二十四 ボヘミアの森

文字数 7,785文字

 二〇五六年、十月三日、火曜。

 上海十二時過ぎ。
 上海のアジア連邦政府ビルで警戒アラームが鳴った。
「何が起こった?」
 アジア連邦議長執務室で、ジョージ・ミラーがディスプレイの議長補佐官に訊いた。
「ステルス型の未確認飛行体が太平洋上から上海に接近中です。
 アジア駐留軍の偵察機がスクランブルしました。映像は情報収集衛星からです。
 連邦全土に警戒態勢を布きました」

 議長補佐官に代って、直径が数十メートル、地球防衛軍の偵察機全長の数倍以上もある円盤状飛行体がディスプレイに現れた。ディスプレイの隅に飛行体の進路が表示されている。
「優性保護局の情報収集衛星使用を停止したか?」
 ミラーは補佐官に確認した。
「使用禁止を伝えて、優性保護局の通信コードを抹消しました。
 情報収集衛星の認証コードを変えました」

「わかった。飛行体は何処にいる?速度は?」
「太平洋上です。速度マッハ五。まもなく上海上空です。このままならユーロ連邦東部へ飛行します」
「アジア駐留軍を出動させろ。統合政府とユーロ連邦政府へ連絡して、ユーロ駐留軍も出動させろ」
 ミラーは補佐官にそう指示した。
 核攻撃に備えて、地球防衛軍の統合本部と基地は、ヒマラヤ山脈の地下にある。そして、アジア駐留軍本部と基地は桂林の地下に、ユーロ駐留軍はアルプス山脈の地下にある。
「了解しました」と補佐官。
 アジア連邦政府がユーロ連邦政府へ通達すると同時に、衝撃波が上海の超高層ビル群に伝わった。

 ミュンヘン六時過ぎ(上海時刻十二時過ぎ)。
 アジア連邦政府からのホットラインで、ユーロ連邦議長ジョルジュ・アレジは、ユーロ連邦に緊急警戒態勢を布いた。ただちにマスコミが報道する。

『ステルス型未確認飛行体がユーロ連邦に向って飛行中です。
 およそ二時間後、ボヘミアの森林に到達すると考えられます。地球防衛軍のユーロ駐留軍が未確認飛行体の拿捕に出動しました。  
 作戦がボヘミアの森林とチューリンゲンの森林に展開されます。軍から解除命令が出るまで、当地域と当空域はともに立ち入り禁止です。 
 演習ではありません。危険です。当地域周辺の市民は外出しないでください。軍の指示に従ってください』


 バンコク十一時過ぎ(上海十二時過ぎ)。
 バンコク優性保護財団ビルでディスプレイの画像が消えた。照明も消えている。アラームも鳴らない。優性保護財団ビルのエネルギーシステムが完全にダウンしている。
 非常時は数秒以内に補助エネルギーシステムが作動するはずだが、総裁執務室の照明は消えたままだ。
 何だ?未確認飛行体の影響か?
 ホイヘンスはデスクから離れて、窓辺へ歩いた。
 この高層の優性保護財団ビルから数百メートル以上離れて林立するビル群もエネルギーシステムがダウンしたらしく、ビルの照明はおろか、最上部にある高層物認識灯も点滅していない。

 ホイヘンスははデスクに戻って、緊急インタコムをオンラインにした。
「セシル。外部管理部から保安部へ連絡して、至急、補助エネルギーシステムを稼動させてくれ。研究所のエネルギーシステムは使うな。全システムを点検するんだ。この回線はオンにしておくから頼むよ」
「わかりました。補助エネルギーシステム稼動後に、点検結果を報告します」
 セシル・ミラーがそう報告した。

 アジア連邦政府が、未確認飛行体の警戒態勢を布いた途端、エネルギーシステムがダウンした。いったい、何が起こった?
 ホイヘンスがそう考えていると、
「総裁!補助エネルギーシステムもダウンしています。十三分以内に手動復旧します。システムの点検はその後に・・・」
 インタコムからセシルの緊張した声が響いた。
「補助エネルギーシステムのプログラムはどうした?」
 ホイヘンスは苛立ちを押さえた。非常用プログラムは外部の影響を受けないように、独立してシールドされているはずだ・・・。

「破損しています。このような事は前例がありません・・・」
「他のシステムも破損している可能性がある。復旧を急いで、引き続き彼らを探してくれ。それと、システムダウンの原因を調べてくれ」
「わかりました」
 セシルが席を離れる気配がインターコムから聞える。緊急インターコムはオンラインのままだ。

 システムがダウンしたのはこのビルだけではない。未確認飛行体の影響か?偵察衛星を使えなくなったから未確認飛行体が何かわからない・・・。
 全システムがダウンするのはシステムに電磁パルスが侵入した場合だ。いったい電磁パルスはどこから来た?
 ホイヘンスは苛立ちを押さえて考え始めた。

「総裁。バンコク市エネルギー局から緊急回線で連絡です」
 とインターコムに連絡が入った。
「回線をまわしてくれ」
「はい・・・」
「バンコク市エネルギー局長のホイ・タウワンです。
 今回のトラブルは、地熱発電所のマイクロ波搬送装置に発生した電磁パルスが、ケーブルで波及したためです。誠にすみません。早急にエネルギー供給を再開するよう対処しますので・・・」
「大至急頼むよ。被害が出ているのは地熱発電所の供給エリアだけですか?」
 ホイヘンスは苛立ちを押さえて丁寧に訊いた。
「ええ、そうです。市内だけです。皆様の被害は当局が賠償しますので・・・」
「わかりました。市長によろしく伝えてください」
「はい。コンロン市長に伝えます」
「それでは、また・・・」
 エネルギー局長との通話回線が閉じた。
 なぜ、発電所のエネルギーシステムに、電磁パルスが発生するんだ?
 ホイヘンスは疑問だった。

 照明が点いた。ディスプレイは消えたままだ。
「総裁。全システムが破損しています。復旧まで三時間かかります」
「わかった。急いでくれ」
 電磁パルスが発生する原因は、他に無いのか?
 もしかすると・・・。
「セシル。緊急回線でユーロ支部に連絡できるか?」
 ホイヘンスはインターコムに向ってそう訊いた。
「できます」
「ユーロ支部の情報部員をアネルセン邸へ行かせろ。彼らを捕まえるんだ」
「館には誰もいません。アネルセン邸の周囲は立ち入り禁止です・・・」
「行ける所まで行かせるんだ。彼らを捕まえられぬなら、サンプルを持ち帰るように指示してくれ」
「わかりました」
 未確認飛行体は、モーリン・アネルセンとトーマス・バトン、大隅母娘を救出する気だ。
 いったい、誰が動いている?ジョージ・ミラーか?
 チャン・カンスンに訊いても、チャンは表向きの事しか言わないだろう・・・。


 バイエルン地方フユルー八時過ぎ(上海十四時過ぎ)。
 ユーロ連邦、ドイツ、バイエルン地方フユルー郊外森林地帯ボヘミアの森は、厚い雨雲の下の暗闇に静まり返っている。
 アネルセン邸のドームの壁に並んだディスプレイに、高速飛行する飛行体が現れた。アネルセン邸の遥か上空で停止した。音を発せずに静かに降下している。

 地下核シェルターでモーリンが言った。
「来たわよ!」

 広大な庭園に円盤型特殊ステルス艦が無音で着陸した。機体直径は戦闘ヴィークル全長の数倍もある。
「庭園が台無しです・・・」
 オリバーが呟いた。
「修復してもらうわ・・・」
 モーリンの言葉は穏やかだが、憤慨した気配が漂っている。

 館周囲のアネルセン家の森林に、大小さまざまなロータージェットステルス戦闘ヴィークルが無音で降下した。アネルセン邸は周囲に着陸した大小さまざまな無音のステルス戦闘ヴィークルで包囲された。
 庭園に着陸した円盤型特殊ステルス艦の下部が開いた。
 四人の兵士に先導されて、制服の指揮官らしい男が降りてくる。男は制服を着た女を連れて女の手を握っている。二人の後方にも四人の兵士が居る。

「ラビシャン教授だっ!」
 トーマスが叫んだ。かなり驚いている。
「トーマス。あの女は誰?」
 モーリンはトーマスに訊いた。
「わからない・・・」
「どうやら、あの方の奥様のようです。モーリン様・・・。それと・・・」
「オリバー、何?」
「直接お会いしないと、はっきりした事を申し上げられません」
「そう?・・・そうね・・・」
「そろそろ、私がお相手しなければなりませんので、私は広間へ戻ります」
 オリバーはシェルターの壁へ歩いた。鉄の壁が左右にスライドして、オリバーは消えた。


 円盤状戦闘機から降りたラビシャンとネリーは、兵士に囲まれて館へ歩いた。
「ここで待機してください。私たち二人で説得する。何があっても立入らないように」
 ラビシャンはネリーの手を握ったまま、館の入口手前で八人の兵士に命じた。
「しかし、特別官・・・」
 指揮官ジョン・ケクレは実戦経験が無い。心配を隠せない。
「心配ないよ。何かあれば、あれが作動する」
 ラビシャンは円盤型特殊ステルス艦を示した。機体上下部のレーザービーム砲が館に向けられている。
「わかりました・・・」
 ケクレたちは館から数メートルの位置に待機した。

 ラビシャンとネリーは館入口に立った。雨が降り始めた。
「モーリン・アネルセンさんは在宅ですか?」
 扉の外で、ラビシャンはインターホンに告げた。
「どちらさまでしょう?」
「アレクセイ・ラビシャンと妻のネリーです」
「執事のオリバーです。お待ちしていました」
 扉が開いて執事が顔を見せた。

「・・・」
 ラビシャンとネリーは互いの手を握ったまま不思議な顔で見つめ合った。
 我々が来るのを予測していたらしいぞ・・・。

「中へお入りください」
 オリバーに招かれて二人は入口の広間から長い回廊を抜けて大広間へ入った。
 ネリーはラビシャンの手を握り締めた。ネリーの手が汗ばみ緊張している。
「この館はあらゆる監視システムの影響を受けません。御安心ください」
 オリバーは天井を指さした。情報収集衛星の事を示している。
「おかけください。お茶をお持ちします。しばらくお待ちください・・・」
 オリバーは二人にソファーを勧めて、広間の隣の応接間を抜けてキッチンへ入った。

 ラビシャンはソファーに座って、ネリーを左に座らせた。
「心配ない。危険はないよ」
 ネリーを緊張させないように、ラビシャンは、左手に握っているネリーの右手の甲を優しく撫でた。
 ラビシャンに手の甲を撫でられて、ネリーは肩の力が抜けた。首筋がすっきりして、それまで縮んで丸まっていた背筋が伸びて、胸のつかえが取れたように感じた。
「ええ、わかったわ・・・」

 オリバーがトレイを持って戻った。
 テーブルにお茶の満たされたカップを置いて、一歩ほど退いた。
「モーリン様は御友人とともに外出中です。かれこれ二ヶ月になります」
 オリバーはラビシャンとネリーに優しい眼差しを向けている。

 ラビシャンはネリーを見た。ごまかしても何もならない。画策をしている場合ではない。正直に話すしかない・・・。
 ネリーもラビシャンを見て頷いている。ラビシャンは訊いた。
「オイラー・ホイヘンスを知ってますか?」
「存じております」
「優性保護局が優性保護財団を通じてモーリン・アネルセンさんとトーマス・バトン君を召喚して、二人と大隅教授の妻と宏治の妻を捕えようとしている・・・」
「二ヶ月ほど前、優性保護財団情報部が優性保護局の召喚状を持ってきました」
「四人はいっしょですか?」
「ええ、モーリン様とごいっしょです。ご安心を」
「召喚に応じてはならない。二人と大隅かほりとユリの母娘に、我々とともに来るよう、話してください」

「ネリー様の出産予定日はいつでしょうか?」
 オリバーが表情を変えずにそう訊いた。
「えっ?」
 ネリーは驚いてラビシャンを見た。
 ラビシャンも驚いたが、おおよその想像はできた。

 かほりとユリが妊娠して、その理由がトーマスを通じてモーリン・アネルセンに伝わったのだ。そして、ローラの反射光を浴びた独身のラビシャンが、妻を同伴してアネルセン邸を訪れた。それだけで、ラビシャンのテロメアが相手を選んだ事になる。妻ネリーが妊娠していても不思議はない。

 ラビシャンはネリーをおちつかせるために、ネリーの手の甲をさらに優しく撫でた。
「どうしてそれを?」
「ラビシャン様御夫妻、大隅教授御夫妻、宏治様御夫妻、そして皆様の子供たちが、トーマス様が知ろうとしたローラのDNAの分子記憶です。
 子供たちは新しい宇宙です。何があっても、皆様全員がホイヘンスらの手の届かぬ所へ逃れなければなりません。モーリン様もトーマス様も、その事を気にかけておいでです」
「チャン・ヨンハンは、彼らを説得しなかったのか?」
「モーリン様とトーマス様には考えがおありです」

「オリバー!もういいわ!」
 モーリンの声が図書室から響いた。
「かほりとユリを保護してちょうだい・・・。
 それでいいわね。オリバー」
 モーリンは広間に歩いてきた。
「はい、モーリン様。
 機体は微振動でシールド域は許容範囲です。胎児に影響しません。ご安心を」
 オリバーが円盤型特殊ステルス艦の振動と発生する電磁波の安全性を説明した。

 何を言うんだ。ビートルは最新鋭の円盤型特殊ステルス戦闘爆撃ヴィークルだ。微振動すらしない。電磁遮蔽は完璧だ。それに、ネリーのお腹に私たちの子供が居るんだぞ・・・。
 ラビシャンは多少ながら苛立った。

「オリバー。状況を説明して三人を連れてきてね」
 モーリンはオリバーに指示した。
「はい。モーリン様」
 オリバーが図書室へ歩いた。

「どこへ行くのか、なぜ、訊かない?軍まで率いた私が、君たちを騙しているかも知れないぞ」
「オリバーと私は心を読むの。私たちはあなたが事実を述べていると判断した・・・」
 モーリンはラビシャンを見つめて、考えを読んだ。
「大隅たちを救うため、トーマスと召喚に応ずる気か?」
 ラビシャンも、モーリンの考えを読んだ。
「・・・」
 モーリンは何も答えない。ラビシャンの読みは当っている。アレクセイ・ラビシャンは言った
「よせ!トーマスのローラの情報隠蔽と、あなたの監視システムの不法傍受は、当局に手を回して揉み消した。罪にならない。
 召喚に応ずれば、ホイヘンスに洗脳されて利用されるか、保存培養カプセルで眠らされて実験材料にされるだけだ」
「大隅教授と宏治も、財団本部の保存培養カプセルで眠らされてるのね」
「そうだ・・・」

 ネリーがラビシャンの目を見た。
「先生。私たちがどこへ行くか話したら、アネルセンさんも納得するわ」
「そうだね・・・。
 我々の行く先は、グァテマラのティカルにある、地球防衛軍駐留基地だ。
 最新鋭の軍需設備と、必要な最先端の医療と科学の研究設備がある・・・」
 ラビシャンは詳しく説明した。

「わかったわ。ティカルに行きましょう・・・」
 モーリンがそう言うと、図書館からオリバーが、かほりとユリとトーマスを連れて現れた。
「オリバー。皆をラビシャン教授とともに行かせなさい」
「はい、モーリン様・・・。皆様はこちらへ・・・」
 オリバーはかほりとユリをネリーの隣に歩かせた。
「さあ、早く行きなさいっ!
 かほり、自己紹介は後よっ!
 トーマス。ラビシャン教授に挨拶してる時じゃないわっ!行くのよ!
 教授。皆を連れて早く行きなさいっ!」
 何か話そうとするかほりとユリ、トーマスを制して、モーリンはラビシャンとネリーを立たせ、かほりとユリとともに館の入口へ歩かせた。

 かほりとユリが言う。
「オリバー、今まで、本当にありがとう・・・」
「まだ、終りではありません。これから始まるのです。さあ、お急ぎください」
 オリバーに追い出されるように六人は館を出た。雨の中で待機している兵士に囲まれて、円盤型特殊ステルス戦闘爆撃ヴィークル・ビートルに搭乗した。

「全員、シートに座って身体を固定してください。
 外部映像はディスプレイで見れます」
 兵士の一人が機体中央にあるコンソール周囲のシートを示した。
 ケクレ指揮官はコンソールに着いている。
「ケクレ。作戦完了だ。情報収集衛星の防御網を館中心の半径五キロ圏に設定して、パラボーラのリンクは続行してくれ」とラビシャン。
「了解。防衛網を再設定しリンク続行。
 全機、発進!」
 ケクレは指示した。

 ビートル(円盤型特殊ステルス戦闘爆撃ヴィークル)が無音で上昇した。
「館の入口に何人居る?」
 ラビシャンはケクレに訊いた。ディスプレイに映っていオリバーは扉の外で雨に打たれて手を振っている。
「思考波表示に切り換えます」
 ケクレは専用コンソールのタッチパネルを操作した。ディスプレイに館入口の映像が現れた。拳ほどの球体が幾つも現れている。
「誰もいませんが、それが何か?」
「いや、何もない」
 館の映像が小さくなった。ビートルは戦闘ヴィークルを率いて高速飛行に移った。


 バクダッド九時半過ぎ(上海十四時半過ぎ)。
「未確認飛行体を拿捕。当地域と当空域の立ち入り禁止は続行中。外乱は消去する」
 アジア連邦議長ジョージ・ミラーと統合議長チャン・カンスンは上海とバクダッドのそれぞれの執務室でアジア駐留軍から直通通信を受けた。
 
 
 ミュンヘン九時過ぎ(上海時刻十五時過ぎ)。
 フユルー郊外上空を飛行する優性保護財団の特殊小型ヴィークルが、一瞬に消滅した。

 バンコク十四時過ぎ(上海時刻十五時過ぎ)。
 補助エネルギーシステムにより優性保護財団の全システムが復旧した。
「総裁!情報部員の通信が途絶えました!
 ユーロ駐留軍は、立ち入り禁止空域に不法侵入した民間機が未確認飛行体に攻撃されて消滅したと発表しています」
 セシルが緊急事態を伝えた。
「映像は無いか!」
「軍の発表だけです」

「わかった・・・」
 誰が未確認飛行体を動かした?
 カンスンの興味は現職の地位と権力だ。臓器ビジネスに興味はない。実験材料と理論を手に入れてもメリットは無い。
 ジョージの姪は私の下で働いている。妙な動きをすれば姪の命はない。
 ラビシャン夫婦はフロリダで隠居生活だ。現地の監視システムがラビシャン宅に二人の身体放射波と思考波を確認している。
 フロリダで使われたカードの支払いは、退職金が振り込まれたフロリダ銀行の口座からだ。外部管理部の調査とアンドレたち家族の説明は一致している。
 まさか・・・。
 ホイヘンスはチャン・カンスンに連絡した。

「カンスン。元気かい?」
「ああ、調子は良いよ。君に連絡しようと思っていたところだ。統合議会で研究施設建設が認められた。研究施設の建設は全て君の方で進めてくれ。
 予算審議委員会が、幾らかかるかわからない建設計画に予算を付けられないと難色を示したから、全てを君に一任すると説得するのに苦労してね。昨日までかかったよ。今日中にも君に知らせるつもりだった」

「ありがとう。早速、建設に取りかかる。ところで、未確認飛行体はどうした?」
「軍と交戦中だ。民間機が巻き添えになった。これ以上犠牲を出したくない。軍にパラボーラ使用を許可したから、もうすぐ片がつくさ」

「飛行体はどこから来た?」
「わからんのだ。捕えて調査する予定だったが、未確認飛行体はレーザー砲と粒子ビーム砲を使ってる。危険過ぎる。破壊しかない・・・」
「どこから来たかわかったら知らせてくれないか?」
「わかった。知らせるよ」
「それでは、また・・・」
 ホイヘンスはチャン・カンスンとの映像通信を切った。
 未確認飛行体は、本当に地球外部から飛行したのか・・・。
 ホイヘンスの疑問は消えなかった。
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