八 〈ガヴィオン〉

文字数 7,309文字

 二〇三〇年。
 民主主義の基本理念・民主主義の三大原則、
「最大多数の最大幸福、社会的正義、道徳的責任」
 に従い、市場経済は国際的に根本から見直された。地球温暖化防止策を実行しなかった先進諸国は、発展途上諸国から大批判され、先進国を主軸にしない、新たな民主主義の協力体制が強まり、大陸ごとに国家が統合された。
 アジア連邦
 オセアニア連邦
 北コロンビア連邦
 南コロンビア連邦
 ユーロ連邦
 アフリカ連邦
 が誕生して、それらの民主的な統括政府として、地球国家連邦共和国・統合政府議会(統合議会)に基づく地球国家連邦共和国・統合政府(統合政府)である、地球国家連邦共和国・統合政府議会対策評議会(統合評議会)が誕生した。

 二〇五六年。
 当時の地球国家連邦共和国・統合政府議会対策評議会(統合評議会)は、
統合評議委員(地球国家連邦共和国・統合政府議会対策評議会評議委員)ジョージ・ミラー(アジア連邦議長)の強い意向により、ホイヘンス対策に、アダムの祖父アレクセイ・ラビシャン教授を、遺跡保護特別官と地球防衛軍のティカル駐留軍総司令官に就任させた。
 当初、アレクセイ・ラビシャン教授の専用機・円盤型特殊ステルス戦闘爆撃ヴィークル〈V1〉は、最新鋭特殊ステルス戦闘爆撃ヴィークルと説明されたが、実際は、ティカル駐留軍基地建設の際、ピラミッドの下から精神生命体ニオブの円盤型小型偵察艦が出土し物を人間クルー用にコピーした艦艇であり、推進システムとコントロールシステムはニオブの円盤型小型偵察艦のプロミドンシステムを模していた。
 当時の連邦統合政府議会対策評議会は、これらの全事実を最高機密とした。
 
 当初の〈V1〉はラビシャンたち人間クルーに合せて改造され、クルーはバーチャルディスプレイかヘッドマントディスプレイを使い、艦のプロミドンシステムをマニュアルでコントロールしていた。
 現在の〈V1〉は思考記憶センサー内蔵ヘルメットやコントロールポッドを介して、プロミドンシステムの思考記憶管理システムがクルーの思考を精神波変換し、精神波でプロミドンシステムをコントロールしている。艦体が感知する全情報は思考記憶管理システムを介して、直接コントロールポッドのクルーや、ヘルメットを装着したクルーの感覚神経系野へ送るよう改良され、以前よりニオブのコントロール方法に近づいている。
 しかしながら、現在も、艦体の姿勢制御や各種探査情報などの表示に、ヘルメットのヘッドマウントディスプレイ、コントロールポッドのバーチャルディスプレイ、3D映像や2D映像も使っている。
 艦体を介してプロミドンシステムが常時モニターする多数の情報から、必要な情報のみをクルーの感覚神経系野へ送っても、情報そのものをダイレクトに感受したクルーは、艦体その物を、自分自身と認識する臨場感を得るため、精神疲労が増す。
 つまり、クルー一人一人が、自分の身体を艦艇その物と認識するプロミドンシステムを直接コントロールするには、精神生命体ニオブのような高度な精神を必要とするため、現在もヘルメットのヘッドマウントディスプレイや、コントロールポッドのバーチャルディスプレイ、3D映像や2D映像を併用している。そしてこれらのコントロールシステムは、 地球国家連邦共和国防衛軍(地球防衛軍)のティカル駐留軍が使用する全戦闘ヴィークルに使用されている。


 数日後(二〇八〇年、九月十六日、月曜)の雨の早朝。
 南コロンビア連邦、ベネズエラ、ギアナ高地、テーブルマウンテン、テプイ・サリサリニャーマ。

 八十機のロータージェットステルス戦闘ヴィークルがテーブルマウンテン、テプイの一つ、サリサリニャーマを囲む十キロメートル圏内の樹海に着陸した。
『配置完了』
 カムトが搭乗している円盤型特殊ステルス戦闘爆撃ヴィークル〈V1〉に、各ヴィークルのクルーから強い精神波が送られた。
『全機、外殻を位相反転シールドしろ』
 カムトは〈V1〉の専用コントロールポッドから、プロミドンの思考記憶管理システムを介して精神波を送った。

 ガルは〈V1〉の中央上部砲座担当コントロールポッドで攻撃態勢を思考した。
 ガルの意識と身体は、ミサイルランチャーや対艦レーザー砲、粒子ビーム砲と化して、樹海の葉陰からサリサリニャーマを凝視している。早朝の樹海は湿度が高い。砲座外殻に凝結した湿気の雫を感じる。

『ミサイルロックしろ!』
 カムトの思考が精神波に変換されて、各戦闘ヴィークルへ伝えられた。
『ロック完了』
『発射!』
 カムトの指令で、八十発のミサイルがテーブルマウンテン、テプイのサリサリニャーマへ発射されたが、樹海とサリサリニャーマの中間で、全ミサイルが炸裂した。
『レーザーパルスだ!』
 ガルは驚きを隠せない。サリサリニャーマ山頂から照射されたレーザーパルスがミサイルを撃墜したのだ。

『スカル!サリサリニャー!
 パラボーラの電磁パルスを小角発射しろっ』
 カムトが指示した。
『了解!』
 下部砲座担当のスカルはコントロールポッドを介して、静止衛星軌道上にあるパラボーラを遠隔操作した。

 電磁パルスが、サリサリニャーマ全体に発射された。
『システム確認しろ。レーザー砲へミサイルを打てっ』
 中央上部砲座担当のガルと前部砲座担当のソミカがミサイルを放った。
 飛翔したミサイルがサリサリニャーマ上部のレーザー砲を破壊した。
『システムが死んだ。攻撃開始!』


 八十機のロータージェットステルス戦闘ヴィークルが、樹海から離陸した。
 サリサリニャーマの岩壁へミサイルを発射している。

『見て!下の岩が崩れてる。何か変だ・・・』
 後部砲座担当のバレリが、コントロールポッドの3D映像を〈V1〉艦内空間に拡大した。
 ミサイルで破壊されたサリサリニャーマ岸壁中腹に、テクタイト鋼のトンネルが見える。
 ミサイル攻撃を受けていない下方の岩壁が崩れ、銀色に輝く巨大な球面が現れた。その下部に小型砲座と大型砲座が見える。山頂にも、大小いくつもの砲座が現れた。対艦レーザー砲と粒子ビーム砲だ。

『〈ガヴィオン〉級宇宙戦艦の格納庫と上部と下部の重砲座だ!
 ニフト級攻撃艦とフォークナ級突撃攻撃艦が現れるぞ!
 アリー!ミラ!システムは生きてる!内部施設は完全にシールドされてる!
 我々が砲座と攻撃艦を攻撃する!
 アリーとミラのチームは坑道を破壊しろ!内部中央に巨大な球体がある。トムソの居住区は球体中央部の外側だ!』
『了解』
 アリーとミラの指揮で、四十機のヴィークルが二派に分かれ、岩盤内部に現れたテクタイト鋼のトンネルに電磁パルス魚雷とミサイルを放った。

『砲座を叩けっ!』
 カムトが指揮する四十機の戦闘ヴィークルが、上部と下部の重砲座へ電磁パルス魚雷とミサイルを放った。
 同時に、〈ガヴィオン〉級宇宙戦艦の上部重砲座と下部重砲座から対艦レーザーパルス(レーザービーム弾)が放たれ、ミサイルと電磁パルス魚雷が炸裂する。カムトのヴィークル編隊は急旋回した。

『ジョリー!二派に分れて攻撃する!』とカムト。
『了解』
 ジョリーが指揮する二十機が上部重砲座へ接近した。電磁パルス魚雷とミサイルと放ち、急反転している。

 カムトの指揮する二十機が急降下した。樹海上空から下部重砲座の真下へ回りこんだ。サリサリニャーマの切り立つ岩盤すれすれを垂直急上昇しながら、下部重砲座へ電磁パルス魚雷とミサイルを放った。
 サリサリニャーマの下部重砲座の対艦レーザー砲が、ヴィークルの電磁パルス魚雷を被弾しながら、瞬時に向きを変えた。放たれたミサイルを撃墜している。
『電磁パルスが効かない!再攻撃する!』
 対艦レーザーパルスの攻撃と、炸裂するミサイルを避けて、カムト指揮下の二十機のヴィークルは急上昇から反転宙返りした。

『〈ガヴィオン〉って何だ?』
 ガルは〈V1〉の急上昇から反転宙返りによる急激な重力変化を受けながら、鋭い視線をカムトに向けた。
『ニオブの大宇宙戦艦だ。へリオス艦隊の大司令艦だ・・・』
『何で知ってる?』
『俺のテロメアの、太古の記憶が蘇った・・・。
 あれは大宇宙戦艦〈ガヴィオン〉の、十分の一程度(二キロメートル)のレプリカだ。
 まだ、外部装甲が完成していない。副艦もあるはずだ・・・』
 カムトが記憶に蘇ったへリオス艦隊を精神空間思考して、ガルに精神波で伝えた。


 精神生命体ニオブのヘリオス艦隊は、大司令戦艦〈ガヴィオン〉を中心に、突撃攻撃艦〈フォークナ〉四隻、攻撃艦〈ニフト〉一隻、回収攻撃艦〈スゥープナ〉一隻の、計六隻の副艦と、百六十隻の搬送艦、円盤型小型偵察艦二十隻から成り立っている。
 艦隊中央の大司令艦〈ガヴィオン〉は、八個の曲面を持つアステロイド型幾何学立体(翼を拡げた大蝙蝠のような形状)で、大きさは二十キロレルグ(一レルグは約一メートル)にも及ぶ。
 回収攻撃艦〈スゥープナ〉は、プロミドンを二つくっつけたような八面体形状(ピラミッド形を底面同士で二個くっつけた形状)で八個の曲面を持つ幾何学立体で、機能上、〈ガヴィオン〉に匹敵する二十キロレルグの大きさがある。
 攻撃艦〈ニフト〉は五キロレルグ。四隻の突撃攻撃艦〈フォークナ〉は三キロレルグの大きさ。いずれもアステロイド型幾何学立体だ。
 百六十隻の搬送艦は直径十キロレルグの円盤状をなして、小型偵察艦は五十レルグの円盤状を成している。
 そして、大指令艦と副艦には、各艦の最大長キロレルグ数の十倍の小型アステロイド型攻撃艇を搭載している。


 対艦レーザーパルスを避けきれず、〈V1〉が被弾して激しく揺れる。対艦レーザーパルスのエネルギー波は、ヴィークルの外殻シールドの位相反転モードで緩和されるが、衝撃は絶大だ。
 再び、ジョリー率いる二十機のヴィークルが樹海上空からサリサリニャーマへ接近し、切り立つ岸壁すれすれを急上昇した。それに続きカムト率いる二十機が急上昇する。

 岸壁下方で格納庫の球面が開いた。五隻の戦艦が飛び出して、ヴィークルを追っている。一隻は、やや大きめの〈ニフト〉級攻撃艦(全長二百五十メートル程)で、四隻が〈フォークナ〉級突撃攻撃艦(百五十メートル程)だ。いずれも、ニオブのへリオス艦隊の攻撃艦の二十分の一程度だ。
『ジョリー、攻撃艦と突撃艦だ!
 全機、敵艦をアリーとミラのグループに近づけるな!』
『了解!』
 ジョリーの率いる二十機が反転宙返りした。四隻の突撃艦の下部に回りこんで攻撃している。

〈V1〉の機内に警報が響いた。同時に、攻撃艦が対艦レーザーパルスとミサイルを放った。二十機のヴィークルは対艦レーザパルスをかわして、反転宙返りして岩盤から遠ざかり、すぐさま攻撃艦下部へ接近し、対艦レーザーパルスとミサイルを放ちながら急反転した。
 だが、ヴィークルをつけ狙うミサイルは、一定の距離を保ったまま、ヴィークルから離れない。
 四隻の突撃攻撃艦と一隻の攻撃艦は、ヴィークルのミサイルを撃墜し、シールドで対艦レーザーパルスに耐えて、絶え間なくミサイルを放っている。

『俺とガルが飛んでミサイルと攻撃艦を破壊する。他の機からもトムソが飛ぶ。
 攻撃艦をアリーたちから遠ざけろっ』
 カムトがクルーにそう指示した。
『了解』
『大丈夫なの?』
 ガルの顔をバレリが覗きこむように見ている。

 カムトが座っているシート側面から、鎧のような装甲が現れた。
『精神波で敵味方の攻撃はわかる。被弾はしない。奴らのテクタイト鋼板など、ロドニュウム装甲でかんたんに破れる』
 ロドニュウム装甲を身に着けながら、カムトは腕を示した。
 手の装甲には、甲から伸びた格納可能な三日月形ソードが三本あり、足にも三本ある。そして、腕と脚の装甲の外側には鋸状の突起がある。

『わかったわ』
 サリサリニャーマ岸壁の戦艦から対艦レーザパルスを被弾して〈V1〉の機体が激しく揺れる。

『ガル、飛べるか?』とカムト。
『ああ、飛べるさ。カムトの記憶どおり腕を拡げ、このガルに、シェルの翼化をイメージする・・・』
 ガルはそう答えた。
『そうだよ。僕たちは飛べる。僕たちが飛ぼうとしなかっただけさ』
 ロドニュウム装甲を装着するケラチンシェル内のソウルのイルに、ケラチンシェルのガルが話しかけた。
『なぜだ?』とゲイル。
 シェルのガルが答える。
『なぜって、ゲイルが飛ぶのを考えなかったからだよ・・・・』

『話はそこまでだ!
 防護隔壁を開け!シールド部分解除しろ!』
 カムトが精神波で〈V1〉にそう指示した。
〈V1〉機体の防護隔壁の一部がトムソの滑空用に開いた。同時に祖の部分の位相反転シールドが部分解除した。
 カムトとジョリーが指揮する四十機の戦闘ヴィークルから、ガルを含めて、四十一体のトムソが滑空した。

 カムトは飛び交うヴィークル後方上空へ移動して、ヴィークルを追って接近するミサイルを次々にロドニュウムの爪で切断して破壊した。ミサイルの数が減ると、切り離したミサイル弾頭を持って空高く舞い上がり、突撃攻撃艦めがけて急降下した。対艦レーザパルスを避けながら、突撃攻撃艦の直前でミサイルを放って反転して舞い上がった。
 眼下で、ミサイルが炸裂して突撃攻撃艦が煙を噴くが、損傷はない。
 カムトはすぐさまミサイルを捕えて突撃攻撃艦に放った。
 カムトとともにミサイルを破壊するガルの身体でカチッと何かが変り、一瞬に身体が反転した。ヴィークルの放ったミサイルがガルの横を飛翔して、遥か彼方の攻撃艦がミサイルを被弾した。だが、閃光を上げただけで、攻撃艦は何もなかったように移動し、滑空するトムソとヴィークルに対艦レーザーパルスとミサイルを放っている。

『なぜ、破壊しない?』
 ガルの精神波にカムトが答える。
『防御エネルギーフィールドでシールドされてる。それに、破壊されても瞬時に修理する・・・。
 アリー!ミラ!球体の隔壁を破壊したか?』
『レーザーで焼き切れない。ミサイルの効果が無い。こっちも強固な防御エネルギーフィールドでシールドされてる』
 サリサリニャーマの岩が崩れ落ちた岸壁に、巨大な球体が見える。坑道だったテクタイト鋼のトンネルは破壊されたまま繋がっている。
 とその時、サリサリニャーマ全体から岩盤が崩れ落ちた。球体の上部と下部にドームが現れた。
 実物の十分の一程度の大宇宙戦艦〈ガヴィオン〉の構造部と基幹部だ・・・。
 また、カムトのテロメアの記憶が蘇って、ガルの精神空間思考域に伝わってきた。


 バラバラと岩を崩しながらサリサリニャーマが浮上した。さらに岩が崩れ落ちて、宇宙戦艦が現れて浮上し、次第に速度を増して上昇している。

 ヴィークル編隊は宇宙戦艦を追った。
 ヴィークルの後を追って、背後から攻撃艦と突撃攻撃艦が、次々に対艦レーザーパルスとミサイルを放った。ヴィークルは宇宙戦艦からも、対艦レーザーパルス攻撃を受けている。

『アリー!、ミラ!全機を戻せ!宇宙戦艦は我々が追う!』
『了解、全機、戻れ!』
 前方の宇宙戦艦と、後方の攻撃艦の攻撃を避けて、ヴィークル編隊が急反転した。
 トムソたちは、地表へ戻るヴィークルと入れ代りに、急上昇した。

『うわっ!』
 いち早く宇宙戦艦を追ったトムソから、悲痛な精神空間思考が伝わった。
『突撃攻撃艦に銛を打ちこまれた。引かれてる・・・』
『切り離せるか?』
『だめだ。腕に力が入らない・・・』
『待ってろっ!』
 カムトは牽引されるトムソに向って急上昇した。
 一体のトムソの捕獲に気を取られたのか、突撃攻撃艦はカムトの接近に気づいていない。カムトに続き、ガルと他のトムソが急上昇する。
 カムトが、牽引されるトムソに追いついた。トムソの胸を貫通する銛と牽引ワイヤを切った。
『うっ?この銛は精神波追尾だ!気づかれたぞ。皆、気をつけろっ!』
 カムトが精神波を放つと同時に、突撃攻撃艦が銛を放った。

 ガルたちは飛んでくる銛をかわして切断し、二隻の突撃攻撃艦に急接近した。艦体のあらゆる部分を切り刻んで穴を開け、剝がした船体部を盾にして対艦レーザ砲を破壊し、切り剝がしたテクタイト鋼板でミサイル発射口を塞ぎ、艦首鋼板を破壊して、銛の発射口から銛を引き出して切断した。だが、数本の銛の追尾システムが生きていた。銛はカムトとガルの精神波を捕捉して、二体のニオブをゆっくり追っている。

 トムソの攻撃で、二隻の突撃攻撃艦は残骸と化した。残り二隻の突撃攻撃艦と一隻の攻撃艦は健在だ。突撃攻撃艦を攻撃するトムソに、攻撃艦が近づいた。
『後ろに敵だ!』
 ガルが精神波を放つと同時に、攻撃艦が銛を発射した。銛に追尾されたトムソは突撃攻撃艦へ飛行して、直前で反転した。銛は突撃攻撃艦の船体に喰いこみ、トムソは銛を避けて安心している。
『後ろだ!』
 ガルが精神波で叫ぶ一瞬の隙をついて、背後から攻撃艦が銛を発射した。銛はトムソの肩を貫いた。ガルは瞬時に攻撃艦へ飛行して、銛のワイヤを切った。船体のテクタイト鋼板を切り剝がして銛の発射口を塞ぎ、対艦レーザ砲を切り刻み、他のレーザー砲に叩きつけた。

 カムトは攻撃艦の船体鋼板を切り取って内部へ入った。
『中に誰も居ない。遠隔操作だ。何か妙だ・・・』
 すぐさまカムトは艦の構造骨格を切り刻んで外へ出た。すると攻撃艦の船体がブリキ缶を潰すように、内部へ向って潰れていった。
『艦の推進力は制御できなくなると強力な球状磁場に変るらしい。推進エネルギーは何だと考える?』
 ガルがカムトに伝えた瞬間、
『うっ?』
 カムトが呻いた。

『どうした?』
 ガルはカムトを見た。カムトの胸に銛が喰いこんでいる。ガルとトムソたちが突撃攻撃艦から引き出して切断した銛だった。
『ガル!後ろだ!』
 ガルは瞬時に移動した。と同時に、浮遊していた三本の銛が脇腹と腕と首筋をえぐって通り過ぎた。切断された銛だったため銛自体に威力はないが、身体に刺されば動けなくなる。
『追尾システムが生きてる・・・。破壊しろ・・・』
 カムトが伝えると同時に、ガルは、漂うように追ってくる銛を全て切断破壊した。
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