第91話

文字数 1,128文字

大体、大学の、留年を繰り返していた中ごろに病気を発症しているから、『統失歴』は今年で22年くらいになる。

たぶん、薬を飲んでいないと、飲み続けないと、妄想の世界にこちらの世界がのみまれてしまい、ぼくは廃人同然として生を終えることになるのだろう。

そう、納得して、毎晩薬を飲んでいるし、月一か二度、お医者さんにもかかっている。

精神科医の自殺率というものは、他の医師に比べて高いらしい。うちの先生がもしも・・・などと不吉な妄想をすることもないではないが、なんだか申し訳がない気がする。

ぼくが抱え込んでいる、くだらないあれやこれやがもしも、先生にストレスになって、死にたい、という気持ちにさせることがあるのだとしたら。

しかし、そんなこんなも『お互いさま』なのかもしれない。それも含めての『助け合い』『互助』と、いう事なのかもしれない。

高度にストレスを抱える文明と文化。また、それを緩和しようとする、たゆまざる努力の数々。資本主義と意志と笑いと戦争と精神病。ぼくはなんという、二十二年を生き抜いてきたのか。それでいて、手元に残ったのはただ 時間の流れ という決して抗いようのないあれだけだったのだという気がしている。

そうではない!そうではないのだ!!

ぼくは生きた。そして何かをつかんだに違いないのだ。

家、妻、仕事、猫たち、家族(からの信頼)。

ぼくが統合失調症に罹患した時、家族は一度絶望したに違いないし、その後の経過も、初めのうちは、絶望を裏付けるようなものだったに違いない。

いま、曲がりなりにも社会の片隅で役割を持ち、元気に生きている姿を見て、少なくとも僕の妹は、喜んでくれていると思う。ぼくの妹は、ぼくがこんなであることから、一般社会に対して、普通とは違った視線を持たざるを得なかっただろう。ぼくによりそうでもなく、かといって社会と完全に同調するでもなく。

まあまあ。

町内会の役員に所属した。どんなことをやるのだろうか?町内会の一員として、精神障がい者の立場から発信できたらと思う。精神障害者は、年金をもらって暇を持て余している人もいるし、馬鹿でどうしようもない人もいるけれど、町内会などに所属して役割をもらえたら、それなりの働きをするのではないか?言っちゃ悪いけど、お年寄りだけに任せているよりは、元気な障害者をもっと活用すればよいのではないか?

世に棲む人々。

孤独を愛し、ひっそりと生きている人たちを、地域の祭りなどの中に引っ張り出すというのは、酷なことだろうか?

町内会。何が出来るかわからないけれど、プロジェクターを買って、映画会ぐらいのことをしてみたい気がする。そんな提案をしてみたい。

世に棲む精神障害者。今年で48になる。生きたな、という感じだ。これからだ。
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