八 メテオライト落下

文字数 1,299文字

 ガイア歴、二八一〇年、六月。
 オリオン渦状腕外縁部、テレス星団フローラ星系、惑星ユング 。
 ダルナ大陸、ダナル州、アシュロン近郊、リンレイ・スー軍事基地。


 ダルナ大陸の地域統治官が壊滅して一週間後。

「訓練か?」
 早朝の居住区でレイカが従妹のマリー・ゴールドに声をかけた。
「ああ、バレーでな。岩山をビルに見たてて、対抗勢力との実戦訓練だ」
 マリーは金髪をポニーテールにしてバトルスーツを着こみ、バトルアーマーを身につけた。
 訓練では武器も兵器も実射しない。
 スー軍の全てを管理しているのはレイカがアイと呼んだ分散型AIだ。
 兵器や武器のAIにシンクロしたバトルアーマーのAIにより、仮想現実の世界で攻撃されてヒットしたターゲットは、死を示すそれなりの強烈な痛みの刺激を受ける。実践さながらの訓練が可能だ。

「次の対策を講じてるって訳だな」
 レイカはダナル大陸から外への侵攻を考えた。ママンはそこまで考えていないが、マリーはもうそんな事まで考えてたのか・・・。マリーはあたしたちより、先を読むのに優れてるってママンが言ってたのは確かだ・・・。

「私のチームを訓練し、随時レイカのチームとメイリンとシャオリンのチームを訓練する。
 毎回、兵器の大半を投入する。承諾してくれるか?」
 マリーは武器を次々にバトルアーマーの各所へ装着して、ヘルメットを持った。

「かまわないよ。ママンの許可を得とくさ。
 今日は家へ行く。帝国軍警察についてママンと打ち合せだ」
 レイカはバトルスーツを着こんだ。
「ありがとう。恩に着るよ」とマリー
「気にするな」
「じゃあ、行ってくる」
 マリーはヘルメットを被ってバトルアーマーのAIを起動し、居住区から出ていった。

 マリーのことだ。ママンには訓練の許可を得ているのはわかってる。そうでなければ、早朝から訓練に出るはずがない・・・。
 レイカがバトルスーツのAIを起動して確認すると、マリーはすでにリンレイから訓練許可を得ていた。
 レイカが居住区から格納庫を見ると、兵器と兵士を搭載した二機の〈イグシオン〉と、二機の〈マストドン〉に続いて、〈イーグル〉二十機と〈ファルコン〉二十機の編隊が浮上し、早朝の空へ格納庫の天井ドームを抜けていった。

 二時間後。
 何の前触れもなく、首都アシュロン郊外に数個のメテエライトが降り注いだ。
 それぞれの大きさは〇.五メートルにも満たなかったが、その破壊力は想像を絶した。

「何だって!」
 フォースバレー野営地でバトルアーマーのAIから緊急報告を受けて、マリーは言葉を無くした。メテオライトの落下で首都アシュロンの一部と郊外のリンレイ・スーの邸宅が壊滅したのである。
 リンレイ・スー一族で生き残ったのは、マリー・ゴールドと、首都アシュロン中心部の学校で寄宿生活している妹ジュディー・ゴールドだけだった。

「マリー・ゴールド太尉。今後は太尉がダナル大陸の地域統治官であり、リンレイ・スー軍の総司令官です。我々及びリンレイ・スー軍事基地の全兵士がマリー・ゴールド太尉の指揮に従います!」
 呆然としているマリーに、直属の部下、カール・ヘクター中尉が姿勢を正して敬礼した。
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