Ⅱ World wide① 精神生命体マリオン あらすじ

文字数 1,712文字

 二〇二三年六月十日、友人のパソコンエンジニアに注文していた省吾の前に、ムササビのような飛行膜を持つ女が現れた。彼女は有史前に他の星系から宇宙艦隊で来たニオブ(精神生命体)のアーマー階級でマリオンと名乗った。
 マリオンは、人間社会の管理のためタブレットパソコンに正義に基づく日記を書けといった。パソコンのモーザに同調させたエネルギー転換機プロミドンが、日記に書いた正義と正義の政治だけを実行し、人間の身体を乗っ取り経済思想で支配を進めるニオブのクラリックに人間を支配させるな、といい、烏を通して助言するようになった。
 二〇二五年三月十四日、東海地震が発生した。首都圏は大被害をうけ、廃止作業中だったはずの浜岡原発が水素爆発した。日記に迅速な救援復興を書くと、自衛隊が迅速に動いたが、福島原発事故と同様な政府対応を批判すると、右翼の大政同志会が恫喝した。
 不正アクセスを警戒し、省吾は試みにすべての外部通信回線を切り、以前心惹かれた歯科衛生士と親密になる旨を日記に書いた。右翼の恫喝はなくなったが、自宅周囲に街宣ヴィークル(陸空両用機)が現れるようになった。不審な男たちに狙われながら、省吾は歯科衛生士の理恵と再会した。理恵は夫・菅野と不仲で、省吾に好意を抱いていた。理恵にはマリオンが精神共棲していた。マリオンの助言に従い、菅野の提案で、省吾は離婚を望む省吾の妻と別れ、理恵と暮し始めた。
 翌日、街宣ヴィークルが省吾の家の離着陸ポートに侵入した。通報をうけた県警の佐伯は、省吾の自宅周囲に警護ヴィークルを配備した。
 理恵との生活がはじまり、省吾は民主的政府の草案を日記に書き始めた。理恵はかつてマリオンが精神共棲した人類の子孫で、マリオンは理恵を通じて省吾に意思を伝えた。
 一ヶ月後、日記が実現し、公務員法が改正され、検察と警察が検察警察特別行動捜査庁に、全情報機関が統括情報庁に一元化された。新法に加え国土保全法と情報管理法違反で、過去に遡って官僚と閣僚、電力会社幹部と社員、経済界の要人たちが逮捕され、内閣が改造され民主的内閣が成立した。その直後、省吾と理恵はショッピングモールのポートで、銃を持った男たちに囲まれたが、黒いワゴンが現れ省吾たちは助けられた。マリオンによる救助だった。民法の改正で、離婚直後の理恵は省吾の妻になった。理恵に精神共棲していたマリオンは理恵と精神同化した。

内閣官房副長官の村野は、内閣官房情報本局長・本間を使って、紛失したモーザのタブレットパソコンを探していた。村野は、ニオブのクラリックが支配する研融油化学本社の近藤の部下だった。本間の部下・佐伯は、近藤の部下の工作員の八人を、田村家のポートで逮捕したが、八人は留置中に変死した。他の工作員が本間を狙撃し、さらに他の工作員が省吾と理恵を狙撃した。いずれもクラリックが意識内進入した工作員が、省吾との暗殺とタブレットパソコンの奪取を狙ったものだった。
 自衛隊が「地球防衛軍」に、防衛省は「地球防衛省」に、 国会は、国民が直接請求権と決定権を持つ一議会の「国家議会」と改められ、日本の行政府「国家議会政府」が誕生した。「国家議会対策評議会」が「国家議会」のまとめ役であり、実質政府になった。

 狙撃に失敗し、クラリックは鳶をセルにして思念波攻撃したが、マリオンの力で、鳶に意識内進入していたクラリックを排除した。
 経済界と政府関係者との癒着を排除する新政府の新たな法案に、政府との武力闘争を宣言する軍需産業が現れた。政府は企業経営者の発言を、「政府恫喝の国家保全法違反」とと判断し、首都圏に防空体制を布き、大政同志会のクラリックを捕獲した。同時に、首都圏に大東重工O区工場からミサイルが放たれたが、地球防衛軍中部師団宇宙防衛隊によって迎撃された。
省吾はクラリックの首謀者、アーク・ヨヒムを排除するため、タブレットパソコンの日記を書いた。省吾と理恵とマリオンの思念の一部は、アーク・ヨヒムが支配する大東重工O区工場へ転送して分身に物質化し、思考をクラリックに気づかれることなく、アーク・ヨヒムたちクラリックを破壊した。分身は無事に脱出した。
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