ミメの伝説 現在(いま)を超える者(11)
文字数 1,234文字
トルク星系人の船団も、宇宙の彼方へと既に飛び去っている。
地球人側、ジズの艦橋では、盈たち三悪魔、そして蒲田隊長を始めとするAIDSクルーが、エスナウこと新田有希との別れを惜しんでいた……。
有希は言うべきことを三悪魔に伝える。
「私は未来の世界からやって来たの……」
「だから、エスナウ……。
「私の身体の中には、アルウェンの心が収められている。私がスペースレビアタンと闘えたのも、アルウェンの指示があったからこそ。だから、3人にアルウェンからの伝言、つまり、お願いがあるの……」
「お願いだと?」
盈の問いに有希はこう答えた。
「私を探し出して、覚醒させて欲しいの。タイムリミットまでに……。タイムリミットは昨日を起点に20年間。それが、アルウェンが召喚できる未来の最大範囲。そうしないと、私はみんなを助けに行けないから……。お願いね……」
「そんなこと言われてもなぁ……。面倒臭いなぁ……。大体、
純一少年は相変わらずだ。替わりに、必要なことは盈が確認をする。
「で、どうやったら覚醒するのだ?」
「私が全力で生きようとしたにも関わらず、私の命が危うくなった時、必ずアルウェンが私を助けに現れる……。それが、私を覚醒させる唯一の方法なんだって……」
「分かった……。必ずお前を見つけ出し、覚醒させよう」
「多分、見つけるのは簡単だと思う。じゃあ、私、過去の自分に忠告に行かなければいけないので、もう帰るわね……」
有希はそう言うと、盈の手を固く握った。
そして、耀子、純一少年、蒲田隊長、沼部隊員、下丸子隊員、矢口隊員、鵜の木隊員、最後に美菜隊員の手を握り絞める。
「新田美菜さん、これからも純一さんを宜しくお願いします……」
「ええ……。でも、あなた、どこかで見たことある気がするんだけど……」
「残念だけど、気のせいです。私は未来の人間ですから……。では、お元気で……」
有希は最後にそう言うと、美菜隊員の手を離し、何か呪文の様なものを唱える。すると、全員の目の前で『十の思い出』と同じ様に、彼女は白い霧となって薄れ、そして消えて行った。
美菜隊員は、その薄れ行くエスナウの顔に、輝くばかりの笑顔が満ちているのに気が付いた。そして、それは、
子供の頃……、記憶の中に残っている、自分の笑顔と全く同じ笑顔……。
「エスナウ……、S、Now?
不思議な子……」
美菜隊員はそう言うと、彼女の手の感触が残る両掌をじっと見つめたのであった。
さて……、
全てを終え、ジズは地球に帰る……。
もう、殆ど地球軌道に差し掛かっている。ここからなら、地球軌道上を公転速度で航行すれば、殆ど燃料を消費することなしに地球に戻ることが出来るだろう。
え?
地球軌道上だと公転周期が地球と一緒になるから、いつまで経っても地球に戻れないって? そんなことはない。地球の公転と逆回りに飛べば良いだけだ……。