プロローグ

文字数 1,832文字




 ガイア歴二〇八〇年十一月十日。
 オリオン渦状腕ヘリオス星系惑星ガイアの、地球防衛軍ティカル駐留軍基地が建造した巨大球体型宇宙戦艦〈オリオン〉が、時空間スキップで地球(惑星ガイア)の静止衛星軌道上に就航した。

「これから支給するアーマーは、あらゆる事態に対応できる。
 常時、装着してくれ」
 ピーター・プランクは十五名のカムトたちに指示した。トムソたちと同じ人数の補佐官 がトムソに装備を装着している。
「装備はバトルアーマーだ。
 何かあってアーマーを外す時は、そのように精神波を発すればいい。
 つまり、アーマー自体がプロミドンだ・・・」
 トーマス・バトンの説明に、トムソたちからどよめきが起こった。プロミドンはAI・巨大電脳宇宙意識だ。物質をエネルギー転換する機能や時空間移動させる機能などを有している。そして、アーマーを装着している間、全ての行動が記録される。それは時空間スキップしてもである。つまり、トムソ単独で他時空間へスキップ(時空間転移)してもである。

「試していいか?」とカムト。
 ここは直径四十キロメートルの惑星移住計画用の球体型宇宙戦艦〈オリオン〉の内部だ。
〈オリオン〉は、地上から三万六千キロメートルの静止衛星軌道上にいる。最初はこの〈オリオン〉内部で時空間スキップする。その次は〈オリオン〉と地上の間だ。
「かまわない。何度も試してくれ。その前に、目的を伝えておく。
 いずれこのオリオン渦状腕で、ホイヘンスによる異変が起こるだろう。
 この異変を事前に察知して防いで欲しい。
 君たちの行動は、PDで常に地球防衛軍統合本部に伝えられる。
 そのつもりでいてくれ」
トーマス・バトンの言葉にトムソたちが頷いている。


「PDガビオンがPDアクチノンを感知した・・・」
 カムトが精神思考を、月面の地下に格納されているニオブのへリオス艦隊旗艦〈ガヴィオン〉のPDガヴィオンにシンクロさせた。精神思考は心で思考することで精神空間思考とも呼ぶ。精神波を発して意志疎通できる。
 ニオブの〈ガヴィオン〉に搭載された技術は巨大球体型宇宙戦艦〈オリオン〉に活かされて、〈オリオン〉はいつでも時空間スキップ可能だ。

 カムトがPDアクチノン唐の要請を説明する。
「グリーズ星系のPDアクチノンが我々に出動を要請してきた。
 ホイヘンスのシンパ、アーク・ルキエフのネオロイドを惑星ナブールに追いつめた。
 説明すると言ってる・・・」
 カムトがそう言っているあいだに、〈オリオン〉のホールに、戦艦〈アクチノン〉のPDアクチノンのアバターが執事風の男の姿で現れた。

「私はニオブのアクチノン艦隊の旗艦〈アクチノン〉のプロミドン・PDアクチノンです。
 アーク・ルキエフを追いつめたのはジェニファー、Jです。
 Jはオオスミ・カムトの伯母の田村耀子です」
 4D映像のジェニファーを示して、PDアクチノンが説明する。
「Jは、惑星ガイアで、ホイヘンスのシンパ、アーク・ルキエフの攻撃を受け、PDガヴィオンによって時空間スキップした耀子の、精神と意識のニューロイドです。
 Jは現在、主惑星グリーゼから時空間スキップして、アッシル星系、惑星ナブールに居ます。
 Jの両親も惑星ナブールに時空間スキップしました。
 Jの両親はあなたたちの祖父母です。
 Jは、カムト、スカル、ガル、レグたちの伯母です。
 Jの考えは・・・」
 PDアクチノンは説明した・・・。PDアクチノンの隣りに、同じように執事風の、戦艦〈ガヴィオン〉のPDのアバター・PDガヴィオンも居る。

 PDアクチノンの説明を聞いて、カムトがPDアクチノンに伝える。
「我々もその考えに賛成だ」
「Jにそのように伝えます」
 PDアクチノンのアバターが消えた。

 我々は宇宙の支配者ではない。管理者だ。アーク・ルキエフがどうあろうと、我々は宇宙を管理しなければならない・・・。
 そう考えながらカムトは〈ガヴィオン〉のプロミドン・PDガヴィオンに伝える。
「PD。時空間スキップのテスト後に、惑星ナブールへスキップする。
 位置を確認してくれ」
「位置は、銀河中心に近い、オリオン渦状腕深淵部、アッシル星系です。
 紛らわしいので、今後はPDガヴィオンと呼んでください。
 PDアクチノン同様に3D映像と音声で現れます」

「了解した」
 これで、アーク・ルキエフを追う手間が省けた。おまけに、行方不明になっていた伯母と祖父母に会えるなんて思ってもみなかった・・・。
 カムトはそう思った。
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