第101話 エピローグ2023【7】

文字数 542文字

【7】

【じぶんで、したことは、そのように、はっきり言わなければ、かくめいも何も、おこなわれません。じぶんで、そうしても、他におこないをしたく思って、にんげんは、こうしなければならぬ、などとおっしゃっているうちは、にんげんの底からの革命が、いつまでも、できないのです。】

 太宰が、死ぬ半年前に書いた文章である。
 最晩年の太宰は、まるで「革命」と云う言葉に取り憑かれているかのようだ。
 『斜陽』と『おさん』と立て続けに「革命」を語った太宰は、それでも足りなかったのか、とうとう題名もそのままズバリの『かくめい』と云う一文を、或る同人誌に寄稿する。

 ほとんど平仮名の平易な文章なのだが、その言わんとするところは、今ひとつ判然としない。
 私見で申し訳ないのだが、私にはこう読める。

『過去にしでかしたことは、隠さずに「した」と言え。
 これから、成さんとすることがあるなら、はっきりと「やる」と言え。
 その宣言こそが革命の第一歩だ。
 本音を隠して世の中に迎合し、「あるべき論」を語っているうちは、心底からの革命はできるはずもない。
 真の革命とは、心底の革命ができた個人が集まってこそ可能になるのだ』

 こう書いていて気がついた。
 『如是我聞』は、太宰にとっての「かくめい」ではなかったのか?と……。
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