三十 未来のあるべき世界㈡・国内政府組織

文字数 3,011文字

 警察と検察、情報機関の組織は、検察警察特別行動捜査庁と統括情報庁に変わった。
 東日本大震災と福島原発破壊事故と東海大震災と浜岡原発破壊事故の復興と事故処理で、自衛隊と消防隊は国民救済に大貢献した。まさに国民防衛と国土防衛だ。
 地球規模の自然変化が生じている現在、自国だけでなくあらゆる危機に対処した地球規模の防衛体制が必要だ・・・。
 省吾は政府組織の変更を日記を書いた。


『政府組織の変更を以下に記す。

【地球防衛省、地球防衛軍の組織化】
 防衛省を「地球防衛省」と改名し、自衛隊と消防と検警特捜庁航空検警特捜局の一部と海上検警特捜局の一部で、「地球防衛軍」を組織する。
 地球防衛軍は、国民防衛と陸海空にわたる国土防衛を基本目的に行動し、国民と国土に害を及ぼす対象を攻撃する。
 地球防衛軍の指揮権は「地球防衛軍総司令官」が保有する。

※法務省検警特捜庁は犯罪を取り締る。
 質的に地球防衛軍と重複するが、軍事組織の一極集中を防止するため、検警特捜庁は現在のまま法務省下に置く。

【地球防衛省情報局】
 地球防衛軍を組織する事により、防衛省情報局は「地球防衛省情報局」と改名する。
 これまで同様、統括情報庁の組織であり、同時に各省情報局と連携した並列組織に変わりはない。
 地球防衛軍が承認され次第、軍備を整えて空海国境に軍を派遣し、空海両面から海上国境を警備し、国境の常時警備と日本国籍の船舶と航空機の警護を行なう。
 特に漁船の警護と領空領海を侵犯する航空機と船舶の拿捕を行なう。
 これらから攻撃された場合、装備された全ての武器を使用し、速やかに反撃殲滅する。

【国家議会】
 立法行政府である直接民主制の「国家議会」を、各都道府県議員(各都道府県で二名から三名選出)と、知事からなる議員で構成する。
 議員は国民の代弁者であり、「国家議会」は、国民に直接請求権と決定権がある、直接民主制の議会である。
 国家議会は、議員ではない者から、各省大臣と地球防衛軍総司令官を任命承認し、これを解任する。
 国家議会は政府予算を決定する。各省庁からの要求は意見として聞き、省庁からの予算請求は全てを却下する。各省庁は決定された予算内で職務を実行する。

【国家議会対策評議会(実質的に政府内閣に相当する組織)】
 国家議会下に「国家議会対策評議会」を置き、その下部組織として「国家議会対策評議会官房」を置く。
「国家議会対策評議会」が国家議会のまとめ役であり、法案検討提出機関で政策推進機関であり、実質的に政府内閣に値する。
 国家議会の下に「国家議会対策評議会」と「地球防衛軍」と「各自治体」と「各省」がある。

【地方自治体の政治権限】
 可能な限り政権を地方自治体へ移す。

【統括情報庁】 
 国民と国家議会は正確な情報が必要だ。現状は内閣官房情報本局が統括情報庁組織の管理組織になっている。

「統括情報庁」を、「国家議会」と「国家議会対策評議会」「国家議会対策評議会官房」「地球防衛省」「各省、法務省、都道府県」の下に置き、「検察警察特別行動捜査庁」「地球防衛軍」と横並びにし、
「統括情報庁」のトップ組織に「国家議会対策評議会情報本局(旧内閣官房情報局)」を昇格し、
「法務省公安情報局(旧法務省公安情報本局)」
「法務省公安検警局(旧法務省公安検警本局)」
「外務省国際情報局(旧外務省国際情報本局)」
「地球防衛省情報局(旧防衛省情報本局)」
 を管理させる・・・・・』


 理恵の手が省吾の脚を撫でた。
「先生・・・」
「これで終りだから」
「うん・・・」
 理恵の熱い手が省吾の脚を撫でている。理恵の熱さが増し、芳しい香りが強くなった。
 省吾は理恵の横顔を見た。笑みを浮かべて見返す顔は視覚的に理恵だ。バトルスーツに身を包んだ戦士マリオンの雰囲気も感じられる。
「理恵だよ。いつもより強く、私の中にマリオンがいるよ・・・。
 センセイ、今の資本主義国家は、シュメール人の都市国家や古代ローマ帝国と同じだ・・・」

 古代シュメール人は民族の誇りを無くし、民族として生きる希望を失った。
 古代ローマ帝国は、領土拡大に伴う国境警備軍の維持に財政負担が増したが、ローマ市民は元老院の議員から投票と引換えに娯楽と日々の糧を与えられて堕落し、帝国の生産が停滞した。そして、帝国は急速に衰退した。

 民族の誇りを持たない民。娯楽と飽食がはびこる国。逼迫した財政を市民に知らせず、対策を講じなかった元老院とローマ皇帝。
 現在の資本主義国家は、古代ローマ帝国やシュメールの民と同じだ。
 有史前から人類の興亡を見てきたマリオンは、そう言いたいのだ・・・。
 理解したぞ・・・。

 世界を国家連邦へ進めるため、『未来のあるべき世界』を日本の政治に先取りしよう。
 国家財政の赤字補填と年金改革は、この日記に現れた不審文の内容で行なう。
 東南アジア・オセアニア経済圏協定を南米諸国まで拡大し、環太平洋経済協定は締結しない・・・。
 省吾は『未来のあるべき世界』の法律を、日本に置き換えた日記を書いた。


『未来のあるべき世界、国内の新法律

【新法律の制定】
「市場経済禁止法、金融資本主義禁止法」
 を基本とした新たな法律、
「証券取引法」
「労働法」
「環境保護法」
「製造基本法」
 を制定する。

【市場経済の廃止】
 国連政府の下で施行された「証券取引法」と「労働法」により、経済を狂わせる市場経済の元凶を無くため、
 投機を目的とする株式売買の禁止、
 投機を目的とする企業売買のための株式売買の禁止、
 支配的または強制的な企業買収を目的とする株式売買の禁止、 
 企業や国家への投機を目的とする投資の禁止、
 企業や国家への投機を目的とする金融商品の開発と販売の禁止、
 派遣と称して雇用関係を物のレンタルの如く扱う、労働者の非正規雇用の禁止、
 労働者の派遣や紹介によって利益を得る事の禁止、
 等を施行する。

効果
 株式配当のみを得る資本家を残し、投機家を壊滅する。

【産業構造の変革】
「環境保護法」と「製造基本法」により、人類を育成する素地を、十八世紀後半から十九世紀にかけて起こった産業革命以前の地球環境に戻すため、
 地球環境を悪化させる物質(放射性物質も含む)の廃棄の厳禁、
 地球環境を汚染する物質の生産の厳禁、
 を制定する。

 守れぬ個人と企業と国家に、国連政府が厳罰処分を下す。
 企業に無廃棄物生産を強制する。
 核物質の使用を厳禁する。
 短期間で分解して自然へもどらぬ製品は生産を厳禁する。
 自然分解不可能な物を生産する場合、企業は国連政府の監視下で、未来永劫にわたって全製品を再利用するよう強制する・・・』


「書けたね・・・」
 理恵は省吾の腿に頬を触れた。
『政治体制が国家連邦へ進めば、省吾と理惠に危険が迫るが、私たちが守るぞ』

「ありがとう、マリオン。頼むよ。次は世界規模の民主化だ・・・。
 昼ごはんを作る。何、食べたい?」
「ねえ・・せんせい・・・」
「なに?」

 理恵の顔がゆっくり向きを変えた。うっとりした眼で省吾を見ている。
「もう少しこのままでいてね」
「えっ?いいけど、腹は?すかないのか?」
「うん、大丈夫だから・・・」
 理恵は省吾の腿に頬を載せて撫でた。理恵の頬と手が熱い。芳しい香りが強くなった。
「よおし、わかった・・・」
「うれしい・・・」
 省吾は日記を保存し、タブレットパソコンの電源を切った。
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