ミメの伝説 現在(いま)を超える者(2)
文字数 1,275文字
一瞬、彼の意識が離れた所を、急速に近付いていたスペースレビアタンが体当たり攻撃を加えて来る。勿論、そんなもので彼を殺すことは出来ない。それでも、その衝撃は新幹線に最高速度で体当たりされたに等しかった。
抵抗の無い宇宙空間である以上、仕方ないのだが、彼は思い切り遥か彼方まで弾き飛ばされ、そこにいた別のファージの胸板に叩きつけられた。そして、そのファージからは尻尾の打撃を……。
冷静な状態の彼であれば、そんなもの無視しただろう。だが、疲労と焦燥感に
彼は
それは純一少年に、何故『超無窮動』で敵を倒す必要があるのかを思い知らせることとなった。上半分の遺伝子は下半分を、下半分の遺伝子は上半分を再生し始めたのである。
どうやら『超無窮動』でなければ、再生を防ぐことは出来ないらしい……。
この2体の再生が完了するまでに、純一少年は折れかけていた自分の気持ちを立て直した。そして、彼は続けざまに、それぞれ再生途中の中心部に『極光乱舞』を命中させる。
純一少年は、元々呪文が得意と云う訳ではない。だから遺伝子の中央部に『極光乱舞』を命中させないと、威力が足らず、敵全体を凍りつかせることが出来ないのだ。
しくじると、彼は一匹当たりに数発の『極光乱舞』を用いなければならなくなる。そうなると、只でさえ覚えられる呪文数が2人より少ないのに、より一層呪文数は不足してしまうのである。
いずれにしても、何処かでテントを張って、そこで睡眠を取り、必要な魔法力の回復を図らないといけないだろう……。
当然と云えば当然なのだが、魔法を使う者は使える魔法が尽きた場合、嫌でも睡眠を取り、呪文を覚え直さなければならない。
だが、睡眠に因る時間ロスは大きい。
今回、それを何度も繰り返すとなると時間切れとなって、太陽に突入と云う危険性もゼロではなくなってくる。
それに睡眠中、スペースレビアタンに狙われる危険だって全く無い訳でもないのだ。何処でも自由に寝られると云う訳ではない。
「負けるとは思わないが、時間切れのリスクも大きいな。寝るにしても、少なくとも遺伝子に寝込みを襲われない様に、一旦合流するなどして寝ずの番を置くしかないか……」
純一少年はそう言いながら、目の前で凍り付いている2体の遺伝子を『超無窮動』の一撃で同時に破壊した。
実は彼には、もうひとつ懸念があった。
呪文数は睡眠で回復できるが、彼の生命線、生気はもう補充が利かないのだ。悪魔の能力を彼はそれほど使用してはいないが、闘いは無限に続けられる訳ではないのである。
彼は「負けるとは思わない」と言ったが、有希が純一少年の心の言葉を聞いたら、恐らく「負けるかも知れない」と聞こえたのではなかろうか……。
彼は意識することを意図的に避けているが、この闘いは、それほど楽観的な状況ではなかったのである。