有希の冒険 封印されし力(6)
文字数 1,296文字
火の玉が焼き尽くしたのは、有希ではなく黒い陰の方だった。
「
「お姉ちゃん、遅い!」
「ご免、ご免。三峰様に、ひと言断りを入れて置こうと思ったのよ」
有希がその声のする方向に目を遣ると、そこには先程、自分を連れ去った女性、政木
「くそ、あと少しで、こいつの親父とお前を闘わせることが出来たものを……」
「あなたが、どのような考えで、宇宙人に協力するのか分からないけど、何の関係もない人間を巻き込むなんて、妖怪の風上にも置けないわね……。
あなたの主筋にあたる三峰様にも、もう了解を頂いているのよ。さあ、覚悟なさい」
そう言った方の
悪鬼と化した最初の
悪鬼は
四つ足で一気に有希を狙う敵、もうそれは魔狼の姿に他ならない。
「しまった!」
正確には、止まったのは狼だけだった。
敵は有希を目前に空中で押し返され、空に浮かんだまま停止してしまったのである。
それは、見えない壁にぶつかったのではなく、強風に押し戻されたと云う感覚に近かった。しかし、それは風ではない……。何か別のものであった……。
魔狼の大きく開いた口は、細かく震えはしたものの、閉じて噛み砕くことも儘ならず、開いた状態のままで、動かすことすら出来なくなっていた。
敵が有希の面前で停止してるのを見た
しかし、今度これを止めたのは、なんと、狙われた当人の有希だった。有希は、空間に静止している狼越しに、近づいてくる
「
そうしないと、これから先、改心しようとする人はいなくなってしまうもの……。『どうせ殺されるのなら』って思って……」
そして当の狼には、
「狼さん、思い留まってくれたのね。ありがとう」と礼を言う。
それを聞いて、何故か