第78話

文字数 932文字

コリン・ウィルソンなんか、糞でもくらえってな感じである。

ウィルソンは鋭さを求めた。だが、生きる上で大事なのは鈍感力なのだ。あまりにも鋭敏だと、生きる事は苦痛の連続となる。感覚や思考の鋭敏さは、幸福の要ではない。幸福とはまったりと感じるものなのかもしれない。

だらだらと生きたっていいではないか。とにかく生きる事だ。平凡でも、凡骨でも、それを引き受けて立派に生を全うする、それが人として大切なことにつながるのだと思う。

ぼくは、睡眠に障害を抱えている。辛いことがあった日などには、かえってぐっすりと眠れたりする。補償的な機構なのかもしれないが、良い夢が見れたりする。そして眠りと夢見の双方が良いと、次の日の精神と頭の働きは冴えたものになる事が多い。しかしそうして良い一日が送れると、今度は興奮しているからか、また眠りが浅くなったりする。今もそうした状態で、浅い眠りのまま、午前四時に起きて、パソコンで文章を打ち出した。

眠りは大事なものだけど、歳をとると睡眠力が弱まるというか、浅い眠りの日が多くなるらしい。この辺のことは前に本でも読んだのだけど、詳しいことは忘れてしまった。

夜は寝て、日中にしっかりと活動する、それが大事なことなのだ。睡眠と覚醒のリズムこそが、頭脳の働きをまともにしてくれる。平凡なようでもそうした一日一日を送ることが出来れば、何か価値のあることを成し遂げられるかもしれない。その価値というのが、わかりやすい、はっきりこれだとわかる栄光のようなものでなくて、むしろ平凡な、人目に付きにくい価値であったとしても。

鈍感力は大切だ。鈍さの中で生きていくことをむしろ学ばねばならない。生の課題は、生の時間軸の内では、おそらく何一つとして解決はしない。(だから)鈍さとは、生きる知恵なのだ、たぶん。コリン・ウィルソンは、鋭さに憧れた。意味感覚の鋭さに重きを置いた。その事自体は間違っていなかったとしても、同時にやはり頭の良さにあこがれるところがあったように思う。

頭の良さとは、パフォーマンスの問題なのだ。100パーセントのパフォーマンスで活動することが大事で、そのためには、リズムある睡眠をしっかりととる、という事が大切だ。だが、そのことがなかなか難しいのである。
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