が突拍子もない声を上げる。だが、彼女がそう声を上げたのには、それなりの訳があった。
実際、それは侵略と云うものではなかった。ただ、1人の地球人に似た宇宙人が、地球にやってきて、地球の女性たちに求愛行動を取ったと云うだけに過ぎない。
問題はその求愛行動の方法だった……。
彼らは生体個数が少ない。この為、男女間の出会いも少なく、その機会は絶対に逃すことは出来ないのだ。この対策として、彼らは独自の進化を遂げたのである。
彼らの種の男性は、異性に出会うと自らの生殖器を分離し、相手の手に取りつけるのだ。この生殖器は女性の側の栄養で生き続け、そして相手の女性は繁殖時期になると、自分の手に着いた生殖器のうち、一番気に入った生殖器で受精を行う。男性の方はと云うと、生殖器を取り外した後、数日のうちに新しい生殖器が再生し、再度、女性と巡り合う機会を待つのだ。
地球に来た彼は、パラダイスと思えただろう……。彼は、彼らの流儀で生殖行動を次々と行ったのである。
この時、彼、つまり、このトルク星系人と同じ星系の宇宙人から連絡があり、『彼は希少な保護種族で、彼らの星系の無知な者が、繁殖目的で地球に勝手に放してしまった』と言ってきた。そして『補償は後でするから、とにかく無事に返して欲しい……』との要請も行われていたのである。
しかし、無知なのは地球人も同じ……。
この希少な宇宙人は、生殖器を付けられた女性の父親に、ライフルで射殺されると云う哀れな最後を迎えることになったのである。
そして、女性に取りつけられた生殖器は、地球人には適応しなかったのか、癒着することもなく、結局、彼らの繁殖に寄与することは出来なかったのだ。
この対応に、同星系人は遺憾の意を表明し、この星系人と地球政府とは、現在若干険悪な関係となっていた……。
「ま~、考えてみれば、あの宇宙人を殺すことはないよな……。
娘が強姦された訳でもなし、嫌だったら、使わなきゃいいだけだろ……。それに、1人でする時にゃ、むしろ便利だもんな……」
「鵜の木隊員、冗談が過ぎるわよ! あれを付けられた、女性の身にもなって頂戴!!」
鵜の木隊員の軽口に、美菜隊員の反応は何時になく冷たい。