第60話:アキバへ~終着
文字数 7,270文字
韮崎はピンク色の紙袋を大事そうに胸の前で抱いている。
一体何を買ったのやら。
店の前で少しだけ会話を交わすと、2人は駅に背を向け、お茶の池方向に歩き出した。
「あ~ん? アキバの駅には行かんのか」
「あの2人、お茶の池から電車に乗るんじゃないの」
東城の背中に隠れ、春菜は様子をうかがっている。
「よう、どうするよ。さすがに疲れてきたぞ。腹も減ったし」
東城は振り向くと、俺の目を見た。
まるで「どうするかお前が決めな」とでも言ってるみたいだ。
「なんか、疲れたし。もうやめようや」
俺は率直に今の雰囲気を言ってみた。
かすみも黙って頷いている。
「よし。じゃあ、お茶の池のホームであいつらに話しかけてびっくりさせてやろうぜ。それで終わりってのはどうよ?」
「いいよ、私はさんせー」
「ああ。じゃあさっさと片付けて、新宿あたりでメシでも食おうぜ」
「そうね。どて煮しか食べてないし、さすがにおなかも空いたわね」
意見がまとまったところで、俺たち4人は2人を追ってお茶の池に向かった。
水のよどんでいる外堀を左手に見ながら緩い坂を上っていく。
突然現れた赤い地下鉄が再びトンネルに吸い込まれていく。
坂の途中で右側に階段を上る。
外堀に架かるこの「
が、2人は俺たちの予想を見事に裏切ってくれた。
階段を上ったまではよかったが、駅には向かわず、なぜか湯嶋の方にずんずん進んでいく。
さらに、慣れた感じで途中のコンビニに立ち寄った。
「あの2人、弁当を買ってたよ。あと、カップめんや飲み物も」
店の外から店内をチェックした春菜が戻ってきて報告する。
「ぶぇんとお~? 野郎ぉ、自分たちだけメシを食う気だな。ふざけやがって」
東城は腹立ち紛れで吐き捨てるように言う。
てか、勝手に追いかけてるのは俺たちなんだが。
「くそっ! ムカついた。オレたちも何か食いモン買おうぜ。え~っと、山葉とかすみ、オレたちで何か買ってっから尾行してくんない。で、スマホで連絡してよ。あ、そうそう、お前らの食いモンも何か買ってくからさ」
そういうことで、俺とかすみは尾行を続け、その間に東城と春菜が食料の調達に入った。
広い交差点を越え、急な坂道を上ってゆく2人。
やがて2人がある建物に入ったのを見届け、東城に連絡のトークを送った。
ほどなく、東城と春菜が息せき切らせて到着した。
「んーーーーーーーーーーーーー!にしても、このホテルの名前っ!」東城は笑いをかみ殺している。
「江炉屋! まんまやんけ!」俺も呆れた。
かすみは引きそうな表情で唾を飲み込んでいる。
かあああっ
事態を悟ったかすみは音を立てるようにみるみる顔が真っ赤になっていき、後ずさる。
「ぎゃははははっ」春菜は指さしながら下品に大笑いすると、大げさな仕草でもんどりうって車道に飛び出し、タクシーに警笛を鳴らされている。
「あは、あはは、あっははははは、これ、これって、ラブホよね、一応。あっはははははは」
春菜はなおも腹をよじりながら、たまりかねてしゃがみ込む。
「らぶ、らぶ、らぶ、らぶ、ラ~ブホテっル~♪」などと東城はワケの分からん歌まで歌い始める始末だ。
「おい。おまえら写真撮ったか」
しーん
「んだよ。決定的証拠じゃねーか! 何やってんだよ」
東城がまたも理不尽なことを言い出す。
「だってスマホで連絡入れてたんだから、そんなことできるわけないだろ」
俺はムッとして、睨み返してやった。
「仕っ方ねーな。出てくるまで待つか?」
「え~っ? 泊りかもしれないじゃなーい」
「う~、確かにそだな。どうするかな…よし、電話だ! 電話するぞ」
「は? 電話って、誰に」俺は真顔で問いかけた。
「んなもん、盛岡に決まってんだろ」
こんなところで相手に電話するなんて、悪趣味な。
黙っててやってもいいんじゃないのか、こうなったら。
なんか盛岡と韮崎が急に気の毒になってきた。
何も悪いこと…かどうか知らないけど…してないのに、運悪く東城に見つかってしまうとは。
もし行きの電車で見つけたのが俺かかすみだけだったら、彼らもこんな目には遭わなかっただろうに。
東城はスマホを握りしめ、今にも発信ボタンを押そうとしている。
しかし、何か思うところがあるのか、ふと手を止めた。
「今は拙いか」
ほっ。
さすがの東城にも良識はあったみたいだ。
人ごとながら、何となく胸をなでおろしてしまう俺。
でも、
「そうだよ薫ぅ。電話すんなら真っ最中にしてやりなよ」
という春菜のひと言に、唖然としてしまった。
この娘ってば、いったい…
東城も「だろっ?」と春菜を指さして、我が意を得たりといわんばかりの顔をしている。
一瞬でも東城に良識があるなんて考えた自分が恥ずかしい。
とほほ。
「でもさあ、電話するにしても入ったばっかなんでしょ2人。タイミングなんか分かんないじゃない」
さっきとは打って変わって、春菜が急に冷静な判断を示した。
「だってさ、いつ始めるか分からないし、いきなり始まってるかもしれないよ」
「う~ん。確かにそうだな」
何が「確かにそうだな」だか。
ぷるるるるるる
東城は再びスマホを取り出すと、さっさと電話を始めてしまった。
ぷるるるるるる
ぷるるるるるる…
「出ん!」
「風呂にでも入ってるんじゃない?」
東城は電話を切ると、無念そうに2人が入った建物を眺めた。
「あ、そうだ!」
その顔を見て春菜がいかにもいいことを考え付いたと言わんばかりの表情で手を叩いた。
俺はなんか、いや~な予感がする。
「ねえ、あたしたちも入ろうよ、ここ」
ほ~らな。思ったとおりだ。
「だってさ、お弁当あるんだよここに。こんなん持って帰っても
「そうだな春菜、いいトコ気付いたじゃん。よし、4人で入ろうぜ」
「ええっ? 俺はいいよ。もう帰るぜ」
「何言ってんだ山葉。さんざん歩いて疲れたし、ご休憩ってやつだ。部屋でちょろっとくつろぎながら弁当でも食おうってことよ。ほれ、お前らの分も買ってきてるんだからよ」
「だけどさ」
「大丈夫だって。部屋代なんざ4で割りゃあ安いモンだ。それによ、正直言うともう歩きたかねーんだよ。な、いいだろ? それともなにか?」
「う~ん」
「あはははは、山葉ぁ~♪ なんかエッチなこと想像してるんでしょ?」
春菜が顔をどアップで近づけてきて挑発する。
「ばば、ばか言うな」
「ふははははは、山葉よ。かすみもいるんだ。いくらなんでも4人でヤろうなんて無茶なことは言わんから安心しろw」
「あぁあぁあぁ、あったりまえだろっ!」
「いいわよ…わたし」
そそのかしておきながら、かすみの反応に硬直する東城と春菜。
「休憩するだけ…よね」
「ぶーーーーーーーーーーーっ!」
俺は思わず噴きそうになるのを必死でこらえた。
「あああ、あったり前じゃんかすみ。いい、いやらしいことでもすると思ったのか?」
あの東城が顔を真っ赤にしてしどろもどろになっている。
「そ、そうだよかすみぃ。お弁当食べて、脚を伸ばしてリフレッシュするだけだよ」
春菜まで頬を紅潮させている有様だ。
「じゃあいいわよ…私は」
「よし、3対1だな。山葉よ」
「な!…かったよ。入ればいいんだろ、入れば」
「またまたぁ、一度はこういうトコ入ってみたいと思ってたんだろ? お前も男なんだからさ」
「な、ことねーってば!」
「まあまあまあまあ、そうと決まれば!」
俺とかすみは何も後ろめたいことはないのに、周りをキョロキョロ見回しながら、東城と春菜に背中を押され「ご休憩2時間3600円 ご宿泊8200円」と書いてあるホテルの門をくぐった。
◇ ◇ ◇
名前は和風? な感じの江炉屋だったが、室内はよくある(と思われる)でかいベッドがでーんと置いてあるラブホテルだった。
テレビや冷蔵庫など、一応は普通のホテルのような備品も揃っていて、食事が出来るようにソファやテーブルもちゃんとある。
「あ~疲れたぁ」
春菜はジャケットを脱ぎ捨てると、うつぶせでベッドに倒れこむ。
東城は「よっしゃ、脚もんでやっから」と言いながら、春菜の横に腰を下ろすと、ブーツを脱がせてふくらはぎをモミモミし始めた。
もう何ていうか、盛岡や韮崎はもちろん、俺とかすみも眼中にないって感じだ。
かすみはわざと見ないようにして、ハンガーを探し俺に渡す。
俺はソファを指さして「座ろ」と声をかけた。
がしゃがしゃ
コンビニの袋をまさぐり、東城たちが調達してきた弁当を出す。
ちゃんと4種類あってそれなりに選択の余地があるばかりか、ぬるくなってるが缶入り味噌汁まで付いている。
そういうところは妙に気が利いてるんだよな、あの2人。
飲み物もお茶、コーヒー、紅茶、ジュースと揃っていて、そのほか、チップスやチョコフレーク、クッキーやキャンディーなど、まるで長丁場になることを予想しているかのような買い物内容だ。
東城はふくらはぎを揉み終えたのか、今は春菜の腰を両側からマッサージしている最中。
「と、東城さ」
何か話しかけるのが悪いような気もしたが、どの弁当を食べていいかも分からず、遠慮がちに声をかけてみた。
「おう、わりわり、弁当だったな。春菜、食おうぜ」
「う~ん、いいけど、その前にシャワー浴びたい」
「!」
シャワー。
そっか、ここホテルだもんな。
どんなに毎日顔を合わせてはいても、クラスでは決して聞くことのないセリフを聞いて、一瞬どぎまぎしてしまう。
「あそっか、それいいな。オレも入るわ」
「うん、そうしよ」
あの、俺たちという存在を忘れてはいませんか。
その、一緒にシャワー浴びるのが当たり前という態度を、こうもあからさまに、しかも無意識に見せられるのはどうかと思うが。
いや、別に浴びるなと言ってるわけじゃないんだ。
もう少し、そう、デリカシーが欲しいんだよ…な。
「オレらちょっちシャワー浴びてくっから、弁当好きなの食べててくれ」
「あ、唐揚げは私ね」
東城と春菜はそう言い残すと、さっさとシャワールームに消えた。
ややあって、水を流す音が聞こえてくる。
「食べよっか」
「そうね」
唐揚げ弁当を避け、俺とかすみは残った三つから鮭弁ととんかつ弁当を選ぶと、備え付けのレンジで温め、やっとマトモな固形物にありついたのだった。
「しかし、変な一日だったね」
「ふ、そうね。でも、面白かったわ。それに…」
「それに?」
「プレゼントも買ってもらったし」
「あ、そういえば! かすみ、もう一度言うけど、ありがとう」
「え~そんな、こちらこそありがとう」
「や~、それにしても、盛岡も韮崎もタフだったね」
「そうね。まあ、私たちはナイショで追ってたわけだから、余計に疲れたんだけどね」
「今度はさ、2人だけでちゃんとお洒落なトコ行こうよ」
「うん」
「あ、そうそう、かえで先生の家にいるネコなんだけどさ…」
「あ、くすぐったい。きゃっ」
会話の途中で、突然シャワールームから春菜の声が聞こえてきた。
「か、かえで先生のネコがどうかしたの?」
「う、うん、かえで先生、ネコ缶安く売ってるトコ探してるみたいなんだけど…」
「あ、ちょっと、いや。な! あっ! かすみとか…いるんだから、ちょっ…あっ、シャワー当てないで、あっ」
「…探してるって……言うから…う、う~ん」
「……」
あの2人が何をしようと俺が口出しできることじゃないけど、もう少し配慮ってものは欲しい。
俺たちは君らとは違ってキスもしたことない、ウブな2人なんだから。
俺はテレビのリモコンを見つけ、電源を入れようと立ち上がった。
びくっと一瞬体を硬直させるかすみ。
ちょうどついたチャンネルでは関西系のお笑い芸人が大声でバカな掛け合いをやっており、客席の爆笑を誘っている。
2人の声を掻き消すにはうってつけの内容だ。
普段はこういう番組は見ないけど、今は助かる。
そのまま俺とかすみは弁当を食べつつ、それなりに笑い転げながら時間を過ごした。
それからかれこれ4、50分は経っただろうか。
東城は妙にすっきりした表情で部屋に戻ってきた。
春菜もつやつやの顔だ。
ただ別に気まずそうなそぶりはかけらも見せず、普段と変わらない。
「あ~お腹すいた。唐揚げ、唐揚げ」
「食うかな~」
2人はバスローブのままで俺たちの横に座ると、美味そうに弁当を頬張り始めた。
「ん? 何だ山葉。まじまじ見てさ。何かヘンか?」
東城は俺の視線を感じて怪訝そうな表情だ。
そりゃあーた、あんな声聞かされて、あまつさえ当然のような顔をしてバスローブ姿で隣に座られちゃあねえ。
だいたい、なんでバスローブなんだよ。
まるでこれじゃあお泊りモードじゃないか。
かすみは2人を無視して、コマーシャルなのに必死でテレビを見ている。
「あ、そうだ。お前らも浴びたら?」
な! 突然何を言い出すかと思ったら。
「あ、そうそう、ごめんね、お先いただいちゃって。いいお風呂だったよ。入ってきなよ。ジャグジーになってるし、疲れバッチリ取れるよ」
春菜も俺たち2人が一緒に入るのが当然といわんばかりに勧めてくる。
「い、いや、俺はその…いいや」
「え、何で? 汗臭くね? お前がよくってもかすみは入りたいかもしれないだろ」
「そうだよ、山葉ぁ。ね、かすみも遠慮しなくていいから」
分かった。
どうやら東城たちは、俺とかすみが、そう、なんというか、もう、そういう関係なんだと思っているに違いない。
そりゃま、今でこそクラスの中では俺とかすみは付き合ってると認知され始めてるが、けど、付き合ってるからって、もう済ませちまったって考えるのは、ちと早計に過ぎないか?
かすみの方をちらっと見る。
相変わらず画面を凝視している。
弁当箱の中にはまだおかずは残っているが、こちらを、いや、東城たちと目を合わすのを必死で避けているようだ。
「まあ、無理にとは言わんけどな」
東城はちょっと不満そうな顔を見せたが、再び弁当をつつき始めた。
ひょいと春菜の弁当から唐揚げ1個を横取りする。
「あ~! ちょっと、好物なんだからぁ!」
「ほれ、キスフライとトレード」
「もう」
もうこの話題には触れられずに済みそうで、一件落着…かな。
◇ ◇ ◇
「あ、お母さん? うん、あたしぃ。 うん、ちょっと遅くなる。 え? 今? 吉乗寺のコルパ」
弁当を食べ終わって、部屋にあったゲームを見つけた俺たちは、ずっと格ゲーをやっていた。
順番待ちの春菜はその間に家に電話を入れてるようだ。
会話から類推するに、どうやら泊まっていくということにはならなそうで、ほっとひと安心。
でも春菜よ、親にウソはいけないぜ。
今、画面上では東城とかすみが対戦していて、かすみは圧倒的な速さと強さでコンボや必殺技を繰り出し、東城はなすすべもなく瞬殺されている。
驚きと複雑な笑顔を混ぜ合わせたような表情で、かすみをむ~っと見つめる東城。
結局、俺も春菜も含め、誰が何回挑んでもかすみが操る「秋麗」というキャラに勝つことはできなかった。
「ねえ、どうする? 帰る?」
ベッドにうつ伏せになったまま春菜は、疲れた表情で3人に問いかけた。
「そだな。泊まると高いし。帰るか」
時計を見ると夜の9時をとっくに回って、あと20分ぐらいで10時だ。
「やべやべ。ここ10時回るとお泊まり料金だぞ」
部屋の入り口に貼られた料金表を見て東城が焦っている。
バスローブ姿だった2人はそそくさと着替えを始めた。
「ヤバっ! 急がなくちゃ」
「ちょっ!」と叫ぶのも間に合わず、俺とかすみがいるのに、春菜は迷うことなくその場でバスローブをはらりと脱ぎ捨てた。
「あ~、山葉、目つきヤラシぃ~」
「なわけないだろ! だいたいなんで目の前で着替えるんだよ。あっちでやれよ」
「え~? いいじゃない。時間ないんだしぃ」
まあ、春菜はさすがにちゃんと下着は着けていたから、あられもない姿を見せられることはなかったが。
それに、もし何も身に着けてないんだったら、いくらなんでもこんなことはしなかったろう。
にしても、いくら親しいからって、目の前で着替えをすることもないだろうに。
それだけ信用してくれてる? ってことなのかもしれないが、それを喜んでいいものかどうか、おおいに悩んでしまう。
かすみは着替える2人に背を向けて、お弁当の殻やスナックの空き袋を集めている。
これ幸いと俺もそれを手伝った。
結局、盛岡と韮崎はどうなったのか分からないし、調べる手立てもない。
夜も遅いし、家に帰り着くのは11時半過ぎだろうな。
ホテルの表に出てきた俺たちは、駅に向かうことにした。
「おい君たち。君たち、高校生だろ。こんなところで何してるんだ」
ホテルを出た瞬間、不意に背後から男の声で呼び止められた。
ぎくっとして振り返ると、そこには巡査が2人、腕組みをしながら立っていた。
後ろの方には赤色灯を消したパトカーが止まっている。
「え、何もしてないですよ。人を待ってたんですよ」
東城がとっさにいい加減なことを言うもんだから、巡査の表情が険しくなるのが分かった。
「人を待ってた? 今ここから出てきたじゃないか? それがどうして人を待ってることになるんだ? まあいい。学校はどこだ? 生徒手帳を見せなさい」
「………」
東城は不満そうな表情を見せたが、渋々手帳を差し出した。
「神姫高校…と。 最近はアレか? 高校生も男2人、女2人でこんなところに入るのか。 2年ナタリエ組……東、城、薫、と。 はい、次」
巡査は手帳に学校名や名前を書き込んでいく。
「佐、伯、…春、菜、と。 はい、君」
こうして俺たちは全員、住所や親の名前、電話番号までことごとく吐かせられてしまった。
通りがかった会社員とOL風のカップルがこっちを見てくすくす笑っている。
いい晒し者だ。
このまま俺たち補導…されちまうのかな。
何も悪いことしてないが、場所が…悪すぎるよな。
「まあ、今回は大目に見てやるから帰りなさい。こんな時間だ。もうこんなとこ来ちゃダメだぞ」
満員で座れない電車で彩ケ崎まで50分。
家に着いたときには午前0時を回っていた。
覚えきれないほどたくさんのことがあった一日が、終わった。