十七 反政府勢力 非合法組織壊滅

文字数 1,643文字

 二〇二六年、帝都、一月十日、土曜、十五時。
       モスクワ、一月十日、土曜、十時。
       ローマ、一月十日、土曜、七時。
       ワシントンD.C.、一月十日、土曜、一時。

 新年明けから、ロシア共和国モスクワでは、EU首脳と東南アジア・オセアニア国家連邦首脳らを招き、EU加盟と東南アジア・オセアニア国家連邦加盟、国家統合会議加盟の祝典がくりひろげられた。
 クレムリンの特設会場のステージに、スザンナ・ヨークが登場した。前奏曲が演奏されると同時に、観衆がざわめいて次々に大会場から人がいなくなった。

「スーザン、避難するんだっ!」
 マネージャーのシルビア・キーンとプロデューサーのホンキー・ターナー・トンクが、ステージのスザンナに駆けよった。
「何があったの?」
 マイクがスザンナの声を拾い、会場に拡散する。前奏曲を演奏していた楽団はすでに退避して、ステージはスザンナだけだ。

「公演は中止だ!モスクワで市街戦がはじまった!」
 ホンキーはあわてている
「モスクワだけじゃない。世界の主要都市で市街戦だ。各国の反政府勢力が政府勢力と抗争をはじめた。
 各国政府は、反政府勢力を鎮圧すると発表したが、ここに集まったお偉方は、静観なんかしてられないさ・・・。
 ロシア政府にも、スイスの保険会社にも、公演中止の正当な賠償請求をしてやるぜ!」

「シルビー!ダブリンのFRSEAONの日本政府大使館へ連絡して!二月公演までに、日本へ行けるか確認するの!」
 あの子たちがいた時、マイケルが話した、そのとおりになったわ・・・。
「わかった・・・」とシルビア。

 各地で市街戦がはじまっている。空港へ行くのも無理かもしれない。その時は・・・。
 スザンナは思った。
「大丈夫よ、シルビー。スイスなら行ける。
 ホンキー。空港に確認して!」
「わかった!」

 同時刻。
 世界各国で、非合法に貯蔵した弾薬と爆薬が炸裂した。多くの非合法組織が敵対組織の破壊工作だと判断した。非合法組織間の戦闘がはじまり、これを鎮圧する政府勢力と市街戦状態になった。


 二〇二六年、帝都、一月十日、土曜、十五時。
       モスクワ、一月十日、土曜、十時。
       ローマ、一月十日、土曜、七時。
       ワシントンD.C.、一月十日、土曜、一時。

「大統領!各国で市街戦です!内戦です!」
 ホワイトハウス居住区の大統領居室に、フレッド・チャイレッカー補佐官が跳びこんでわめいた。
「大統領!」
「フレッド、真夜中だ。あわてるな・・・。もうすぐ鎮まる・・・」
 ジャクソン大統領は、居間の隣室で、静かに大ディスプレイの緊急ニュースを見ている。

 ディスプレイに現れたニュース映像では、マシンガン内部で弾薬が暴発し、機関部が膨張し破壊している。爆発は何度も起って次々にマシンガンが破裂した。戦闘員は他のマシンガンを手にしたがこれも破壊している。
 チッと戦闘員は舌打ちし、ロケットランチャーを肩にのせてビルの一郭に狙いを定め、トリガーを引いたが、ロケット弾はその場に落下して轟音とともに炸裂した。その場にいる三人のマフィア戦闘員を吹き飛ばした。三人が攻撃していたのは日本のヤクザの事務所があるビルだ。
 ビル内で何度も爆発音がして窓ガラスが吹き飛び、ビルから跳びだした数人の戦闘員が街路に倒れた。

「これで、非合法組織が壊滅する・・・」
 ジャクソンはつぶいた。
 ニュース映像は望遠によるものだ。ビルから、後頭部に両手をまわした数十名の男たちがでてきた。全員が武装している。男たちの胸や腰にある手榴弾が炸裂した。
「かたづいたな・・・」
 映像がニューヨークからイスラム圏に変った。

 この日、世界各国の独裁政権と反政府組織やゲリラ組織などが所有する大量の武器と弾薬が港湾の貯蔵施設や内陸の貯蔵施設で炸裂した。
 朝鮮は、東南アジア・オセアニア国家連邦をはじめとする、民主化推進組織の犯行と判断したが、破壊工作がどのようにおこなわれたか、究明できずにいた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み